ロレックスとモータースポーツの関係、知っていますか? ル・マン24時間レース、そしてF1グランプリも!

FEATURE役に立つ!? 時計業界雑談通信
2022.10.29

今回は、レース好きの筆者ならではの話題。日本ではあまり知られていないロレックスの話。それも自動車レースとのパートナーシップの話をお届けする。
これは、あのクロノグラフ「デイトナ」の名前の由来にもまつわる話だ。

渋谷ヤスヒト:写真・文 Photographs & Text by Yasuhito Shibuya
(2022年10月29日掲載記事)


なぜ時計とクルマ、レースは親密なのか?

 クルマに関わる雑誌やウェブメディアには時計の記事が多い。筆者も数え切れないほど、クルマ関連の時計について記事を書いてきた。それにはふたつの理由がある。ひとつはクルマメディアの読者が「クルマ好き=メカニズム好き=時計好き」だから。そして、もうひとつの理由が「時計にはクルマやレースとのコラボモデルが多いから」。

ロレックス

2003年のル・マン24時間レース。夜間走行中のコントロールライン付近。ロレックスの時計の下には、レースの残り時間が表示されている。© Yasuhito Shibuya

 でもなぜ時計には「クルマやレ−スとのコラボモデル」が多いのか? それはクルマに限らずあらゆるレースもそうだが、信頼できるタイム計測=レース計時のシステムなしに、自動車レース結果の正確性、公平性が確保できないから。公式計時(タイムキーピング)システムなしに自動車レースは成立しない。


ロレックスの知られざる顔「自動車レースの公式計時」

ロレックス

2003年のル・マン24時間レースのコントロールラインに設置されたロレックスの時計とディスプレイ。ただし、振られているチェッカーフラッグは、テスト走行セッションの終了を知らせるためのもの。© Yasuhito Shibuya

 あまり知られていないことだが、世界で人気No.1の時計ブランドであるロレックスも、自動車レースに深く関与している。ロレックスの中でも最も人気の高い「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」の初代モデルが1963年に誕生して、その名前がアメリカのフロリダ州にある「デイトナ インターナショナル スピードウェイ」に由来するものだということ。ロレックス好きの方々ならご存じだと思う。

コスモグラフ

1963年にロレックスが発表したカーレーサーのための手巻きクロノグラフ「コスモグラフ」。クロノグラフ秒針を使用して一定の距離の平均速度を測定できるタキメーターの目盛りがベゼルに配される。当初、プッシュボタンはまだねじ込み式ではなかった。

コスモグラフ

1965年、コスモグラフはさらに進化し、ポンプ式のプッシュボタンがねじ込み式に変更され、防水性能が向上した。その証しとして、文字盤に「OYSTER」の文字が追加された。

 そして、このサーキットで開催されるレースでロレックスがコミットしているのが、1966年から開催されている「デイトナ24時間レース」。このレースは24時間、マシンをフルスピードで走らせ続けて優勝を競う、レースの中でも最もクルマにとって過酷な世界3大耐久レースのひとつだ。ロレックスがメインスポンサーになった1992年以降、このレースの名は「ロレックス24」と呼ばれている。さらに、ロレックスはこの3大耐久レースの中でもいちばん有名な「ル・マン24時間レース」のオフィシャルウォッチとなっている。

ロレックス

2005年のル・マン24時間レース。上はゴール後の表彰シーン。コントロールラインの横にあるロレックスのタイム表示がゼロになっている。© Yasuhito Shibuya

 そして、あまり知られていないことだがロレックスは2013年から、去る10月9日に三重県の鈴鹿サーキットで開催された自動車レースの最高峰「フォーミュラ1グランプリ」(F1GP)」のグローバルパートナーであり、オフィシャルウォッチにもなっている。各レースの優勝ドライバーには「コスモグラフ デイトナ」が贈られる。ロレックスは今もレースに深くコミットしているのだ。

1988年、「コスモグラフ デイトナ」はさらに自動巻きへと進化した。上のモデルは「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」。Ref.16520。ゼニス製の自動巻きクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」をベースに、振動数を毎秒10振動から毎秒8振動へ落としたCal.4030を搭載。Cal.4030はスイス公式クロノメーターC.O.S.C.の認定を受けていたため、Ref.16520の文字盤には「SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」と印字される。


巨大なシステムで行われる公式計時

 デイトナ24時間レースでもル・マン24時間レースでも、そしてF1グランプリでもそうだが、現代の自動車レースの公式計時(タイムキービング)システムは機械式時計の対極にある、すべてがデジタル化された、タイム計測システム、マシンの状態をリアルタイムで把握するテレメーターシステム、ドライバーとチームの通信システム、レース映像の中継配信システムが融合したコンピューターシステムだ。
そしてこうした情報は常時、サーキットのプレスルームやゲストルーム、さらにレーシングチームに配信されている。

 残念ながらF1レースは現在、有料の配信サービスでしか視聴できないが、YouTubeの「FORMULA 1」チャンネルのコンテンツを見ればわかるように、今のF1マシンにはサーキットのセクションごとに細かくタイム計測を行うACIT(オートマチック・カー・アイデンティフィケーション・テクノロジー)に基づくトランスポンダー(電波送信機)などに加え、ドライバー目線でレースを中継できる高画質のライブカメラなど、さまざまなデジタル機器を搭載してあらゆる角度からレースを楽しめるようになっている。これはF1に限らずラリーなどでも同じだ。

(左)2016年のバーゼルワールドで発表された現行モデルの「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」のホワイトダイアルモデル。Ref.116500LN。傷に強いブラックセラミックス製ベゼルを装備。SSケース(直径40mm)。100m防水。
(右)同じく2016年に登場した現行「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」のブラックダイアルモデル。Ref.116500LN。ブラックセラミックス製ベゼル×SSケース(直径40mm)。100m防水。

 1960年代までレース計時は機械式のストップウォッチを数十個も使って行われていた。しかし今のレース計時は「計時」といっても、かつてのように単なるタイム計測ではなく、マシンやドライバーの情報や音声、映像など、必要な人にあらゆる情報を提供するシステムなのだ。そのことを知って自動車レースを鑑賞してみてはいかがだろう?

2003年のル・マン24時間レース。24時間を走りきり、トップでチェッカーフラッグを受けるベントレーチームの「ベントレースピード8」7号車。なお、このレースには近藤真彦も片山右京らと共に参戦し、13位で完走している。© Yasuhito Shibuya


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