ブライトリング「アベンジャー B01 クロノグラフ 44」を実機レビュー! リニューアルを遂げた高性能パイロットウォッチ

FEATUREインプレッション
2023.12.16

2023年11月に登場した、ブライトリング「アベンジャー B01 クロノグラフ 44」を実機レビューする。カラーダイアルとマニュファクチュールムーブメントCal.01を搭載した本作は、同社の伝統を受け継ぐモダン・パイロットウォッチだ。

野島 翼:文・写真
Text and Photographs by Tsubasa Nojima
2023年12月16日掲載記事


リニューアルを遂げたアベンジャー。その実力やいかに?

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

 2023年11月1日、ブライトリングの「アベンジャー」コレクションがリニューアルされた。新生アベンジャーは、前作から印象を大きく変えるサテン仕上げを基調としたケースを与えられ、初代から続くウィングタイプのロゴは、クラシックなBタイプへと変更された。クロノグラフやGMT、3針モデルまで、一通りのモデルが切り替わり、コレクション全体は完全に刷新されたと言えよう。

 同社はジョージ・カーンがCEOに就任した2017年以降、各コレクションの再編とモデルチェンジを推進してきた。フラッグシップである「クロノマット」は、屈強なパイロットウォッチからラグジュアリースポーツウォッチとしての位置づけとなり、「スーパーオーシャン」は、かつて同社が手掛けていたクロノグラフ付きダイバーズウォッチ、「スローモーション」の意匠を受け継いだ。「ナビタイマー」には3針モデルが登場し、クロノグラフモデルにはAOPAのロゴを復活させた。その他、新たなコレクションとして、過去の名作にインスパイアされた「プレミエ」や「クラシック アヴィ」、「トップタイム」を追加した。それまでタフなスポーツウォッチに偏っていたラインナップを見直し、幅広いジャンルで認知されるラグジュアリーブランドへ脱皮したといった感じだろうか。

 あくまでも個人的な印象を言えば、それまでのブライトリングは、まさに男のための道具であった。一部レディースモデルもあったが、あくまで主力はメンズであったと言って差し支えないだろう。ポリッシュ仕上げがギラついた厚く大きい頑強なケースは、汗のにおいが沸き立つガレージにこそ相応しく、幼少期に胸を躍らせた変形ロボットや戦車やらバイクやら、あの延長線上に存在していた。2017年以降の新生ブライトリングは、それらに比べて一見マイルドに、そしてエレガントになった。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

「アベンジャー B01 クロノグラフ 44」
2023年11月にリニューアルしたばかりのブライトリング「アベンジャー」。今回は、そのクロノグラフモデルを実機レビューする。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径44mm、厚さ15.2mm)。300m防水。103万9500円(税込み)。

 激動の中、長らく従来の姿をとどめていたのがアベンジャーだ。2019年、機能面とデザイン面ともに類似しているとして、「コルト」との統合を伴うコレクションの刷新があったが、基本的なデザインコードは2001年に登場した初代から不変であった。

 今回のリニューアルによって、その姿を変えたアベンジャー。本作はブライトリングの中で今後、どのような形で存在感を示していくのか、実機を基に考えていきたい。インプレッションの対象は、グリーンダイアルのクロノグラフモデルだ。


2001年に誕生した、高性能なモダン・パイロットウォッチ

 インプレッションに入る前に、簡単にアベンジャーについて触れておきたい。アベンジャーは、2001年に「クロノアベンジャー」として登場したパイロットウォッチだ。当時のブライトリングのコレクションは、回転計算尺を有したナビタイマーコレクション、クロノマットなどの屈強なパイロットウォッチがラインナップする「ウィンドライダー」、空から海までの広範囲に対応する多目的スポーツウォッチ「エアロマリーン」、そしてプロフェッショナル向けの機能を備えた「プロフェッショナル」で構成されていた。クロノアベンジャーは、このうちエアロマリーンコレクションに属する。

 デザインを担当したのは、エベルやタグ・ホイヤーなどで実績を積み上げてきたフリーデザイナー、エディ・ショッフェル。氏は1991年、クロノマット用に斜めのコマが特徴のパイロットブレスレットをデザインした後、ブライトリングとの関係を深めていく。

