ルイ・ヴィトンやエルメスもランクイン! 時計ジャーナリスト菅原茂が選ぶ、2022年発表の時計ベスト5

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2022.12.07

日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2022年に発表された時計から、ベスト5を選んでもらうこの企画。今回は、時計業界を代表するジャーナリスト、菅原茂が選んだ5本の傑作を紹介する。彼が注目したのは、新作時計の文字盤カラー。カラフルな文字盤は、着ける人の感情を動かしてくれる。

ベスト5


1位:ブレゲ「マリーン オーラムンディ」

 待ってました! ユニークなトラベルウォッチ機能を搭載するブレゲの「オーラムンディ」が、初めて旅のテーマに最もふさわしいデザインで登場した。世界地図を描く、複雑な多層構造のブルーダイアルにもわくわく感があっていい。

マリーン オーラ・ムンディ 5557
自動巻き(Cal.77F1)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWGケース(直径43.9mm、厚さ13.8mm)。10気圧防水。892万1000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211


2位:エルメス「アルソー ルタン ヴォアジャー」

 デザインも複雑機構も唯一無二のクリエーション。これまたエルメスならではのトラベルウォッチの表現だ。世界の旅を想像させ、旅に出たくなる時計だ。ダイアルカラーはブルーのほうが断然シックで好ましい。

エルメス「ル タン ヴォヤジャー」
自動巻き(Cal.H1837)。28石(うちモジュール部分に7石)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径38mm)。3気圧防水。269万5000円(税込み)。2022年11月1日発売予定。(問)エルメスジャポン Tel.03-3569-3300


3位:ブライトリング「スーパーオーシャン」

 色使いが理屈抜きで楽しい最近のブライトリング。ヴィンテージダイバーズ由来のデザインを一段と魅力的に演出するカラーダイアルの新「スーパーオシャン」は、高機能ダイバーズを普段着のように気取らず着けるのに最適だ。

ブライトリング「スーパーオーシャン オートマチック 44」
自動巻き(Cal.17)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径44mm、厚さ12.62mm)。300m防水。58万3000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


4位:ルイ・ヴィトン「タンブール ストリート ダイバー」

 ダイバーズウォッチの舞台はマリンよりストリート。新作のオレンジやグリーンモデルは、さらにそれを強調していると思う。オーバースペックの追求よりも、実用性と上質なセンスを重視する者としてはこれは推し。

ルイ・ヴィトン「タンブール ストリート ダイバー」 
自動巻き(ETA2895)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径44mm、厚さ12.8mm)。100m防水。104万3900円(税込み)。(問)ルイ・ヴィトン クライアントサービス Tel.0120-00-1854


5位:トム フォード「N.002 オーシャン プラスチック スポーツ」

 実際に試着した。質感はセラミックのよう。とても海洋ごみプラスティックを再利用した素材とは思えない。海を連想させるダイバーズデザインも環境意識の喚起には有効だ。2022年「かっこいい大賞」を授与したい。

トム フォード「N.002 オーシャンプラスチック スポーツ」
自動巻き。26石。2万8800振動/時。オーシャンプラスチックケース(直径43mm)。100m防水。24万9700円(税込み)。(問)トム フォード タイムピース Tel.03-4360-5608


総評

 最も印象的だったのは、スポーツウォッチはもちろん、ハイエンドのラグジュアリーウォッチでも色また色の洪水だったこと。何であれ、色は人の感情に訴え、心を動かす。色によって時計を着けることがもっと楽しくなるなら、カラフルも大いにアリだ。

 単なるカラーダイアルではなく、トラベルウォッチ機能を融合したブレゲの「マリーン オーラムンディ」とエルメスの「アルソー ルタン ヴォアジャー」はとりわけ秀逸だった。どちらも旅のテーマを表現するブルーダイアルが複雑な構造をもつが、巧妙な技術もさることながら、独特のデザインがユーザーにとって最も重要な「旅の楽しさ」を想像させるところがいい。

 カラフルダイバーズで新しい世界を開拓したのが、ブライトリングの「スーパーオシャン」だ。ほぼ100%タウンユースのダイバーズウォッチなら、見栄えよくお洒落なほうがいいに決まっているが、豊富なカラーとサイズを展開するコレクションにはその“今感覚”が見事に反映されている。オレンジやグリーンを採用する、ルイ・ヴィトンの新しい「タンブール ストリート ダイバー」も同じだ。

 また、再生素材を生かしたスタイリッシュなスポーツウォッチによってSDGsのビジョンを表明した、トム フォードの「N.002 オーシャン プラスチック スポーツ」も印象的だった。ラグジュアリーに浮かれ騒ぐことなく、持続可能な未来について真剣に考えるべき問題をあらためて考える機会になった。



菅原茂のプロフィール

菅原茂

1954年生まれ。時計ジャーナリスト。1980年代にファッション誌やジュエリー専門誌でフランスやイタリアを取材。1990年代より時計に専念し、スイスで毎年開催されていた時計の見本市を25年以上にわたって取材。『クロノス日本版』などの時計専門誌や一般誌に多数の記事を執筆・発表。休日はランニングと登山に精を出す。


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