【インタビュー】ブライトリングCEO「ジョージ・カーン」

FEATURE本誌記事
2022.08.02

2022年のウォッチズ&ワンダーズジュネーブに先駆けて、新製品の「ナビタイマー」を発表したブライトリング。チューリヒからジュネーブへのチャーター便で新作をお披露目するというアイデアもさることながら、いち早くウクライナへの支持を打ち出したのだから、CEOのジョージ・カーンは相変わらず冴えている。そんな辣腕CEOが、「ハッピー」を連呼するとあれば、理由を尋ねたくもなる。

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年7月号掲載記事]


ブライトリングの時計は他社のようにシリアスではないのだ

ジョージ・カーン

ジョージ・カーン
1965年、ドイツ生まれ。ザンクトガレン大学を卒業後、クラフトフーズスイス、タグ・ホイヤーなどを経て、リシュモン グループに入社。ギュンター・ブリュームラインの下でウォッチビジネスを学ぶ。2002年にはIWCのCEOに、17年には時計製造部門、マーケティング部門、デジタル部門の責任者となる。同年、リシュモン グループを退社し、ブライトリングのCEOに就任。矢継ぎ早に新戦略を打ち出す。

「昨年はペインフルな1年だったと思っている。中国市場は冴えないし、香港も良くなかった。ブティックも観光客が来ないため、開けたり閉めたりを繰り返した。しかし、ヨーロッパやアメリカ市場の状況は改善されてきたし、人々はフラストレーションに対してリベンジしようとしている。旅行にも行けないし、クルマも買えない。となると、人々は腕時計を買い、それを楽しむようになった。インスタグラムに上げたりしてね」

 ブライトリングは明示していないが、21年のブライトリングが非常に良いセールスを記録したことは、金融機関のレポートに明らかだ。もっとも、彼が「ハッピー」を連呼する理由はそれに限らない。

「クロノマットの改良はリスクも伴った。そこでセミナーを行い、関係者たちの意見を聞いた。ルーローブレスレットがひと目で認識できるアイコンということが分かり、それを採用した。加えて私は、そこに個人的なテイストであるシックさを加えた。ディテールには気を配ったが、ごちゃごちゃしていないことが大事だった」

 果たして、クロノマットはヒット作となり、女性用モデルも大きく売れ行きを伸ばした。その知見を反映したのが、本年の新しいナビタイマーである。

「ナビタイマーとはブランドのカプセルのようなものだ。しかし、ありきたりな伝統ブランドとは違い、クールでリラックスというスタイルを加えた」。確かにその手法は、クロノマットに同じだ。「ケースサイズは3つで、41mmはユニセックスサイズ。このモデルを買う層の35%から40%は女性客を見込んでいる」。

 なるほど、文字盤はナビタイマーらしからぬほど鮮やかだ。しかし、市場が回復傾向にある上、狙ったプロダクトが成功を収め、しかもブライトリングが苦しんでいた女性用の分野でも伸びているとなれば、かつての強面CEOが「ハッピー」を語るのは当然か。

「もともとブライトリングは〝ハッピー〞なブランドなのだ。そもそも時計が、他社のようにシリアスではなく、楽しいものだ。それに多くの消費者が知っていて、ムーブメントも個性的だ。私はブライトリングがつまらないブランドと思ったことはないし、ますますそうさせたくないね」

クロノマット オートマチック 36

ブライトリング「クロノマット オートマチック 36」
「万能時計」を打ち出した新しいクロノマットは、初代モデルに触発されたディテールと、モダンでレトロなデザインを強く打ち出している。女性用モデルのヒットは、新しいナビタイマーにも影響をもたらした。自動巻き(Cal.ブライトリング10)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS×18KRG(直径36mm、厚さ10mm)。100m防水。149万6000円(税込み)。



Contact info: ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


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