時計ライターの佐藤しんいちが選んだ「普段使いできる“高級”ドレスウォッチ」とは?

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2026.08.15

時計ライター・佐藤しんいちがドレスウォッチの最新ラインナップに注目し、おすすめとして厳選した5モデルを紹介する。選定基準は、ドレスウォッチの世界観を楽しむことができるスタイリングおよび高級感があると言えるディテールを持ちつつ、3気圧以上の防水性能や必要十分なパワーリザーブといった実用性も兼ね備えているモデルだ。

シチズン ロレックス ブランパン

佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2026年8月15日公開記事]


ドレスウォッチの世界観を日常で楽しめる厳選した5モデルを紹介

 今回はドレスウォッチに注目して、厳選した5モデルを紹介してゆきたい。歴史的に見てドレスウォッチは、優雅なひと時のためのフォーマルなスタイリングと、ドレッシーさを失わない程度に日常使いのための耐久性を高めたスタイリングの間で、バランスを取る試みが繰り返されてきた。よりドレッシーに仕立てたいなら、コンパクトかつ薄いシルエットが望ましい。すると、特に薄い仕立てが災いして、現代基準では防水性や耐衝撃性能、パワーリザーブ等の実用性が物足りなくなりがちであった。

 このような背景の下、近年では最新技術を盛り込むことにより実用性を高め、普段使いのできるドレスウォッチが多く提案されている。そこで今回は、ドレスウォッチの世界観を楽しむことができるスタイリングや高級感のあると言えるディテールを持ちつつ、3気圧以上の防水性能、そして必要十分なパワーリザーブといった実用性も兼ね備えているモデルをピックアップして紹介する。

ロンジン「ロンジン マスターコレクション」Ref.L2.843.4.73.2

ロンジン「ロンジン マスターコレクション」Ref.L2.843.4.73.2
自動巻き(Cal.L893.5)。27石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.5mm、厚さ10.20mm)。3気圧防水。40万3700円(税込み)。(問)ロンジン 03-6254-7350

 最初に取り上げるのは、「ロンジン マスターコレクション」Ref.L2.843.4.73.2だ。ベースとなるのは、ブランド創立190周年を記念して2022年に発表されたモデルである。そのコンセプトは、190年という長い歴史の中で生み出された数多くの名作をひもとき、それらのエッセンスを取り入れながら再構築してデザインするというものであった。今回取り上げるのは、スモールセコンドとレザーストラップを組み合わせたモデルだ。

 最大の特徴は、エングレービングで描き出されたインデックスである。このようなインデックスは、かつては職人の手彫りによるものであったが、本作では最新の機械加工により実現し、コストを抑える試みが盛り込まれている。クラシカルな印象を生み出す立体的なインデックスを、手の届きやすい価格で提供している点は本作の魅力のひとつだ。

 全体のデザインは、円形文字盤にブルーのリーフ型時分針というクラシカルなスタイリングに、ケースとラグが一体化し、曲線を主体としたモダンなシルエットを備えている。このように、単純な復刻モデルとは異なる、現代的なエッセンスを持つことは本作の特徴と言えよう。

 搭載するのは自動巻きのCal.L893.5で、パワーリザーブは約72時間と、こちらも現代的で実用性が高い。さらに、本作の直径38.5mmケースとシルバー文字盤の組み合わせのほかに、サーモンピンク文字盤、アンスラサイト文字盤、直径40mmのセンター時分秒針のデザインなど、さまざまなバリエーションが用意されているため、好みの1本が見つかるはずだ。長い歴史を持つロンジンが現代に提案するクラシカルなドレスウォッチとして、注目すべきモデルだろう。

シチズン「エコ‧ドライブ ワン」Ref.AQ5022-02E

シチズン「エコ‧ドライブ ワン」Ref.AQ5022-02E

シチズン「エコ・ドライブ ワン」Ref.AQ5022-02E
光発電エコ・ドライブ(Cal.8845)。フル充電時約7カ月駆動。SSケース(直径36.6mm、厚さ4.5mm)。日常生活用防水。36万3000円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室 フリーダイヤル 0120-78-4807

