ブランドの技が光る!アート&ゴールドブレスレットのレディスウォッチ

FEATUREその他
2020.11.28

2020年も多くの時計ブランドが、アーティスティックな意匠のレディスウォッチを発表した。エナメルや彫金といった伝統的な工芸技術を用いた時計の他にも、芸術家とのコラボレーションモデルや見事なジェムセッティングのハイジュエリーピースが登場。バリエーション豊かなラインナップとなった。また近年復活の兆しを見せているのが、ゴールドのブレスレットを備えた時計。ジュエリー感覚で着けられるブレスレットモデルに、女性たちの注目が集まっている。

野上亜紀:文 Text by Aki Nogami
[クロノスファム51号掲載記事]

時計ジャーナリストが語る、アートなレディスウォッチ

 フランス語で「芸術的な手仕事」という意味を持つ“メティエダール”は、ここ10年ほどの間に時計業界で盛んに用いられるようになった言葉。老舗時計ブランドの多くがメティエダールのアトリエを持ち、芸術性の高いタイムピースを生み出している。クロノス日本版編集長の広田雅将、ウォッチ&ジュエリージャーナリストの野上亜紀は、アーティスティックな意匠のレディスウォッチをどう見たのか?

広田:アートウォッチの分野においては、まず、エナメルの技術が非常によくなってきています。カルティエ「ロンド ルイ カルティエ パンテール フィリグラン デマイユ」や、ジャケ・ドロー「プティ・ウール ミニット パイヨン フルール・ド・ヴィ」のように。鮮やかな発色はもちろん、芸術的な表現のために異なるエナメルのテクニックを使い分けている。そのうえで、ここでもいえるのは総じて、各社の“文字盤への凝り方”。殊にレディスでは今までにない意匠が目立ちますね。

野上:すっかり定着した“メティエダール”。カルティエは毎年、エナメルやマルケトリなどで実に面白い表現を見せてくれています。一方ハリー・ウィンストンの「HW プルミエール・マジェスティック アールデコ オートマティック 36mm」は、“宝石で描いたアート”と呼ぶにふさわしいモデル。文字盤という限られたスぺースでの空間の使い方も見事で、パーツの磨きも秀逸。ハイジュエラーの技が見て取れます。


芸術的な美が時を刻む

巧みな工芸技術やジェムセッティングが生み出した絵画のような意匠。芸術家との斬新なコラボレーションも交えた、身に着ける“アート”とも呼びたいマスターピースが大集合。

カルティエ
伝統の技術をさらに発展させたアート文字盤

Laziz Hamani ©️ Cartier
(左)カルティエ「ロンド ルイ カルティエ パンテール フィリグラン デマイユ」
手巻き。WG×D+アリゲーターストラップ。直径36mm。1164万円(税別)。世界限定30本。
(右)カルティエ「ロンド ルイ カルティエ マルケトリ ドゥ パイユ エ ドール」
手巻き。WG+アリゲーターストラップ。直径42mm。762万円(税別)。世界限定30本。問/カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757

 スイスのラ・ショー・ド・フォンにあるアトリエで製作されるメティエダールの世界。今年は金線細工の“フィリグリー”をエナメル技術へと応用した文字盤が誕生した。パンテールを囲む竹はエナメルを細長く引き伸ばしたものである。竹の節を金糸で彩るという、奥行きのある表現が果たされた。そしてもうひとつの作品は、象嵌細工の“マルケトリ”がテーマ。ゴールドと“パイユ”と呼ばれる、実際の藁に着色した素材を用いて、パンテールを立体的に表現した。文字盤の製作にかかるのは約97時間。非常に緻密な作業から芸術的な意匠が生み出されるのだ。

着色したストロー(藁)と、ホワイトゴールドやイエローゴールドのパーツを組み合わせたマルケトリ。75本のストローは12色に彩色。パンテールの斑点と眼にはエナメル加工を用いて。

