2022年の時計トレンド10個を一挙振り返り。高級時計の要は「色」と「薄さ」、そして「ニッチ」!

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2022.12.13

一部のメーカーにとっては時計バブルになった2022年。高価格帯の時計ばかり目立つ1年だったが、しかし、よく見ると、今までにないトレンドが見られた。また、市場を占拠するラグジュアリースポーツウォッチはさらに進化。まとめて言うなら、2022年は「外装の年」だった。見るべきは色、薄さ、そしてニッチだ。

広田雅将(クロノス日本版):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
2022年12月13日公開記事


2022年に見られた10個のトレンドを振り返る

 2022年に見られた主だった時計トレンドは計10個。ひとつずつ振り返ってこう。

1.今年は中間色が推し! 多彩なブルーダイアル

 2022年も吹き荒れたブルーダイアルの旋風。シルバーやブラックに続いて、今やブルーも完全な定番になった。可能にしたのは、文字盤製法の大きな進化。塗料を吹き付けるラッカー仕上げに加えて、今ではPVDという新しい手法が普及した。

オイスター パーペチュアル デイデイト 40

ロレックス「オイスター パーペチュアル デイデイト 40」
プラチナ素材の40mmケースに初めて加わったフルーテッドベゼルのモデル。文字盤のアイスブルーはメッキではなくPVDによるものだ。自動巻き(Cal.3255)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Ptケース(直径40mm)。100m防水。価格要問い合わせ。

 違いは、微妙な中間色を出せること。今までは濃くてはっきりしたブルーを使ってきたメーカーも、今年は薄いブルーを採用するようになった。

デ・ヴィル プレステージ パワーリザーブ スモールセコンド 41mm

オメガ「デ・ヴィル プレステージ パワーリザーブ スモールセコンド 41mm」
高性能と手頃な価格を実現した野心作。一見地味だが、文字盤の色で個性を出している。
(左)自動巻き(Cal.8810)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径41mm)。30m防水。75万9000円(税込み)。(右)自動巻き(Cal.8810)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径41mm)。30m防水。71万5000円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

 なんとロレックス「オイスター パーペチュアル デイデイト」のアイスブルーダイアルも、PVD処理されたものに! また、オメガは「デヴィル・プレステージ」に、ブルーだけでなく、さまざまな色のカラーダイヤルを加えた。

ヘリテージコレクション 銀座限定2022モデル SBGH297

グランドセイコー「ヘリテージコレクション 銀座限定2022モデル SBGH297」
文字盤に銀座の街並みを描いた限定版。文字盤の仕上げは、グランドセイコーお得意のラッカーだ。自動巻き(Cal.9S85)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。銀座限定260本。完売。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

2.絞ったブレスレットがいよいよ当たり前に

 スポーツウォッチ全盛の今。しかし、いわゆるラグスポを中心に、細身のブレスレットが増えてきた。バックル(留め具)に向かって細くなっていくことで、着け心地が良くなったのである。

 また、デスクワークの際も邪魔になりにくい。ただし、時計部分が大きく重い時計の場合、バックル側が細いとぐらぐらしてしまう。細身のブレスレットには、薄くて軽い時計がベストバランスである。象徴するのはパルミジャーニ・フルリエの「トンダ PF」コレクションだ。

トンダ PF マイクロローター

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」
ラグジュアリースポーツウォッチのような見た目だが、明らかにドレスウォッチを意識して開発されているのがこのモデル。ブレスレットはバックル側に細く絞られている。自動巻き(Cal.PF703)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS×Ptケース(直径40mm、厚さ7.8mm)。100m防水。265万1000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com

3.薄い微調整機能付きのバックルが当たり前に

 細身のブレスレットと合わせて目に付くのが、エクステンション付きのブレスレットだ。長年、こういうギミックに関心を示さなかったパテック フィリップでさえも、ノーチラスの新作には2mmと4mmのエクステンションバックルを加えたのである。

ノーチラス エクステンション バックル

新しいノーチラスであるRef.5811/1ではバックルにエクステンションが加えられた。ブレスレットのエンド側がそれぞれ2mmずつ、最大4mm延長される。

 簡単に微調整のできるバックルは、一時期は大きく重く、高価な時計だけに見られるものだった。しかし、2022年はさまざまなメーカーがエクステンション付きのバックルを採用するようになった。

 どのバックルも、今までとは異なり、薄くてデスクワークの邪魔になりにくい。ちなみにオメガの「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」も2022年の末から、密かにエクステンションバックルに進化した。

ノーチラス 5811/1

パテック フィリップ「ノーチラス 5811/1」
泣く子も黙るノーチラス。2022年の新作は貴金属ケースとエクステション付きバックルに進化した。自動巻き(Cal.26-330 S C)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(10時位置から4時位置の直径41mm、厚さ8.2mm)。12気圧防水。938万3000円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
Tel.03-3255-8109

4.造形に特化した、今までにないスケルトン

ロイヤル オーク

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク "ジャンボ" エクストラ シン オープンワーク」
単なるスケルトンではなく、オープンワーク。あえて造形を重視した肉抜きはオーデマ ピゲが得意とするものだ。自動巻き(Cal.7124)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約57時間。SS(直径39mm、厚さ8.1mm)。5気圧防水。価格要問い合わせ。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

 ムーブメントを肉抜きしたスケルトンは、2010年以降のトレンドだ。それらの多くは、歯車などを避けて抜く古典的なもの。

トンダ PF スケルトン

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF スケルトン」
こちらも造形を強調したスケルトン。あえて抜きすぎないのが2022年風だ。写真が示すとおり、穴の位置は時計業界の定石にはないものだ。自動巻き(cal.PF777)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRG(直径40mm、厚さ8.5mm)。100m防水。1113万2000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com

 しかし、今年は見た目を優先したスケルトンウォッチが多く見られた。抜き方はあくまで造形優先。その結果として、そのメーカーらしい造形が強調された。オーデマ ピゲ、パルミジャーニ、そしてオリエントスターが好例だ。

コンテンポラリー コレクション スケルトン

オリエントスター「コンテンポラリー コレクション スケルトン」
オリエントスターの野心作。価格を超えた完成度と、ユニークな肉抜きが目立つ1本。自動巻き(Cal.F8B61)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ10.8mm)。5気圧防水。34万1000円(税込み)。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380

5.グッチに“ドルガバ”。非専業メーカーが大暴れ

 時計が出自でないメーカーを非専業メーカーという。成功を収めたカルティエ、ブルガリ、シャネルに続いて、ルイ・ヴィトンやエルメス、そしてグッチにドルチェ&ガッバーナも本格的に時計分野への参入を果たした。後者ふたつに共通するのは、手作業を生かしたハイエンド特化。来年以降も、独自路線を強調するはずだ。

ドルチェ&ガッバーナ 時計

ドルチェ&ガッバーナ「ヴェネツィア」
非専業メーカーのイケイケを象徴する1本。手彫りのケースにカメオの月。しかも世界限定13本だ。自動巻き(Cal.DG 01.02)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約58時間。18KPG(直径42.5mm)。世界限定13本。4万7000ユーロ。(問)ドルチェ&ガッバーナ ジャパン Tel.03-6833-6099