“四角の中に丸”というデザインピラーを基に、独自のスタイルを探求し続けるベル&ロス。その2026年モデル「BR-X3 マイクロローター」は、スケルトンという視覚的エレメントによって新たな魅力を生み出した。それは、優れた建築が躯体によって生まれることを改めて感じさせる。可視化されたのは、ムーブメントそれぞれのコンポーネントが連携する構造美であり、機械に脈打つ時の生命力に感嘆するのである。

BR-X3は、基幹コレクションであるBR-03の上位に位置づけられるモデル。多層構造のケースや新素材、専用ムーブメントを採用し、ブランドの独創性を訴求する。サファイアクリスタルとムーブメントのグリッドはバウハウス建築を思わせる。自動巻き(BR-CAL.390)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(幅40mm、厚さ9mm)。50m防水。世界限定99本。326万7000円(税込み)。
Photographs by Eiichi Okuyama
柴田充:文
Text by Mitsuru Shibata
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2026年11月号掲載記事]
ベル&ロスらしさが溢れ出る、スクエア×ラウンドの建築的なストラクチャー
航空計器からインスピレーションを得た「BR-01」によって確立した“四角の中に丸”というデザインコンセプトは、昨年誕生20周年を迎えた。以降、機能美の追求とともにブランドのシグネチャーとして研ぎ澄まされ、現在に至る。そのデザイン哲学の新境地を開いた最新作が「BR-X3 マイクロローター」だ。
四角いケースと四隅をビスで留めたフェイスはスケルトナイズされ、隠されていたムーブメントをあらわにする。これまでもベル&ロスではムーブメントの一部をオープンにしたセミスケルトンや全体にわたるフルスケルトンを発表してきたが、本作はそのさらなる発展形である。

昨年登場した「BR-X3 トゥールビヨン マイクロローター」の系譜を受け継ぐモデルだが、タイムオンリーに絞ることでデザインの個性がより際立っている。まず目を引くのが、グリッド状にかたどられたフェイスだ。ムーブメントの地板とブリッジにオープンワークを施し、スクエアのスティールプレートに一体化させることでムーブメントを支える構造体として機能する。
一般的な時計がケースにムーブメントを収め、ベゼルや文字盤で構成するのに対し、ケース、一体ブロックを形成したムーブメント、表裏のサファイアクリスタルという3種のパーツからなるミニマルな構造だ。ブランドのシグネチャーだった四角という要素は、これまでのデザインに加え、より構造体としてのファンクションへと進化を遂げたのだ。

幾何学的なグリッドには、独自開発の専用ムーブメント、BR-CAL.390を搭載し、マイクロローターから香箱への巻き上げ輪列、時刻輪列から脱進機、テンプを整然と配置する。その造形美は、前面と同じくケースバックからも一目瞭然だ。こうしたコンポーネントを積層ではなく水平に並べ、さらにマイクロローターを採用することで極薄サイズを実現し、ケース厚はわずか9mmに抑えている。
「単にムーブメントを露出させるためにスケルトン化するのではなく、幾何学的なアーキテクチャーを際立たせることを目指しました」と説明するのは、クリエイティブディレクターのブルーノ・ベラミッシュ。幾何学的構成と建築的アプローチには、ピエト・モンドリアンとシャルロット・ペリアンを参考にしたという。そのため開発も、まず見せることを第一義に捉え、ムーブメントのデザインから進められた。

「マイクロローター、テンプ、香箱という3つの主要な要素に視線を導き、歯車やブリッジ、そして構造体が織り成す精巧な関係性が感じ取れるようにしました。時計のメカニズムは美しさと技術的な複雑さが共存する、一体的な建築作品として提示されるべきなのです」
ムーブメントのすべてをむき出しにするのではなく、主要コンポーネント自体の存在感と美観を強調し、伝達するパワーとそこから生み出される精緻な時を表現し、可視化する。機械式時計のモダニズム的解釈である。
ベラミッシュはかつて、自身の創作に影響を与えたデザイナーとしてディーター・ラムスとミース・ファン・デル・ローエの名を挙げ、その線のピュアなシンプルネスと機能的でミニマリズムなデザイン哲学に惹かれると語った。
BR-X3 マイクロローターにも揺らがぬデザイン哲学は注がれ、さらに純化する。そして、スケルトンに機能美のひとつの到達点を見るのである。



