大空に思いを馳せる人気パイロットウォッチ10選。魅力や歴史も解説

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2023.04.02

パイロットウォッチは航空機を安全に操縦するための計器であり、優れた性能とメカニカルな外観が特徴の時計だ。パイロットウォッチの誕生、その歴史や代表的なアビエーション機能を知ることで、よりその魅力にひかれるというものだ。歴史的な名機と、今おすすめのモデルを紹介しながら、パイロットウォッチの魅力に迫る。


人類が空に挑戦し続けた証「パイロットウォッチ」

パイロットが歴史に登場して以降、パイロットウォッチは共に空を飛び続けてきた。飛行技術の発展に合わせてともに歩みを進めてきた、パイロットウォッチの歴史と魅力を追っていこう。

パイロットウォッチの基準とは

DINN8330

2016年3月に発効された「DINN8330」は、安全性、機能性、信頼性といった観点からパイロットウォッチを評価する新規格である。

プロフェッショナルウォッチに分類されるダイバーズウォッチは、ISO規格やJIS規格で厳格にその定義が決められている。

一方で、同じくプロフェッショナルウォッチであるパイロットウォッチには、ブランドによっては明確な基準がない。ブランドがパイロットウォッチだと言えば、そのモデルはパイロットウォッチということもある。

歴代の名機を見ても、高気密なケースや無反射コーティングの風防といった大枠の特徴は共通しているものの、細かい部分はそれぞれ違う。パイロットウォッチは、解釈や時代によって定義が変わるジャンルなのである。

そんな中、ドイツの時計メーカー「ジン」の発案により2012年に誕生したTESTAFをベースとし、2016年ドイツ工業規格の中に、ドイツにおけるパイロットウォッチの新規格「DIN8330」が発表された。ただし、この規格が一般化するとしても、まだまだ先の話になるだろう。

飛行技術とパイロットウォッチの歩み

リンドバーグ アワーアングル ウォッチ

ロンジンが製作した歴史的タイムピース「リンドバーグ アワーアングル ウォッチ」。手巻きキャリバー18.69Nが搭載されている。

腕時計としての史上初のパイロットウォッチは、ブラジル人飛行家アルベルト・サントス=デュモンの依頼を受けてカルティエが製作した「サントス」である。アメリカのライト兄弟が1903年に人類初の動力飛行を成し遂げた3年後、サントスはパリにおいて欧州初の動力飛行に成功した。

第一次世界大戦後の航空機の発展に合わせて、パイロットウォッチは急速に進化する。1931年にロンジンが製作した「リンドバーグ アワーアングル ウォッチ」は、大西洋単独無着陸飛行を成し遂げたチャールズ・A・リンドバーグから着想を得たモデルだ。

1936年発表のIWC「スペシャル・パイロット・ウォッチ」や1942年発表のブライトリング「クロノマット」など、その後も現代に続く名作が生み出された。

クロノマット

1942年に誕生したブライトリングの初代「クロノマット」は、世界で初めて回転計算尺を搭載した傑作クロノグラフだ。

ブレゲ「TYPE XX」は、元々軍用として開発された時計である。一方、第二次世界大戦後のブライトリング「ナビタイマー」や、1954年発表のロレックス「GMTマスター」には第2時間帯表示機能が搭載され、旅客機のパイロットから絶大なる支持を得た。

クロノグラフのムーブメントが手巻きから自動巻きへ移行し、同じ歩みでパイロットウォッチも完成の域に近づいていく。1985年にはブライトリングが「エアロスペース」でクォーツを取り入れ、現在は自動巻き式とクォーツの双方の方式がパイロットウォッチの主流メカニズムとなっている。

エアロスペース

1985年に登場したブライトリング「エアロスペース」は、後にC.O.S.C認定スーパークォーツムーブメントを搭載し、1/100秒クロノグラフ、カウントダウンタイマー、デュアルタイム表示、アラーム、ミニッツリピーター、カレンダーなど多機能を装備。

