トム フォード メタルブレスレットの選択を可能にした〝引き通し〟の妙技

FEATURE本誌記事
2020.08.09

交換可能な引き通し式ストラップを豊富に取り揃え、時計愛好家からも高い評価を得ているトム フォードの腕時計に、ステンレススティール製のブレスレットが加わった。時計専業メーカーが思いもよらない発想で、インターチェンジャブルブレスレットの可能性がまたひとつ広がった。

N.001,トム フォード

N.001
レクタンギュラーケースのN.001専用として登場した引き通し式のインターチェンジャブル ステンレススティール ブレスレット。仕上げは写真左から、ブラッシュド(9万4000円)、ポリッシュド(9万4000円)、ブラックマットDLC(14万3000円)の3種類が用意され、サイズはラージとミディアムの2サイズ(ミディアムとラージの価格は同じ)。時計本体の価格は左から、ブラッシュド(22万円)、ポリッシュド(22万円)、ブラックマットDLC(36万2000円)。いずれもラージサイズ。クォーツ。SS(縦44×横30mm)。3気圧防水。
Photographs by Masanori Yoshie
Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)

TOM FORD

 昨年、本格的な日本上陸を果たしたトム フォードの腕時計。トム フォードといえば、メンズ・ウィメンズウェア、アクセサリーからコスメティックアイテムまで取り揃え、世界のファッションピープルに支持されるラグジュアリーブランドである。2005年の設立からわずか10数年の短期間で、これだけの名声を得るに至ったのは、トム・フォードの非凡な才能がなせる業にほかならないが、その彼自身が手掛けた腕時計だけあって、初作のN.001はクォーツウォッチながら、瞬く間に注目を集めた。

 レクタンギュラーケースに、ケースバックを含めて緩やかなカーブを与えたそのフォルムは、デザイン的に美しいのは言うまでもなく、日本人のようなスリムな手首にもすんなりとなじむ。特筆すべきは、そのケース本体を手元にホールドするのが、すべて自身で簡単に交換できる引き通し式のインターチェンジャブルストラップで、手織りの編み込みレザーやアリゲーターなど、50以上にも及ぶ豊富な素材とカラーリングの中から、オーナーのワードローブに合わせてコーディネートできるのだ。目の肥えた時計愛好家からも高い評価を得ている理由だ。

 その愉しみの幅を広げる新作がこのたび発売された。N.001のインターチェンジャブルストラップに、専用のステンレススティール製のブレスレットが加わったのだ。もちろん、これも引き通し式である。普通に考えると、金属製のブレスレットをレザーストラップと同様に時計のヘッドに引き通すのは容易ではない。ステンレススティール製のリンクを薄く成形すれば、環状のラグに通すことはできる。だが、その場合、ケースバックと金属製のリンクが擦れてしまい、ケースに傷がつくうえに、装着感も大きく損なわれる。

 解決策はシンプルである。ケースバックに当たる部分にラバーを採用したのだ。これによって、薄く仕立てたSS製のブレスレットを環状ラグに通した後、ラバーがケースバックと手首の間に挟まるかたちで、しっかりと手元に固定してくれる。薄く軽快なSS製リンクとともに、装着感は想像以上に快適だ。

 暑く、湿度が高い日本の夏に、これほど待ち望まれたアイテムはないだろう。

トム フォー ド メタルブレスレット

3リンク構造のSS製ブレスレットの厚さはわずか2mm。薄く成形されたSS製リンクを環状ラグに引き通す。ケースバックに当たる箇所にはラバーバックプレートが配され、ケース本体を固定する。バタフライ式のディプロイメントバックルはプッシュボタンによる開閉式のため、爪を傷つけない。


Contact info: トム フォード タイムピース ☎03-4360-5608


世界初! トム フォード タイムピース常設コーナーがISHIDA表参道にオープン

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