ポルシェデザインのクロノグラフ腕時計。ブランドの歴史とともに魅力をひもとく

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2023.05.23

ドイツの高級車で有名なポルシェだが、そのポルシェAG傘下のポルシェデザイン(Porsche Design)という時計ブランドについてご存じだろうか? ハイレベルな技術を駆使し、いくつもの世界初の偉業を成し遂げている、ポルシェデザインの偉業や歴史について、この記事でひもといていこう。

ポルシェデザイン


ポルシェデザインというブランドについて

ポルシェデザイン(Porsche Design)は、1972年に自動車メーカーのポルシェの創設者であるフェルディナント・ポルシェ(1875-1951)の孫、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(1935-2012)によって設立された、ドイツの高級デザイン会社だ。

同社は、時計をはじめとしてアイウェア・筆記具・電子機器・スポーツウェア・ラゲッジ・アクセサリーなど、幅広いプロダクトカテゴリーにまたがるプレミアム製品を、主にメンズ向けに提案している。

時計製品については「機能がデザインを決める」という哲学のもと、純粋なデザイン美学を追求し、その特徴的なクリーンかつミニマリズムに特化したデザインで、世界中の消費者に愛されている。

世界初のコンパス付きチタニウム時計や、2,000m防水機能を備えた時計など、時計業界の歴史に名を刻むいくつもの腕時計を発表している。この技術水準の高さと、徹底的に自社哲学に準じた時計造りこそが、ポルシェデザインの魅力といえるだろう。

時計造りにおいては、ムーブメントはアウトソーシングで製作を依頼し、ポルシェデザインはデザインを担当する。

ポルシェデザインは、スイスの時計メーカー「オルフィナ(Orfina)」との協力関係を築き、1972年に、初の腕時計「クロノグラフ1」を発表した。

その後、ポルシェデザインは、次々とブランドにとってフラッグシップとなるクロノグラフウォッチを開発し、時計業界における革新的なブランドとして名声を築き、今日に至る。


ポルシェデザイン創業からの歩み

ポルシェデザイン創業から、現在までの歴史を解説する。ポルシェデザインの半世紀以上にわたる歩みを見ていこう。

ポルシェデザインスタジオの設立

フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ

ポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェの孫であるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは、ポルシェ911の生みの親であり、デザイナーとして腕時計、サングラス、筆記具などのデザインも手がけた。

ポルシェデザインの歴史は、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェが独立したデザインスタジオ「ポルシェデザインスタジオ」を、ドイツのシュトゥットガルトに設立したことから始まる。

フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは、1960年代からポルシェのデザイン・ディレクターを務めており、1963年の名車ポルシェ911のデザインを手掛けたことでも有名な人物だ。

ポルシェデザインの最初のプロダクトとして発表されたのが「クロノグラフ1」だ。この時計は、黒いアンチグレア仕上げのステンレススティールケースとブレスレットが特徴で、機能性とデザイン美学の両方を追求した画期的な製品となっている。

スタジオ・F.A.ポルシェ

時計をはじめ、ペンやアイウェアなどのプロダクトデザインは、オーストリアのツェル・アム・ゼーにある、スタジオ・F.A.ポルシェ(ポルシェデザインスタジオ)で行われている。

1974年、ポルシェデザインスタジオは、オーストリアのザルツブルク州にあるツェル・アム・ゼーという小さな町に移転した。

以降、サングラス、テックフレックス・ボールペンなど、時計以外の製品も手がけるようになっていく。そんな中でも腕時計はポルシェデザインにとって重要なテーマであり続けた。

ポルシェデザイン CP4 by Kiwi

1976年に製作されたポルシェデザインが手がけたヘルメット「ポルシェデザイン CP4 by Kiwi」。
「P'8478

1978年に登場した世界初のレンズ交換式サングラス「P'8478」。

IWCとの連携とエテルナの買収

チタニウム・クロノグラフ

1980年に登場した「チタニウム・クロノグラフ」。ケースとブレスレットが一体化したデザインで、腕時計で初めてケースとブレスレットにチタニウムが採用された。

ポルシェデザインは、時計製造において、いくつかのパートナー企業と連携してきた歴史がある。そのひとつが、スイスの高級時計メーカーであるIWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)とのパートナーシップだ。

1978年から1997年までの間、ポルシェデザインとIWCは共同で時計を開発し、市場に投入してきた。代表的なものとしては、IWCを介してポルシェデザインが1980年に発表した初のオールチタニウム製ケース&ブレスレットの腕時計、「チタニウム・クロノグラフ」が挙げられるだろう。

ケースとブレスレットにチタニウムが採用されており、肌に優しく、かつ軽量。ブラックダイアルには白いインデックスと針が配置され、視認性が非常に高いデザインとなっているのが特徴だ。

また、ポルシェデザインは、スイスの名門時計ブランド、エテルナ社との買収・提携を通じて、さらに多くの革新的な時計を開発し、高品質な製品を市場に提供し続けている。

「ポルシェデザイン・タイムピースAG」を設立

2012年、エテルナとの提携を解消したポルシェ一族は、エテルナを中国のハイダングループ(当時)に売却した。そして2014年、ポルシェデザインは自社ファクトリーである「ポルシェデザイン・タイムピースAG」をスイスに設立する。