 “ドレスウォッチらしさ”を生み出す要素はいくつかあるが、その中で薄さは重要なファクターだ。その薄さを極めているモデルのひとつが、シチズン「エコ‧ドライブ ワン」Ref.AQ5022-02Eである。エコ・ドライブ ワンには、シチズンが誇る光発電技術を極限まで進化させ、薄型化を追求したモデルが並んでいる。

 エコ・ドライブ ワンには、いくつかのデザインがラインナップされており、その中で今回取り上げるのは、クラシカルで伝統的なドレスウォッチを思わせるスモールセコンドモデルである。ケースは、直径36.6mmとコンパクトな仕立てで、時計仕上がり厚さはわずか4.5mmと超薄型だ。

 薄さを追求しようとすると、文字盤と風防の間の空間も狭くなってしまい、文字盤上の立体感が乏しくなってしまいがちである。これに対し、本作では厚さ1mmのムーブメントを用いることでムーブメントに占有される容積を削減し、文字盤側の空間を確保。立体感のあるインデックスやサブダイアルの枠を配することを可能としている。

 ピックアップしたRef.AQ5022-02Eは、引き締まったブラックの文字盤に、シチズン独自の表面硬化処理「デュラテクト」を施したアンバーイエローのケースを組み合わせ、上品で落ち着いた雰囲気を生み出している。搭載される光発電エコ・ドライブムーブメントのCal.8845は、フル充電時には約7カ月間駆動し、実用面も万全だ。

オリエントスター「M45 F7 スモールセコンド」Ref.RK-BS0002S

オリエントスター「M45 F7 スモールセコンド」Ref.RK-BS0002S

オリエントスター「M45 F7 スモールセコンド」Ref.RK-BS0002S
自動巻き(Cal.F7H44)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径39.0mm、厚さ11.7mm)。3気圧防水。13万2000円(税込み)。(問)オリエントお客様相談室 042-847-3380

 続いても国産のドレスウォッチを紹介しよう。オリエントスター「M45 F7 スモールセコンド」Ref.RK-BS0002Sは、ラウンドケースにセンター時分針、6時位置にスモールセコンド、12時位置にパワーリザーブ表示を備えるモデルだ。オリエントおよびオリエントスターは、パワーリザーブ表示を持つモデルを多くラインナップしており、本作はオリエントらしい仕様を持つモデルと言えるだろう。

 ケース径は39.0mmと、現代の腕時計の標準的なサイズ感となっている。ディテールに注目すると、アイボリーカラーの文字盤に、リーフ型の時分針、ローマンインデックス、レイルウェイミニッツトラック、ブラウンのレザーストラップを組み合わせており、クラシカルさを前面に押し出したデザインだ。このように、さまざまなコーディネートに取り入れやすい現代的なサイズ感に、クラシカルな仕立てを組み合わせている点が本作の魅力だ。なお、価格の点では本記事に掲載した他のモデルと比較すると“高級”の部類ではないかもしれない。しかし文字盤の高い質感や針の精緻な造形は高級感があるため、“高級”ドレスウォッチとしてピックアップしている。

 そんな本作に搭載されるのは、自動巻きのCal.F7H44で、パワーリザーブは約50時間、JIS1種の耐磁性能を備え、現代のライフスタイルにマッチした性能を持つ。今回取り上げた中では最も手に取りやすい、13万2000円(税込み)という価格も魅力で、初めての機械式ドレスウォッチとして候補に入れるのも良さそうだ。

ロレックス「パーペチュアル 1908」Ref.52508

ロレックス パーペチュアル 1908

ロレックス「パーペチュアル1908」Ref.52508
自動巻き(Cal.7140)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約66時間。18KYGケース(直径39.0mm、厚さ9.50mm)。50m防水。

 続いて紹介するのは、評価の高いハイエンドな2モデルだ。1本目は、ロレックス「パーペチュアル 1908」Ref.52508である。パーペチュアル 1908は、2023年に発表されたコレクションで、モデル名は「Rolex」の商標がスイスで正式に登録された1908年に由来する。歴史的な年を名に冠しているだけあり、ロレックスが長きにわたって磨き上げてきた時計技術が盛り込まれた、高い完成度が特徴となっている。