ジャケ・ドロー
黄金比の模様を描いた高度なテクニック

ジャケ・ドロー「プティ・ウール ミニット パイヨン フルール・ド・ヴィ」
自動巻き。RG×D+アリゲーターストラップ。直径35mm。486万円(税別)。世界限定8本。問/ジャケ・ドロー ブティック銀座 Tel.03-6254-7288

 “生命の花”の意味を持つ“フルール・ド・ヴィ”。6枚の花弁による円が重なり合う幾何学的な図形をパイヨンエナメルでアーティスティックに表現した。以前はスイスのエナメル職人アニタ・ポルシェに外注していたが、現在はインハウスで製作。ジャケ・ドローのクラフツマンシップを感じさせる1本だ。

2層のエナメルからなるパイヨンエナメルの製作風景。ギヨシェ模様を刻んだ文字盤にエナメルを施し、そこにパイヨンと呼ばれる薄い金箔をセット。その上から再びエナメルが施される。

シャネル
“装いの美学”から誕生したエレガントなカフウォッチ

 ジュエリーウォッチコレクション「マドモアゼル プリヴェ」からシークレットウォッチが新しく登場した。テーマとなったのは、シャネルのジャケットを彩るアイコニックな存在である“ボタン”だ。2重のゴールドの縁取りで飾られたボタン(時計の蓋)には彫金やカメオなどを用いてマドモアゼル シャネルが愛したモチーフが施されている。写真は、“パール”と“カメリア”をデザインしたピース。ブラックとゴールドで彩ったツイードのカフタイプもあり、マドモアゼルが愛した美しい世界が綴られている。

(左)シャネル「マドモアゼル プリヴェ ブトン」
クォーツ。YG×WG×D+ツイード×カーフ。直径25mm、カフ幅35mm。775万円(税別)。世界限定55本。
(右)シャネル「マドモアゼル プリヴェ ブトン」
クォーツ。YG×WG(ブラックのPVD DLC加工)×D×パール。直径25mm、カフ幅35mm。3870万円(税別)。世界限定5本。問/シャネル(カスタマーケア) Tel.0120-525-519

ハリー・ウィンストン
アールデコの美を見事な細工で表現

 誕生の地となるニューヨークへオマージュを捧げたハイジュエリーウォッチ。ダイヤモンドのほか、エメラルドカットのブラックジェイドやカボションカットのマザー・オブ・パールを用いたセッティング、そしてマルケトリなどの意匠がホワイトとブラックの世界を描き出す。繊細な仕上げに目を奪われるハイエンドピースである。

ハリー・ウィンストン「HW プルミエール・マジェスティック アールデコ オートマティック 36mm」
自動巻き。WG×D×ブラックジェイド+アリゲーターストラップ。直径36mm。1160万円(税別)。問/ハリー・ウィンストン クライアント インフォメーション Tel.0120-346-376

ディオール
舞踏会の夜のごとくゴールドのドレスが輝いて

 ディオールは、芸術的な文字盤を手がけてきたブランドのひとつ。メゾンの大切なテーマとなる“クチュール”の世界が繊細な金細工とともに完成した。鏡面仕上げと透かし細工が美しいパーツを幾重にも重ねることで、まるでプリーツやレースがひらめく姿に。

ディオール「ディオール グラン ソワール プリセ プレシュー」
自動巻き。PG×WG×D+サテンストラップ。直径36mm。714万7000円(税別)。世界限定88本。問/クリスチャン ディオール Tel.0120-02-1947

ウブロ
モダンアートとのコラボレーション、第2弾はモノトーンカラー!

 現代画家マーク・フェレーロとのコラボレーションモデル。昨年はレッドやターコイズのカラフルなラッカー仕上げで再現された代表作“リップスティック”の世界が、今年は画家が愛するホワイト&ブラックに。口紅のレッドカラーがさらに際立つカラーリングとなった。

ウブロ「ビッグ・バン ワンクリック マーク・フェレーロ セラミック ブラック&ホワイト」
自動巻き。ブラックセラミック×D+カーフレザー×ラバーストラップ。付け替え可能なアリゲーター×ラバーストラップが付属。直径39mm。205万円(税別)。世界限定100本。問/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055