シチズン時計「カンパノラ」の限定モデル6本。宙空を思わせる芸術性に迫る

シチズン時計のブランドでも、類まれなデザインを持つのが「カンパノラ」だ。特に限定モデルには、“宙空”（ちゅうくう）を思わせる美意識を詰め込んだモデルが並ぶ。そこで、カンパノラにはどのような限定モデルがあるのか、コレクションの概要とともに見ていこう。

「カンパノラ」の限定モデルがあるコレクション

カンパノラは「宙空の美」をデザインコンセプトに掲げて、シチズン時計が2000年に生み出した最高級ブランドだ。24年3月現在、6コレクションを展開している。

その中で限定モデルがあるのは、「グローバルアート コレクション」「コンプリケーション コレクション」「コスモサイン コレクション」の3つだ。まずはコレクションごとの魅力を知って、限定モデルへの理解を深めよう。

なお、今回紹介するモデルは数量限定につき、すでに在庫僅少で、完売してしまっている可能性がある。

グローバルアート コレクション

カンパノラの中でも上位に位置するのが、グローバルアート コレクションだ。スイスのラ・ショード・フォンに位置するムーブメントメーカーのラ・ジュー・ペレ（La Joux-Perret SA）の時計師が作った機械式ムーブメントと、日本の工芸技法が融合したハイエンドコレクションである。

グローバルアート コレクションは22年6月にスタートし、ブランドで初めてフライングトゥールビヨンを搭載した限定モデル「天」と「地」を第1弾としてリリースしている。

フライングトゥールビヨンとは、ブリッジを持たずキャリッジが浮いて見える機構だ。一般的なトゥールビヨンと比べて、精度を保つのが難しい。

コンプリケーション コレクション

コンプリケーション コレクションにも、カンパノラの美学を詰め込んだような、ロマンあふれる限定モデルがある。

コンプリケーション コレクションはその名前の通り、ムーンフェイズやクロノグラフ、永久カレンダー、ミニッツリピーターなどの複雑機構を搭載したモデルを展開するコレクションだ。

初代モデル「グランドコンプリケーション」は、カンパノラが誕生した2年後の02年に登場した。このグランドコンプリケーションの誕生20周年を記念して、限定モデルが22年に2本リリースされている。

グローバルアート コレクションの限定モデル

至高のタイムピースといえば、なんといってもグローバルアート コレクションだ。「天」と「地」を名に冠したふたつのモデルについて、コンセプトや投入される技術について紹介する。

天 -TEN-

「天」と名付けられた「NZ3000-01L」は、日本の伝統技術である漆塗りの手法で文字盤に宇宙を表現した。特定店で限定5本しか販売されていない稀少なモデルだ。

螺鈿（らでん）を星々に見立て、プラチナ粉をまいて研ぎ出すことで「炎のように舞う星雲」を描写し、宇宙の神秘を表現している。青色の透き漆で作られた空に、フライングトゥールビヨンが衛星軌道のような動きを与えるさまは、このモデルでしか味わえないだろう。

地 -CHI-

「天」と同じ18Kホワイトゴールドのケースを用い、大地をイメージした限定モデルが「地」（NZ3000-19P）だ。「天」と同様、特定店限定5本の販売だ。

透き漆を使った「天」と違い、「地」は乾漆粉で荒らした生地に金を蒔くことで大地の荒々しさを表現しているのが特徴だ。宇宙の浮遊感のようなフライングトゥールビヨンが、悠久の大地が歩んできた長い時間を想起させる。

コンプリケーション コレクションの限定モデル

コンプリケーション コレクションの限定モデルは、デザインや複雑機構だけでなく、モデル名にもブランドの美学が感じられる。グランドコンプリケーションの誕生20周年を記念して生まれた「皨雨」「蒼波」の2本と、人気のモデル1本を紹介しよう。いずれも特定店限定の時計だ。

皨雨（ほしのあめ）

「皨雨」（AH4086-05E）は、黒漆と金色粉で宇宙に広がる星の存在を見事に表現したモデルだ。黒のワニ革ストラップにはゴールドカラーのステッチを施している。

複雑機構としては、クロノグラフや12時位置のムーンフェイズのほか、永久カレンダー、ミニッツリピーターも備わっている。高低2種の音で時刻を知らせるミニッツリピーターはレトロな音色で、古典的なコンプリケーションウォッチを十分に堪能できるだろう。

蒼波（そうは）

皨雨とともに、グランドコンプリケーション誕生20周年記念モデルとしてリリースされたのが、「蒼波」（AH4086-13L）である。青漆に金属の粉末を練り込むことで、月夜の海を表現している。

黒をベースとした皨雨と比べて、明るい色味のコーディネートに合わせやすいだろう。皨雨と同様、クロノグラフとムーンフェイズ、永久カレンダー、ミニッツリピーターを搭載している。

深緋（こきあけ）

日本の伝統的な色名を由来とした限定モデルも紹介しよう。「深緋」（AH7065-09Y）だ。「深緋」は「こきひ」「ふかひ」とも呼ばれる、暗い赤の色名だ。緋色よりも染める手間がかかった深緋は、かつて平安時代の格式で高位の朝服の色であった。

文字盤デザインの基になったのは、日本庭園に用いられる水琴窟の手水鉢からしたたり落ちる水滴である。甑（かめ）の底に広がる水面に水滴が落ちたときの波紋を、サブダイアルで表したのだ。ミニッツリピーターの音色は複数種類あり、いずれも本物の鐘のような優しい響きを楽しめる。

コスモサイン コレクションの限定モデル

コスモサイン コレクションは、文字盤に天空の星の動きや、月の満ち欠けを細部まで精密にレイアウトした、ロマンあふれるコレクションだ。01年に初代モデルが登場して以来、その独自のデザインと機能が人気を博している。

文字盤に北緯35度の全天星座を表示。4.8等星以上の恒星をはじめ、アンドロメダ銀河やオリオン大星雲などの星雲・星団が、14もの版を重ねて精密な印刷で描かれている。

AO4016-11E

2024年の新作「AO4016-11E」は、漆黒の宇宙に浮かぶ全天星座を表現。黒と金のフランジ部は宇宙空間に広がる星雲のおぼろげな光を表現している。

カンパノラの限定モデルで宙空の美を感じよう

カンパノラの限定モデルはいずれも、日本の伝統と時計製造技術の融合という、類まれなエスプリが落とし込まれた時計だ。グローバルアート コレクション、コンプリケーション コレクション、コスモサイン コレクションいずれの限定モデルにも、独自のコンセプトや美学がある。

自身が大切にするロマンやコーディネートの好みに合わせて、気に入る限定カンパノラを選んでみよう。美しい宇宙や大地、日本の伝統を想起させる腕時計は、着ける人の日常を豊かに彩ってくれるはずだ。