【ジュネーブ日記・夏】2日目:疲れた体にムチ打って、時計取材の旅は続くよどこまでも

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2026.09.12

2026年9月2〜6日まで、スイス・ジュネーブで開催された「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」を現地取材。4月の新作見本市に引き続き、この晩夏のイベントの様子を、悲喜交々(“悲しみ”多め)とともに日記としてお届けする。

サファリスタイルで身をまとったスタッフと一緒に記念撮影

ブライトリング改めHouse of Brandsの下、復活を果たしたギャレ。復活第一弾となる新作発表会の後、ジュネーブのブライトリングブティックで、特設イベント会場が設けられていた。ギャレの「ワンダーラスト」──冒険心や探究心を追求するコンセプトを反映した、サファリスタイルで身をまとったスタッフと一緒に記念撮影。写真は通訳の坂田由鯉子氏が撮ってくれたもの。

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鶴岡智恵子(クロノス日本版):写真・文
Photographs & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2026年9月11日公開記事]


ギャレ→ブルガリ→またまたL’Epée 1839に癒され

 ジュネーブ・ウォッチ・デイズ(以下GWD)2日目。今朝も3時間睡眠のままベッドを抜け出し、PC作業をし、朝飯を食い、アンヌマスの駅からSBBでジュネーブ市内まで向かう。2日目にしてすでに体が重たい。年齢のせいかもしれないという考えが頭をよぎるが、「いや、私は永遠の28歳……」と思い直す。

 重い体を引きずって、フォーシーズンズホテルに到着。通訳の坂田由鯉子氏と落ち合う。坂田氏には、2024年のGWD取材にも同行してもらった。長らく時計業界で通訳として活躍された女性で、製品や技術への造詣が深く、今回も同行してもらえたのは大変に心強かった(ちょっとスパルタだけど)。

 さておき、最初の訪問先はGallet(ギャレ)だ。ギャレは1862年に誕生した時計ブランドで、しばらく休眠していたものの、House of Brandsの下、ブライトリングの姉妹ブランドとしてリスタート。復活の狼煙として、GWDで非常に多彩な新作時計をリリースした。

House of BrandsのCEOを務めるジョージ・カーン

House of BrandsのCEOを務めるジョージ・カーンが登壇。前夜のマイルス・デイヴィス生誕100周年記念パーティーで夜遅くまで飲んでいたであろうに、タフである。

 ギャレのブランドコンセプトは、「Wanderlust(ワンダーラスト)」である。冒険心や旅への憧れをテーマに、現代の冒険家やアウトドア志向のユーザーをターゲットとしたツール感のある、同時にギャレの歴史を感じられる新作時計を打ち出した。そんな新作時計の数々に対して各国のメディアやリテーラーが興味津々であることは、プレゼンテーション後の実機のタッチ&フィールにおける熱気で、非常によく察せられた。


新作「フライング オフィサー オートマチック 40」。なかなか良いではないですか! 文字盤の発色は良好で、ベゼルのクリック感も良い。針止めされていたため、リュウズは操作できず。なお、ギャレの製品はブライトリングの技術や品質基準の下で製造され、アフターサービス体制も共有されるのだという。ユーザーにとって安心感はかなり大きいであろう。


「マルチクロン スポーツクロノグラフ 41」。ブルー、オレンジ、ブラック、ホワイトの4色の組み合わせが印象的だ。


同じくマルチクロン スポーツクロノグラフ 41の“逆パンダダイアル”のモデル。こちらは針止めされていなかったのでリュウズを操作した。操作のしにくさは感じず、ツールウォッチを作り慣れているブライトリングらしさを感じた。


筆者のイチオシはこれ! 「ギャレ クラシックス:トリビュート トゥ マルチクロン ヨッティング」だ。1960年代に開発されたクロノグラフ、「マルチクロン ヨッティング ビッグアイ クロノグラフ」をモチーフとした1本である。


「マルチクロン パイロット クロノグラフ 42」。ギャレは本当に多彩な新作モデルがリリースされ、コレクションだけで7つにも及ぶ。さらにそれぞれにストラップや文字盤カラーのバリエーションが設けられており、復活してすぐ存在感を大いに示していると言える。

 いずれの製品も外装クォリティが極めて高く、また、セリタ製ムーブメントが搭載されているがゆえに価格が抑えられている点が大きな魅力である。円安、スイスフラン高はあるものの、3針モデルは40万円前後〜、クロノグラフモデルは60万円前後〜と、近年、高級時計の価格がどんどん値上がりする中でエアポケットとなっていた「手の届きやすい価格帯」をカバーしてくれているのは、一時計好きとして素直にうれしい。