パイロットウォッチが持つ魅力

パイロットは操縦中に、時計の情報を素早く把握しなければならない。大きめの針やインデックス、蛍光塗料によるコーティングなど、パイロットウォッチには視認性を高めるさまざまな工夫が凝らされている。

高精度を守る優れた耐久性も、パイロットウォッチが持つ特徴だ。耐衝撃性・耐気圧性・耐磁性など、航空時にパイロットや飛行機にふりかかるあらゆるストレスに耐えられる仕様になっているのだ。

飛行を支えるさまざまな独自機能も押さえておきたい。例えば、回転ベゼルや回転計算尺は、コックピットの計器が機能不全に陥る万が一の際に計器の代わりになる、パイロットウォッチならではの機能である。


歴史的名作の系譜を継ぐパイロットウォッチ

パイロットウォッチの歴史においては、時計史に名を残すさまざまなモデルが誕生している。名作の系譜を継ぐ現行のパイロットウォッチを紹介する。

ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43 ボーイング747」

ナビタイマー B01 クロノグラフ 43 ボーイング747

ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43 ボーイング747」
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.69mm)。3気圧防水。世界限定747本。116万6000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

1952年に登場したブライトリングの「ナビタイマー」は、当時の航空愛好家や機長たちに愛用されていた。その後もさまざまなモデルに進化し続けている。

「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」には、飛行に必要な計算ができる回転計算尺や、C.O.S.C認定を取得した自社製ムーブメント、「Cal.01」が搭載されている。

ナビタイマー B01 クロノグラフ 43 ボーイング747

裏蓋には「ONE OF 747」と「The Original Jumbo Jet」のエングレービングが施され、Cal.01(自社開発製造)の動きを眺めることができる。

「ボーイング747 (Ref.AB01383B1G1P1)」は、ボーイング747の最後の納機を記念し、747本限定で発表されたモデルだ。機体のカラーリングが反映され、特別な文字が刻まれている。

ボーイング747

1969年、初めて滑走路を地上走行したボーイング747。ふたつの通路とふたつのデッキを持ち、次に大きいジェット旅客機の2倍もの乗客を運び、5000海里以上を飛行した伝説的ジェット機だ。

ロンジン「アヴィゲーション タイプ A-7 1935」

ロンジン アヴィゲーション タイプA-7 1935

ロンジン「ロンジン アヴィゲーション タイプA-7 1935」
自動巻き(Cal.L788)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.10mm)。3気圧防水。55万2200円(税込み)。(問)ロンジン Tel:03-6254-7350

「リンドバーグ アワーアングル ウォッチ」をはじめ、ロンジンは古くからパイロットウォッチや航空用計器を数多く製造し続けてきたブランドである。

「アヴィゲーション タイプ A-7 1935」は、1935年にアメリカ空軍がパイロットウォッチとして着用していたオリジナルモデルの復刻版だ。

飛行操作中でも時計の情報が見やすくなるよう、文字盤が時計回りの方向に傾いたレイアウトとなっている。クロノグラフの操作に、シングルプッシュピースを採用している点にも注目しよう。

ロンジン アヴィゲーション タイプA-7 1935

ケースバックには、サンバースト模様に囲まれた飛行機が描かれ、翼にはロンジンのロゴが刻印されている。

ロレックス「GMTマスター Ⅱ 126711CHNR-0002」

1955年に誕生した先代の「GMTマスター」は、GMTウォッチの代名詞的な存在となっている時計だ。コンコルドのテスト飛行で使用されていたことでも知られる。

「GMTマスター Ⅱ」は、ムーブメントを一新して1982年に発表された後続シリーズである。24時間で1周するGMT針を備え、2つのタイムゾーンの時刻を同時に読み取れるのが特徴だ。

オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ

ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRG×SSケース(直径40mm)。100m防水。

デザイン性の高さもGMTマスター ll の魅力と言えるだろう。「126711CHNR-0002」は、ブラック・ブラウンのセラミック製セラクロムベゼルインサートが武骨な印象を払拭して、高級感を与える1本だ。