そんなショッフェル氏が2001年に生み出したクロノアベンジャーは、ベゼルと一体化したライダータブ、操作性を強化した大型のリュウズとプッシュボタン、軽く耐食性に優れるチタン製の外装と、300m防水を備えていた。一見してクロノマットのようなデザインを持ちつつも、よりモダンなディティールを与えられた高性能なパイロットウォッチであったのだ。その後、他のコレクションがよりマッシブに進化を遂げていったことを考えると、クロノアベンジャーがブライトリング全体に与えていった影響は、意外にも大きかったのではないだろうか。


ノスタルジックなカラーダイアル

 それでは新作アベンジャー B01 クロノグラフ 44をレビューしていく。

 まず目に飛び込んでくるのは、これまでのアベンジャーでは存在しなかった風合いのグリーンカラーダイアルだ。グリーンは、どうしてもミリタリー調になってしまいがちだが、本作では淡い色合いとすることで、ファッショナブルにまとめている。印象としては、1970年代の家電や自動車に見られるようなノスタルジックなニュアンスだろうか。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

レトロな印象のグリーンダイアルは、ブラックカラーのフランジとインダイアルによって適度に引き締まったデザインを持つ。ロゴはBタイプに切り替わっている。

 インダイアルのレイアウトは横3つ目である。3時位置が30分積算計、6時位置が12時間積算計、9時位置がスモールセコンドとして機能する。日付表示は6時位置のインダイアルに完全に溶け込み、パッと見ただけではその存在に気付かないほど。日付窓によってインダイアルの目盛りが省略されていることもない。

 12時位置には、いわゆる“Bロゴ”が配されている。ウィングロゴに比べて落ち着いたデザインだが、ブラックのインダイアルが存在感を持っていることを考えると、程よい余白を生み出せるBロゴは、本作にマッチしていると感じる。

 ミニッツマーカーがプリントされたフランジはブラックカラーを採用し、ダイアルを引き締めている。針とインデックスはサンドブラスト仕上げを主体としており、針の両サイドにのみポリッシュを与えることで、その輪郭をはっきりと浮かび上がらせている。スーパールミノバは、12個のインデックス全てに塗布されており、12時位置のインデックスは他と異なる三角形を採用しているため、夜間であってもダイアルの向きを瞬時に判別して時刻を知ることが可能だ。


サテン基調の落ち着いたケースデザイン

 逆回転防止ベゼルは、ステンレススティール一体の重厚感あるデザイン。目盛りは直接ベゼルに彫り込まれ、15分おきにライダータブが配されている。目盛りにはインクが流し込まれていないため、シンプルで煩雑な印象はない。上面をサテン仕上げ、サイドとライダータブの周囲をポリッシュ仕上げとしている。サイドには8個のネジが配されているが、これらの角は丸められていないため、指でなぞった際に少し引っ掛かる。手首に着用している分には気にならないが、手に持ってさまざまな角度から鑑賞しようとすると、指を伝わる感触に少し違和感がある。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

逆回転防止ベゼルには、4つのライダータブが配されている。ライダータブは、ベゼルを回転させる際の指がかりになるとともに、風防を保護する役割も持つ。ケース全体はサテン仕上げを基調とする。

 ケースも基本的にはサテン仕上げに統一されているが、ケースサイド上面のエッジをなぞるようにサンドブラスト仕上げが与えられ、立体感を創出している。

 ケースサイズは、直径44mm、縦53mm、厚さ15.2mmだ。直径はそれなりに大きいが、縦の長さが抑えられていることと、自動巻きクロノグラフとしては若干だが薄いケースであることで、凝縮感のある印象を持つ。

 プッシュボタンは角形を採用する。前作とは異なりボタンの背が低いため、過度に出っ張った印象はない。着用時に何かに引っ掛けたり、不意にぶつけてしまったりするようなことは起きにくいだろう。大型のリュウズはローレット加工が施され、操作性を高めている。

 ねじ込み式の裏蓋は、シースルー仕様。内部に格納されたCal.01を存分に堪能することができる。際立った仕上げが施されているわけではないが、肉抜きされたローターのお陰で、コラムホイールやレバーの動きをしっかりと観察できる。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

ケースバックからは、Cal.01を鑑賞することができる。プッシュボタンの操作に合わせて、レバーやコラムホイールが動く様子を楽しむことが可能だ。

 ストラップは、レザーをベースとして表面にファブリック素材を組み合わせている。ダイアルのカラーに相応しいカジュアルなテイストを出しつつ、肌ざわりを良くするためだろう。三つ折れ式のフォールディングバックルは、プッシュボタンによって滑らかに開閉することができる。ツク棒を備えており、装着した状態では尾錠のようなクラシカルな見た目になることもポイントだ。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

