もっと風防のコーティングについて教えてください/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

FEATUREぜんまい知恵袋
2021.02.28

Q:無反射コーティングとはなんですか?

広田雅将

2021年2月28日掲載記事


A:屈折率の高いサファイアクリスタル風防に施される、低反射のコーティング

今や高級時計の常識となりつつある、風防の無反射コーティング(正しくは低反射コーティング)。コーティングを施すことで、光の反射が抑えられるため、文字盤は見やすくなります。

ガラスへのコーティングは、19世紀の後半に発明された技術です。しかし、時計業界への普及は、サファイアクリスタル製の風防が普及した1990年代以降と言われています。サファイア製の風防は、プラスティック製のものに比べて屈折率が高いため、どうしても視認性が悪くなります。そのため80年代以降、さきがけてサファイアクリスタル風防をさきがけて採用し始めた一部のメーカーは、サファイア製の風防に無反射コーティングを施すようになりました。

風防へのコーティングは当初、耐久性が低い(=剥がれやすい)という問題がありましたが、年々耐久性が上がったため、今や多くのメーカーが取り入れるようになりました。かつて無反射コーティングを好まなかったロレックスも、一部モデルに採用するようになったと考えれば、質の向上は明らかです。

無反射コーティングの効果を知らせるカット。未コーティングの写真右と比べて、両面無反射コーティングを施した写真左の方が明らかに光の反射を抑えられており、12時位置のロゴもはっきりと読み取ることができる。

また、かつての無反射コーティングには、緑、紫、青といった色が付くという問題がありましたが、今やほぼ透明になりました。その結果、各社は文字盤にさまざまな色を採用できるようになりました。文字盤の色が鮮やかになった大きな理由は、コーティングの進化だったのです。

内側のみと両面にコーティングの2種類が存在

視認性だけを考えるなら、風防の内側と外側にコーティングを施した、両面無反射コーティングがお勧めです。ただし、風防を強くこすると、外側のコーティングがはがれる場合があります。今の時計ではあまり起こらなくなりましたが、1990年代から2000年代の時計には、しばしば見られました。こういった場合、風防の再コーティングは事実上不可能なため、風防を交換する必要があります。

そのため、タフに使われる時計の中には、風防の内側のみに無反射コーティングを施した物もあります。例えばドイツの時計メーカーであるダマスコ。同じモデルであっても、使う用途に応じて、両面無反射か、内面無反射コーティングを選べるようになっています。

ちなみに、時計業界でもっともコーティングの質が高いと言われているのが、日本の時計メーカーです。シチズンの「クラリティ・コーティング」やセイコーの「スーパークリアコーティング」は、ほぼ完全に反射を抑えるだけでなく、高い耐久性を持っています。


ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜/風防のコーティングについて

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