トム フォード「N.002 オーシャンプラスチック スポーツ」オーシャンプラスチックが導く次世代型ラグジュアリー

FEATURE本誌記事
2022.04.21

昨今の時計業界において欠かせないのが、地球の未来を見据えた指針となる「SDGs」というキーワード。資源調達の透明化に始まり、リサイクル素材の開発、環境保全活動など、各ラグジュアリーブランドがサステナブルな取り組みを続ける中、海洋プラスティックに焦点を当てたトム フォードの代表作「オーシャンプラスチック タイムピース」からニューモデルが登場した。

N.002 オーシャンプラスチック スポーツ

N.002 オーシャンプラスチック スポーツ
時計本体とストラップに海洋プラスティックを使用した「オーシャンプラスチック」の第2弾。腕時計1000本でおよそ220kgのプラスティック廃棄物を除去することとなる。今作では自動巻きムーブメントを搭載。トム フォードの直営店と、各専門店での限定販売となるイエローやブルー、オレンジを含めた計5色展開。(左)初作同様のブラックカラーをまとったモデル。ストラップには「TOM FORD」の文字がジャカード織りによって入れられる。自動巻き。26石。2万8800振動/時。オーシャンプラスチック(直径43mm)。100m防水。24万9700円(税込み)。(右)新たに加わったホワイトケース。質感は非常に高い。スペックと価格は左に同じ。
奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
野上亜紀:文 Text by Aki Nogami
[クロノス日本版 2022年5月号掲載記事]


自動巻きを搭載した「オーシャンプラスチック タイムピース」のスポーツモデル

N.002 オーシャンプラスチック スポーツ

コレクションの特徴である、円でインデックスを囲むような特徴的な丸型の時針のデザインを今作にも踏襲。ドレススタイルが印象的な前作の2針モデルから、時分針とインデックスを太くすることで、視認性を高めると同時に、よりスポーティーなデザインとなった。

 ラグジュアリーブランド各社によるSDGsへの取り組みが加速する現在、画期的なリサイクル素材で人気を博しているのがトム フォードの「N.002 オーシャンプラスチック タイムピース」である。

 同シリーズでは、海に漂う廃棄物である海洋プラスティックを採用。ダメージが多く、リサイクルが難しいとされてきた海洋プラスティックの再利用化を確立したスイスのTide Oceanとの協力により、100%リサイクル素材の「オーシャンプラスチック」を時計本体とストラップへと取り入れている。かつ原料回収地の明確化、温室効果ガスの排出量をプラスマイナスゼロにする「カーボンニュートラル」や太陽エネルギーの利用など、素材の輸送から製作に至るまでの全工程にサステナブルな志向を徹底している点も非常に興味深い。発表時の2020年には、大量生産可能な薄膜プラスティックの代替品開発者を支援する「トム フォード プラスチックイノベーション賞」を設立し、25年の市場展開を目指して、今も活動を続けている。

N.002 オーシャンプラスチック スポーツ

自動巻きムーブメントを搭載したN.002 オーシャンプラスチック スポーツは、ケース径も従来から3mmサイズアップの直径43mmとなり、さらにマッシブな印象に。ベゼルインサート部分にももちろん、従来同様100%リサイクル素材を用いた海洋プラスティック製が用いられる。

 最新作の「N.002 オーシャンプラスチック スポーツ」は前作のクォーツから一転、自動巻きムーブメントを搭載したスポーツモデル。新たに備わったベゼルインサートも海洋プラスティック製だ。ねじ込み式のリュウズと裏蓋にはステンレススティールを用い、100mの防水性を達成。一見セラミックスのようにも見えるベゼルやケースのマット仕上げが、全体の質感を高めている。デザイン面においては時分針を太く、インデックスを拡大することで、より精悍な印象を放つようになった。新たにホワイトも加わったコレクション。来る季節、海辺の風景にもよく似合うことだろう。

N.002 オーシャンプラスチック スポーツ

コレクション初のホワイトモデル。細身のラグに至るまで海洋プラスティック部分は微かにざらつきを与えたセミマットの仕上げで、一般的なプラスティックのチープなイメージとは異なる、高級感あふれる質感である。ポリッシュ仕上げのステンレススティールとのコントラストも際立つ。ホワイトの発色も良好だ。



Contact info: トム フォード タイムピース Tel.03-4360-5608


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