このファクトリー設立により、それまではパートナーのライセンス生産を続けるのみだったポルシェデザインは、デザインだけでなく開発から製造、組み立て、品質管理までの一連のプロセスを自社内で行うことが可能となった。

念願だった自社ファクトリーの設立により、ブランドが追求し続けてきた高機能の時計を安定供給できるようになり、時計ブランドとしての地位を確立したのである。

オリジナルムーブメント"WERK"の完成

Cal.WERK 01.200

C.O.S.C.によって認定された、自社製ムーブメント、Cal.WERK 01.200。

2017年、ポルシェデザインは3年間の研究開発を経て、初の自社開発ムーブメントであるCal.Porsche Design WERK 01.200を発表した。精度を保証する規格、C.O.S.C.認定を取得しており、パワーリザーブは約48時間、連続計測を可能にする複雑機構、フライバック・クロノグラフ機能を保持しているきわめて高精度の時計だ。

その後も、次々と自社製ムーブメントを搭載した時計を発表している。

車との相乗効果のある時計も発表されている。2017年には、911ターボSに使用されているカーボンファイバーやラッカー塗装を取り入れた「ポルシェデザインクロノグラフ911ターボSエクスクルーシブ シリーズ」、2018年には、ポルシェ911採用のアロイホイール(フックス社製)の形をしたローター搭載の「クロノグラフ 70Y スポーツワーゲン PCA エディション」などが、同社より発売された。

ポルシェデザインクロノグラフ911ターボSエクスクルーシブ シリーズ

911ターボ S「エクスクルーシブシリーズ」と同じデザインの「ポルシェデザインクロノグラフ911ターボSエクスクルーシブ シリーズ」は、車体色と同じ6色が揃い、各500本限定で発売された。


ポルシェデザインが手がけた歴史的な時計

ポルシェデザインは、世界初となる機能、規格を搭載した時計をいくつも発表している。歴史に名を刻んだポルシェデザインの名品を見ていこう。

世界初のフルブラック腕時計を発表

クロノグラフ1

1972年に登場した、ブランド初の腕時計「クロノグラフ1」。ポルシェ911のダッシュボートからインスパイアされた世界初のフルブラックウォッチだ。

1972年にポルシェデザインが発表した「クロノグラフ1」は、世界初のフルブラック腕時計として歴史に名を刻んだ。

そのデザインは、ブラックPVDコーティングを施したステンレススティールケースと、ブラックのダイアル、ブレスレットで構成されており、白いインデックスと針が視認性を高めている。

ブラックの腕時計は当時としては珍しいもので、一時的な流行だと思われていた。しかし、現在では、フルブラックはモダンなデザインのひとつのタイプとして定着している。

2022年、ポルシェデザインはポルシェデザイン社創業50周年を記念し、「クロノグラフ1-1972 リミテッド・エディション」を復刻した。

クロノグラフ1-1972 リミテッド・エディション

ポルシェデザイン「クロノグラフ1-1972 リミテッド・エディション」
自動巻き(Cal.Porsche Design WERK 01.140)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径40.8mm、厚さ14.15mm)。10気圧防水。世界限定500本。

世界初のコンパス付きチタニウム時計

コンパスウォッチ

軍用時計として開発された「コンパスウォッチ」は、コンパス(方位磁針)を内蔵した腕時計。時計本体部分が開閉式となっている。

IWCとのコラボレーションによって生まれた世界初のコンパス付きチタニウム時計も、ポルシェデザインを代表する時計のひとつだ。

6時側にあるラグサイドボタンを押すことで、内蔵されたコンパスの針が時計の文字盤に現れる仕組みとなっており、ハイキングやキャンプシーンで重宝された。

世界初の2,000m防水機能

オーシャン2000

1978年から1997年に製作されていたコラボレーションブランド「ポルシェデザイン by IWC」から、1981年に登場した「オーシャン2000」。軽量なチタンケースでありながら、2,000m防水というオーバースペックを実現した伝説的モデルだ。

「オーシャン2000」は、1980年代にポルシェデザインとIWCが共同開発したダイバーズウォッチだ。最大2,000mの水深まで対応する圧力耐性を持つ時計は、ポルシェデザインのこのモデルが世界初となる。

この時計は当時、西ドイツ海軍から、200m防水時計の開発を依頼されたものだ。IWCはポルシェデザインと共同で、依頼されたスペックの10倍の性能を誇る腕時計を作り上げた。

ポルシェデザインらしいシンプルかつ機能的なスタイルが特徴のこの時計は人気が高く、過去に複数のモデルが製造されている。


腕時計の歴史を進める時計ブランド

ポルシェデザインは、創業から半世紀の間にさまざまな名機を生み出してきた。その中には、世界初となるフルブラック時計、2,000m防水機能など、今の時計と比較しても遜色ない機能を持った時計が多く存在する。

フォルクスワーゲン、ポルシェという一流の名車を生み出したポルシェ一族の才能は、時計業界でも余すことなく発揮されている。「機能がデザインを決める」というフィロソフィーは、ポルシェデザインを語る上で欠かすことのできない金言に他ならない。

このフィロソフィーに基づいて、この先も常に機能優先の高精度ウォッチを生み出すことに、すべての時計ファンからの期待が寄せられている。



Contact info: ドイツ時計株式会社 Tel.03-6277-4139


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