パテック フィリップのミニッツリピーターが刻む歴史と主なモデル

FEATUREその他
2021.04.23
PR:PATEK PHILIPPE

「パテック フィリップ」は、時計界のトップに君臨し続ける老舗である。その輝かしい沿革に触れながら、超複雑機構に位置づけられる「ミニッツリピーター」搭載モデルを紹介しよう。


三大複雑機構のひとつ ミニッツリピーター

長い歴史の中で、時計に関する画期的な発明の数々があったが、その中でも特に重要なのが、三大複雑機構と称されるパーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、そしてミニッツリピーターである。

ここでは、三大複雑機構の中でも最も古い機構であるミニッツリピーターについて解説しよう。

時刻を音で知らせるリピーター

照明が未発達だった時代は、夜の暗闇で時計の時刻を確かめることは困難だった。そこで17世紀後半にイギリスで発明されたとされるのが、任意の操作によって時刻を音で知らせる「リピーター」である。

視認性を得られない環境にあって、鐘を鳴らして時を知らせる機構が開発された。それが「リピーター」である。

リピーターは、プッシュボタンと、スライドピースもしくはレバーを操作することでゴングを打つ。こうして鳴る音でその時の時刻を教えるコンプリケーション機能だ。

ミニッツリピーターの複雑な機構

音で時を告げるリピーター機構は、イギリスの時計技師であるダニエル・クエアーやエドワード・バーローらによって発明されたといわれている。

当初は、置き時計に搭載されていたが、18世紀終盤にアブラアン-ルイ・ブレゲが鐘に相当するパーツをリング型のゴングに置き換え、それをムーブメントの外側に設置することで、薄型の懐中時計にも搭載されるようになった。

アブラアン-ルイ・ブレゲによって、鐘を鳴らすパーツをリング型のゴングに置き換えるアイデアが生まれた。それをムーブメントの外側に設置することで、懐中時計リピーターを実現したのである。

この方式は、現在に至るまでリピーターウォッチの基本として継承されている。

さらに、複数の鐘の音を組み合わせるために、小さなケース内に極めて複雑な構造を緻密に構築していった。その結果、分単位に対応するミニッツリピーターが誕生したのである。

一般的な音の鳴り方

音を発するために装備されているのは、2本のハンマーと、低い音・高い音それぞれに調整されたリング状のゴングである。動作レバーなどを任意に操作すると動力が機構に供給され、ハンマーがゴングを叩く。そのストライク音が、機構を操作した時点で過ぎた時刻を知らせるのだ。

知らせる時と、音の組み合わせは次の通り。

  • アワー(1時間刻み):低音。時間に合わせ最大12回
  • クォーター(15分刻み):高音と低音で1セット。45分まで最大3セット
  • ミニッツ(1分刻み):高音。分単位で最大14回

例えば、12時59分なら、まず低音が12回鳴る。続いて高音・低音のセットが3セットを鳴り(45分)、その後、高音が14回鳴ることで59分となる(45+14分)。


革新を起こしたパテック フィリップ

ここで、複雑機構のミニッツリピーターを搭載したモデルをラインナップするパテック フィリップについても掘り下げてみたい。

世界三大時計ブランドのひとつ

左が創始者のアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック、右がブランド創成期に活躍した時計師ジャン・アドリアン・フィリップ。

パテック フィリップは、1839年にスイスで創設された。ポーランドから亡命した貴族のアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとフランソワ・チャペックによって立ち上げられた企業である。当時の社名は、パテック社であった。

「世界一の時計作り」を理念に掲げた同社は、当初は鍵巻き式高級懐中時計の販売が中心だった。その後、1844年、時計師ジャン・アドリアン・フィリップが経営に加わることで、時計界にさまざまな革新をもたらすこととなる。

発明の天才と称されたフィリップは、リュウズでの時刻合わせ機構やゼンマイ巻き上げを開発する。そして1845年には、同社では初となるミニッツリピーターの製作を実現する。

1851年のロンドン万国博覧会では、世界初の鍵なし時計をイギリスのヴィクトリア女王が称賛している。以来、貴族や世界に名だたる著名人がその顧客リストに名を連ねるようになった。

現在では、歴史と高い技術に基づいた美しい仕上げと、厳格な社内規定パテック フィリップ・シール(2009年から適応。それ以前はジュネーブ・シールに準拠)をクリアした高い品質により、世界三大時計ブランドに数えられる。

音質を飛躍的に向上させたカセドラル・ゴング

パテック フィリップにおけるチャイム・ウォッチの復活を象徴する1988年に登場した「3974」。完全自社開発・製造のミニッツリピータームーブメントCal.R 27が発表されたのもこの年である。

パテック フィリップのミニッツリピーターは、古くは1910年に、ウェストミンスターの鐘を再現する超複雑懐中時計「レグラ公」を開発したことで世間を大いに驚かせた。

現行モデルに搭載されるミニッツリピータームーブメントCal. R 27 PS。複雑系ながらマイクロローターを備え、しかも厚さを5.05mmに抑えた点に、実用を重視する同ブランドの真髄が感じられる。

ミニッツリピーターのゴング製作には、昔から熟練の専門技術が必要とされていたが、1970年代には一旦その技能伝承は途絶えてしまった。そこで、パテック フィリップは、ゴング製作の知識と方法を再構築し、2000年初めには独自の「カセドラル・ゴング」によって、その音質を飛躍的に向上させた。

カセドラル・ゴングは従来のおよそ2倍の長さを有し、豊かな音色と寺院の金のような長い音響が特徴だ。パテック フィリップはこの発明で、ミニッツリピーター製造の王者として君臨することとなったのである。