冒頭に掲載した写真のキャプションでも記したように、ジュネーブのブライトリングブティックの前ではギャレの特設イベント会場が用意されていた。ドリンクを配っていたので、レモネードをいただく。

 その後、ブルガリの取材へ! 場所はマンダリンオリエンタルだ。

 ブルガリはGWDを立ち上げたブランドのひとつということもあり、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(以下W&W G)ですでに豊作であるにもかかわらず、例年GWDでも時計愛好家からの耳目を集める新作時計を発表している。

 そんなブルガリのGWD発表モデルの中でも、ひと際目立つのがこちらの新作ではないだろうか。そう、独立時計師であるヴィアネイ・ハルターとのコラボレーションモデルである。そのベースとなったのは「オクト フィニッシモ」だ。

「オクト フィニッシモ ヴィアネイ・ハルター 限定モデル」。チタン製のケース、ブレスレットを備えたモデルと、18Kピンクゴールド製ケース、レザーストラップを備えたモデルの2型が発表された。

 この取材では、ハルター本人とブルガリ ウォッチ プロダクト クリエイション エグゼクティブ ディレクターであるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニをインタビューした。この話が非常に興味深く、webChronosでしっかり記事にするので、お待ちあれ!

 それにしても、薄型チタン製ケースで、よくもここまで複雑な造形を与えられたなぁと驚き。2時位置の時刻表示のほか、4時位置にデイ&ナイトインジケーター、8時位置に第2時間帯、そして10時から12時位置にかけての円弧状の小窓の日付表示を備えながらも、ケース厚は9.7mmに抑えられているのだ。ハルターのアイデンティティーも、オクト フィニッシモのキャラクターも巧みに融合された快作であると言える。


もちろん3針表示のオクト フィニッシモと比較すれば厚みはあるが、十分薄型。チタンであるがゆえに、その軽量さもポイントのひとつだ。

 同じマンダリンオリエンタルの会場では、ダニエル・ロート、ジェラルド・ジェンタ、そしてL’Epée 1839も出展していた。ダニエル・ロートとジェラルド・ジェンタは4日目にミシェル・ナバスへのインタビューとともに取材を予定していたので、待望のL’Epée 1839(以下レペ)へ。

 なぜ「待望」なのかと言うと、話は今年4月に開催されたW&W Gにさかのぼる。今年初めてW&W Gを取材した筆者は、そのあまりの過酷なスケジュールに、1日目にして早くも音を上げていた。そんな中、ふとレペのブースが目に止まる。入り口の目立つところに、金ピカの「THE GEKKO(ゲッコー)」が鎮座していたためだ。

 レペは高級クロックを手掛けるブランドで、このゲッコーのほか、手榴弾やドラゴン、スーパーカーなどといったさまざまなモチーフを採用したクロックをラインナップしていることが特徴だ。2023年に取材したシンガポールウォッチフェアでその存在を知ったが、ゲッコーとは初めまして。そのかわいらしくも手の掛かったことが分かる意匠に釘付けとなり、ブースに入って話を聞いたのだが、情けないことに英語が苦手であるがゆえに、すべてを理解することができなかったのだ。

 機会があったらもう一度突撃したい……! そう考えていたところ、GWDでもブースを見つけ、さらにゲッコーも目立つ場所に飾られていることに気付いて、迷わず取材を申し込んだ。ブースはそれなりに混み合っていたにもかかわらず、男性スタッフが実演を交えながら丁寧に解説してくれた。憧れるなぁ、めくるめくクロックの世界。


W&W Gでひと目ぼれした「THE GEKKO」。専用の器具で壁に取り付ければ、まるでヤモリが張り付いているかのよう!