 文字盤デザインは、3、9、12をアラビア数字インデックス、他をバーインデックスとして、6時位置にスモールセコンドを配したもので、これらは初期の「オイスター パーペチュアル」を彷彿とさせるクラシカルさを生み出している。一方で、針とインデックスに施された高品質な仕上げや、フルーテッド(刻み)とドーム形状が組み合わされて細く仕立てられたベゼルによって、モダンな印象も兼ね備えた仕上がりだ。

 さて、ロレックスの「パーペチュアル」とは、1931年に開発された自動巻き機構を指している。それまでにも自動巻き機構は開発されていたが、ロレックスのパーペチュアルの完成度は高く、同社の名声をさらに高める要因のひとつとなり、現在でもアイコンとなっている。本作に搭載されるのは、このような歴史から系譜を引き、パーペチュアル 1908用に開発された自動巻きムーブメントCal.7140である。Cal.7140は、パーペチュアル 1908のクラシカルなスモールセコンドデザインを実現しつつ、耐磁性能や安定した精度を実現するシリコン製シロキシ・ヘアスプリングおよび高効率なクロナジーエスケープメント、耐衝撃性能を確保するパラフレックス ショック・アブソーバを備え、パワーリザーブも約66時間と、現代的な性能を有している。さらに、薄型設計によって時計の仕上がり厚さは9.50mmと、ドレスウォッチらしいスリムな仕立てになっている点も魅力だ。さらに、パーペチュアル 1908は、ロレックスとしては珍しくトランスパレントバック仕様で、完成度の高いCal.7140を鑑賞可能だ。

 このように、デザインと実用性を高いレベルで両立している点は実にロレックスらしく、取り上げるべき1本と言える。

ブランパン「ヴィルレ ウルトラスリム」Ref.6224N 1142 55B

ブランパン「ヴィルレ ウルトラスリム」

ブランパン「ヴィルレ ウルトラスリム」Ref.6224N 1142 55B
自動巻き(Cal.1150)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SSケース(直径38.00mm、厚さ8.35mm)。3気圧防水。159万5000円(税込み)。(問)ブランパン ブティック 銀座 03-6254-7233

 最後は、創業から290年以上の歴史を持つブランパンの名作ドレスウォッチの中から、「ヴィルレ ウルトラスリム」Ref.6224N 1142 55Bを紹介しよう。ブランパンは、1735年にジャン=ジャック・ブランパンによってスイスのジュラ山脈に位置するヴィルレで創業されたブランドだ。現在のブランパンのラインナップは明快で、モダンダイバーズウォッチの始祖からの系譜を引く「フィフティ ファゾムス」、パイロットクロノグラフの「エアコマンド」、レディースモデル「レディバード」、職人技による芸術的な文字盤を持つ「メティエダール」、そしてドレスウォッチのラインナップを引き受ける、創業の地を名前に持つ「ヴィルレ」である。

 ヴィルレは長きにわたって、ラウンドケースに細身で繊細なラグ、シンプルでエッセンシャルな文字盤に多くのモデルでローマンインデックスを組み合わせるなどといった、ドレッシーなデザインコードを守ってきた。今回取り上げるヴィルレ ウルトラスリムは、まさにこのデザインコードを継承しており、アイボリーカラーのオパーリン文字盤を持つモデルとなっている。また、2025年のヴィルレの刷新に伴い、ジャン=ジャック・ブランパンの“JB”のイニシャルを12位置に配している。

 ケース径は38.00mmで、ウルトラスリムの名の通り、時計仕上がり厚さは8.35mmとなっており、コンパクトかつ薄い、ドレスウォッチらしいシルエットを持つ点が魅力だ。このシルエットを実現しているのは、自動巻きムーブメントのCal.1150の採用によるものだ。Cal.1150はムーブメント厚さがわずか3.25mmであるにもかかわらず、耐磁性能と作動の安定性を高めるシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、パワーリザーブは約100時間となっている。このような薄型化と高い実用性を両立している点は、本作に注目すべき大きな理由である。

 予算が許すならば、長年愛されてきたアイコニックなスタイリングと、現代的な性能を持つヴィルレ ウルトラスリムを候補に入れて検討してほしい。


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