オイスターブレスレットは、3列リンクの中央に華やかなエバーローズゴールドを採用している。

IWC「パイロット・ウォッチ・マーク XX」

パイロット・ウォッチ・マーク XX

IWC「パイロット・ウォッチ・マーク XX」
自動巻き(Cal.32111)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。10気圧防水。72万6000円(税込み)。人気商品のため入荷待ちの可能性有り。(問)IWC Tel.0120-05-1868

IWCは現代のパイロットウォッチマーケットを牽引するトップランナーだ。「スペシャル・パイロット・ウォッチ」の系譜を継ぐマークシリーズの現行コレクションが、2022年に登場した「マーク XX」である。

直径40mmとスタンダードなサイズでありながら、厚みを10.8mmまで抑え込み、上品な印象を与えている。文字盤に施された夜光塗料により、暗所での視認性も抜群である。

12時位置の三角マークとアラビア数字は、歴代のマークシリーズ、しいてはすべてのパイロットウォッチから継承され続けてきた伝統的意匠だ。「マーク XX」には色違いモデルやブレスレットモデルもあるので、好みに合わせて選びたい。


ブレスレットの魅力が光るパイロットウォッチ

コーディネートに合わせてパイロットウォッチを選ぶのも、ひとつの方法だ。カジュアルなファッションを引き立てる、ブレスレットが魅力的な3モデルをチェックしよう。

ブレゲ「TYPE XXI 3810」

TYPE XXI 3810

ブレゲ「TYPE XXI 3810」
自動巻き(Cal.584Q)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(直径42mm、厚さ15.2mm)。10気圧防水。202万4000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211

ブレゲのパイロットウォッチ「TYPE XXI」は、1950年代に開発された軍用時計「TYPE XX」にオマージュを捧げるシリーズである。

パイロットウォッチがルーツでありながらも、ダイヤルの光沢感や、ケースサイドの伝統的なフルート模様「コインエッジ」など、上品で洗練された仕上がりに。

クロノグラフにはフライバック機能が搭載されており、ゼロリセットと再スタートを瞬時に行える。ロジウム仕上げのブラウン文字盤は、シンプルなカジュアルファッションにも華を添えてくれる。

ブライトリング「クロノマット B01 42 シックス・ネーションズ フランス」

クロノマット B01 42 シックス・ネーションズ フランス

ブライトリング「クロノマット B01 42 シックス・ネーションズ フランス」
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm、厚さ15.1mm)。200気圧防水。世界限定150本。8800€(日本未発売)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

「クロノマット B01 42」は、スポーティーでありながら高級感も併せ持つ、万能型のラグスポモデルである。視認性の高いデザインと優れた堅牢性を特徴に持ち、さまざまなシーンに向く。

筒状のパーツを並べたルーローブレスレットは、初代クロノマットから受け継がれている要素であり、ブライトリングのパイロットウォッチを声高に訴えるその強固な構造はデザインのみならず腕なじみも良い。

「クロノマット B01 42 シックス・ネーションズ」は、シックス・ネーションズ・ラグビーの記念モデルだ。「フランス版 (Ref.AB0134A81C1A1)」にはフランスの独自デザインが施されており、他の国のモデルと同じく150本限定で販売されている。

ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ126710BLNR」

ロレックスの「GMTマスター Ⅱ」からも、金属ブレスレットに特徴があるモデルを紹介しよう。「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」は、初代モデルに新しいムーブメントを搭載した後継モデルだ。

オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ

ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径40mm)。100m防水。

自社製ムーブメント「Cal.3285」は、高精度でC.O.S.C認証を取得した自社制ムーブメントである。約70時間のパワーリザーブを誇り、耐衝撃性に加え気温変化にも安定性を保つ。

5列リンクのジュビリーブレスレットは、ロレックスが開発したイージーリンクにより、簡単にブレスレットの長さを約5mm調整できる。


シックなレザーストラップを備えたパイロットウォッチ

レザーストラップのモデルなら、高級感を演出しやすい。ミッションウォッチのイメージをややおさえつつ、日常の装いにも合わせやすい。スーツ姿でシックな雰囲気を醸し出したい人にはおすすめだ。以下の3モデルを比較してみよう。