ゲッコーよ、ターコイズブルー版もあったのか! 写真は胴体部分の時刻表示を説明してくれているところ。表示部分のリングが回転するようになっていて、任意の向きに修正することが可能だ。これで、自宅の壁のどこにでも貼り付けられるね←。ちなみにしっぽを左右に振ることで主ゼンマイを巻き上げる仕様で、これは「トカゲのしっぽ切り」から着想を得てのこと。


レペがGWDで発表した、サッカーボールクロック。原寸大のサイズとなっている。写真は専用のカギを使って主ゼンマイを巻いているところだ。


なんですかこのかわいらしいクロックは!!! 巨大サイズからミニサイズまでのクロックが並べられており、腕時計とはまた違った深淵なる世界であることを実感した。

街歩きも楽しいジュネーブ

 レペを後にした頃には、もう13時過ぎ。クロノス編集部はみんな大好き「Yukiguni」でラーメンをすすり、次の取材まで少し時間があったので、市内を散策する。


噂には聞いていた「Yukiguni」のラーメン! 筆者は初。日本で食べるものと遜色がないほどおいしかった。なお価格(円安ゥ……


何度か日記に記したが、今回の出張中、ずっと快晴続きであった。日中は日差しが強くて暑いものの、日が沈むととたんに肌寒くなるのは要注意だ。


路地を進んでいたら、突然現れた時計店。坂田氏は昔からご存じだったとのこと。


雰囲気の良いクロックがショーウインドウ越しに。価格はいくらだったんだろう?


ショーウインドウにも腕時計のイラストが描かれている。


あまり見慣れない建物や景色が多く存在することもあり、ヨーロッパの街歩きは楽しい。

ユニバーサル・ジュネーブでグレゴリー・ブルタンにインタビュー

 ジュネーブの街を散策した後、向かう先はユニバーサル・ジュネーブのブースだ。

 ギャレ同様、House of Brandsの下で復活を果たしたユニバーサル・ジュネーブ。復活後、すでに新作時計がひと通りリリースされており、GWDで特別に発表されたモデルはなかったものの、同ブランドが標榜し続けてきた「腕時計の仕立て職人」をイメージした内装や展示品とともに、新作およびユニバーサル・ジュネーブのアーカイブを観賞できる空間が広がっていた。


ユニバーサル・ジュネーブのアーカイブ。左が「ポールルーター」、右が「コンパックス」。

ユニバーサル・ジュネーブがアーカイブを復刻させる際に書き起こしたデザイン画。


同じくアーカイブ。左が今回の取材でメインとなった「カブリオレ」。右はモデル名を失念。聞いておきます。


ユニバーサル・ジュネーブのかつての広告や、仕立て職人であることを想起させるイラストも飾られていた。

 さて、ユニバーサル・ジュネーブに来た最大の目的は、マネージングディレクターであるグレゴリー・ブルタンへのインタビューだ。ブランド再始動後、往年の名作を復活させることでユニバーサル・ジュネーブを牽引してきた彼に、「カブリオレ」を中心としたコレクションの詳細、そして今後のブランド展開を聞いた。このインタビューも、早く原稿を書きます……(震え声)。

初見のカブリオレ! 実は以前、ブルタンがユニバーサル・ジュネーブを持参して、クロノス編集部に遊びに来たことがある。その際、ポールルーターやコンパックス、そしてカブリオレのプロトタイプを見ており、再びジュネーブで実機を見ることがかなった。

カブリオレの精度の良さを感じさせるケース構造に注目。原稿でも、ここを掘り下げたい(早く書かなきゃ)。

「ポールルーター」のSSモデル。23歳だった頃のジェラルド・ジェンタが手掛けたデザインを踏襲しつつ、新開発ムーブメントCal.UG-110を搭載する。外装の仕上げや文字盤の発色は、現代的な高級時計として、磨きがかけられている。

ブレスレットの作りも高品質。ユニバーサル・ジュネーブはHous of Brandsの中でもハイクラスのポジショニングとなっているため、外装、ムーブメントにいっそう手が掛けられることとなり、消費者もその点を見ていくことになるだろう。

「コンパックス」の18KRGケースモデル。ミッドナイトブルーのラッカー文字盤に色調を合わせたセラミックス製ベゼルが組み合わされている。ムーブメントも最新のCal.UG-200が搭載されている。

ゼニスではロマン・マリエッタにインタビュー

 ユニバーサル・ジュネーブの後はゼニスに向かう。

 ゼニスはGWDで、「クロノマスター ソロ スポーツ」をリリースした。従来の「クロノマスター」同様にエル・プリメロを搭載したモデルだが、クロノグラフではなく、時・分・秒の3針表示となるCal.3620CSを搭載している。これまで「デファイ」には採用されてきたムーブメントであるものの、クロノマスターでは初。また、エル・プリメロの“高振動”をイメージしたモチーフがあしらわれたセラミックス製文字盤や同じくセラミックス製の逆回転防止ベゼルといった、クロノマスターにとって新鮮な意匠があしらわれたことにも注目したい。