ハミルトン「カーキ アビエーション X-ウィンド オートクロノ」

カーキ アビエーション X-ウィンド オートクロノ

ハミルトン「カーキ アビエーション X-ウィンド オートクロノ」
自動巻き(Cal.H-21)。44石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ15.55mm)。10気圧防水。25万3000円(税込み)。(問)ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371

ハミルトンは第一次大戦下の1918年から、多くのパイロットウォッチを作り続けてきたブランドだ。自動巻きやクロノグラフなど、豊富なバリエーションをそろえている。

「カーキ アビエーション X-ウィンド オートクロノ」は、横風がどれだけ飛行工程に影響するか計算できる機能を初めて「カーキ X-ウィンド」シリーズに搭載したモデルだ。

カーキ アビエーション X-ウィンド オートクロノ

他にも飛行をサポートするさまざまな機能を搭載している。単にクラシカルでなくモダンな優雅さを兼ね備えており、普段使いにも重宝する。

カーキ アビエーション X-ウィンド オートクロノ

航空機を操縦する際、横風による飛行工程の影響が計算できる偏流修正角計算機能を腕時計では初めて搭載し、裏蓋には計算に必要なアングルスケールを刻印し、パイロットウォッチとして必要な機能が装備されている。

ゼニス「パイロット タイプ 20 エクストラ スペシャル」

パイロット タイプ 20 エクストラ スペシャル

ゼニス「パイロット タイプ 20 エクストラ スペシャル」
自動巻き(Cal.エリート679)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。ブロンズケース(直径45mm、厚さ14.25m)。10気圧防水。95万7000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861

「パイロット タイプ 20 エクストラ スペシャル」は、ゼニスが1世紀以上前に開発した時計とダッシュボード計器から着想を得て作られたパイロットウォッチである。さらに今年はパイロットウォッチの全面リニューアルがあるそうだ。

「29.2430.679/21.C753」には、独特なヴィンテージ感を醸し出すブロンズ製ケースを採用。ブラウンのヌバックレザーストラップで、ヴィンテージ感をより引き立たせている。

搭載されているムーブメントは、メゾンが誇る高性能機構「エル・プリメロ」だ。約50時間のパワーリザーブと豊富なコンプリケーションを備えている。

ジン「103.TI.IFR」

103.TI.IFR

ジン「103.TI.IFR」
自動巻き(Cal. ETA Valjoux 7750)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。Tiケース(直径41mm、厚さ17mm)。20気圧防水。55万円(税込み)。(問)ホッタ Tel.03-5148-2174

ドイツの時計メーカー「ジン」は、実際にドイツ空軍へ納入した実績が語るように無駄な装飾を省いたアビエーションウォッチとして実用性を追求したモデルが多いブランドである。ほとんどの時計が視認性に優れ、無類の頑強さを誇っている。

「103.TI.IFR」は、ドイツにおけるパイロットウォッチの規格「DIN8330」に準拠したパイロットウォッチだ。Ar ドライテクノロジーと特殊オイルを採用し、プロ仕様に仕上げられている。

Arドライテクノロジー

ジンが開発した「Arドライテクノロジー」の1つ「ドライカプセル」。7時位置のラグに埋め込まれたカプセルには特殊乾燥剤が充填され、これにより時計ケース内の水蒸気が吸収され、湿気を取り除いてくれる。

ケース素材にチタンを使っているため、103シリーズのステンレススティール製モデルより軽い。頑丈かつ軽量な1本は、アクティブなシーンでも活躍してくれるだろう。


パイロットウォッチで大空にはばたくロマンに満ちたひとときを

飛行技術の発展ととも共に進化してきたパイロットウォッチは、操縦者の命を守るための機能が満載されていることに尽きる。コックピットを思わせるメカニカルな外観は、その使命感とともにさまざまな世界で活躍するプロフェッショナルの矜持に応える要素のひとつだ。

パイロットウォッチの歴史を知り、人類が大空に馳せてきた思いをイメージしながら、お気に入りのパイロットウォッチで大空にはばたくロマンあふれる時間を過ごしたい。


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