ゼニス クロノマスター ソロ スポーツ

Photograph by Senta(SIGNO)
ゼニスの新コレクション「クロノマスター ソロ スポーツ」は、小誌編集部がお世話になっているフォトグラファーの千太氏に撮影してもらっていた。現地で上手に撮れなかったので、千太氏のかっこいい写真を載せておく。
引用:https://www.webchronos.net/features/169973/

 新しいクロノマスター ソロ スポーツには、3型のデイト表示付きモデルのほか、ノンデイトモデルも1型ラインナップされている。このノンデイト仕様は、自身も時計愛好家であるマリエッタが「時計“ギーク”」のために、あえて加えたものだと聞いた。そんなマリエッタに、クロノマスター ソロ スポーツはもちろん、近年のゼニスのブランド戦略や製品展開について取材。早く原稿書きます(n回目)。

クロノマスター ソロ スポーツは、ゼニスの複数のアーカイブから要素が抽出されたうえで再構築されたものだという。そんなアーカイブピースの数々も展示されていた。

「エリート」もまた、ゼニスの基幹ムーブメントとしてさまざまなモデルに搭載されてきた。エリートを載せたアーカイブも展示されていたので堪能。

オートマタの旅!? ジャケ・ドローと驚きの招き猫時計を見る

 ゼニスの取材を終えたら本日のアポイントメントは完了。しかし、せっかくだからと街歩き&坂田氏の紹介で、「面白い試みをしている時計」を見にいくことに。

 まずは街歩きの最中、ブティックでイベントを開催していたジャケ・ドローに飛び込み。

 ジャケ・ドローは現在、基本的にユニークピースの生産をメインとしており、日本にもブティックはなくなった。そんなユニークピースが並べられている、貴重なイベント。「アポイントはないのだけれど……」と入っていくと、「どうぞ見ていって!」と快諾してもらえたので取材。しかも、丁寧にひとつひとつのタイムピースを解説し、中にはオートマタを動かして見せてくれたモデルもあったのだ。

2025年、干支で巳年を迎えたこの年、蛇をオマージュして製造された1本。文字盤に鎮座する蛇はホワイトゴールド製で、色付けはエナメル。この丸みのある、しかもうねったモチーフに手作業で釉薬を施し、焼成する作業には高度な技術力が求められる。

「ドラゴン・オートマトン」。4時位置のプッシャーを押すと、ドラゴンの舌やうろこ、尻尾が動き出す。

 その後、例の「面白い試み」をしている時計の作り手へ。

 ブースに入ると、巨大な招き猫が目に入る! 瞳が時刻表示になっており、さらに首を振りながら手で「おいでおいで」の仕草をするギミックを持つオートマタであった。

 制作を手掛けるのは、文字盤のサプライヤー会社でCEOを務めるPhilippe Holzer。まだ完成は見ていないが、文字盤製造のノウハウを有しているだけあり、しっかり作られている。特に招き猫を彩るゴールドカラーの三角形の板は均一にポリッシュがかけられており、かつ、中央の粗めの梨地も均一だ。こちらも早く原稿を書きます!

ブースに入って、すぐに目に飛び込んできたゴールドの招き猫。イロモノと思いきや、かなり真面目に作られていると思わされたのが、外装に貼り付けられたゴールドカラーの装飾。仕上げは均一で、招き猫の腕や胴体といった湾曲した部分にも隙間なく敷き詰められている。

接写すると、ゴールドの板張りの均一さが分かる。なお、この三角の装飾はメテオライトなどといった鉱物での制作も視野に入れられている。さすが文字盤のサプライヤーである。

裏側から内部機構を見せてもらった。まだ招き猫のオートマタ部分しか香箱はセットされていないが、時刻表示、足元のテンプのための香箱も製造される予定とのこと。

 思いもかけず、招き猫でさまざまな話を聞くことができた。18時過ぎにブースを出て、今度こそ本日の取材は終了! 会食があったため、故・松崎壮一郎からはジュネーブ出張時の使用禁止令が出ていたBrasserie Lipp Genève(リップ)へ。

リップの屋外席。日が沈んでくると風が涼しくなり、本当にジュネーブにとって良い気候の季節なのだと改めて思った。

 なぜ禁止令が出ていたかというと「高いから」とのことだが、為替の影響もあり、スイスのレストランはどこも高かった……。リップでは楽しい会話とおいしいお酒、お料理を楽しみ、ほろ酔いになりながら宿へ帰り、もちろん仕事をしてから気絶するように眠りにつく。

「【ジュネーブ日記夏】3日目」へ続く!


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