手首回りの長さは、フォールディングバックルのツク棒とストラップの穴によって調整することができる。そのため閉じた状態では、ピンバックルのようなクラシカルな佇まいを見せる。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

ファブリック調のカーフストラップには、三つ折れ式のフォールディングバックルが装着されている。プッシュボタンによって、滑らかに開閉することができる。


意外にも常用できる装着感

 実際に手首に装着してみる。直径44mmのケースはやはり大きく、ボリューム感がある。ベゼルがステンレススティールなので、まさに鉄の塊といった感じだ。ライダータブやプッシュボタンなど、角張ったディティールが多いためか、メカメカしさが強調されている。ポリッシュがあまり多用されていないことと、柔らかな色味のダイアルによって、ギラギラ感はないが、確実に存在感のある時計だ。しかし、その見た目に反して腕乗りは悪くない。ラグが湾曲し、かつ裏蓋の張り出しが抑えられており、手首への密着感が高いためだろう。腕を振ってもゴロゴロと動くような感触はない。縦の長さ53mm、厚さ15.2mmは、ユーザーの手首を選ぶサイズであることは間違いない。ただ、手首回り16.5cmの筆者の感覚としては、日常使いできる許容範囲に収まっている。

アベンジャー B01 クロノグラフ 44

決して薄型ではないが、見た目にはすっきりとしたデザインのケースサイド。プッシュボタンは角形を採用している。大型のリュウズとともに、操作性に優れている。

 視認性は文句なしに高い。正直、最初に実物を見たときは、場所によって視認性が悪くなるのではないかと考えていた。サンドブラストによって白っぽくなったインデックス、そして白色のスーパールミノバは、明るめのグリーンダイアルとのコントラストに乏しいと思ったためだ。しかし実際には、サンドブラストによってダイアルのグリーンとスーパールミノバのホワイトの境目がはっきりと際立ち、さまざまな場面でしっかりと時刻を読み取ることができた。もちろん暗所でも問題はない。全てのインデックスと時分針にスーパールミノバが塗布されていることに加え、時分針のサイドに施されたポリッシュは、わずかな光を捉えて存在を主張する。

 回転ベゼルは非常に軽やかだ。本作のベゼルは、一般的な回転ベゼルに見られるようなサイドのギザギザがない。代わりにライダータブに指を掛けて回す。当然ながらライダータブのエッジは立っているため、回転させるために強い力を要する場合は、指を多少痛めてしまう。筆者は前作を触ったことがあるが、回転ベゼルが重く、1周回すだけで指が疲れてしまった経験がある。細かな部分だが、確実なアップデートだ。軽いとはいえ、着用している間に勝手にずれてしまうというようなことはなかった。1回転120クリックであり、1クリックごとに明確な手応えがあるため、ぴったりと設定することにも苦労しない。

 クロノグラフは、2時位置のプッシュボタンでスタートとストップ、4時位置でリセットを行う。一般的なものと同じだ。スタートとストップは、少しの遊びがあった後、一気に重くなる。そのままグググと力を加え続けると、カチッという音とともに、クロノグラフ秒針が発停する。ボタンの重さは、恐らく誤作動を防止するためだろう。厚みのあるケースのため、ボタンを押す際に力を加えやすく、押しにくさを感じることはない。スタートとストップを繰り返しても針飛びは認められない。この辺りは、さすがクロノグラフを作り慣れたブライトリングだ。リセットは、スタートに比べて少し軽めの感触を持つ。

 リュウズはねじ込み式だ。それ自体が大径であることに加え、ローレット加工が施されているため、リュウズガードに囲まれていても不便なくねじ込みを解除することができる。ねじ込みを解除したポジションで主ゼンマイの巻上げ、1段引きで日付のクイックチェンジ、2段引きで時刻調整ができる。全ての操作において、粘りのあるようなしっかりとした指応えがある。防水性を確保するためのパッキンが影響しているのだろうか。時刻調整でのふらつきがないことはうれしいが、手巻きをするには少し疲れる。また、搭載するCal.01は日付変更の禁止時間帯がないため、常時クイックチェンジができる。


より親しみやすいコレクションへと進化

 リニューアルされたアベンジャーは、前作から大きく印象を変え、武骨さを抑えマイルドに仕立て直されていた。そのことを強く示すのが、豊富にラインナップしたカラーダイアルであり、サテン仕上げを基調とした落ち着きのあるケースだ。だが、ハイパフォーマンスなパイロットウォッチとしての本質はなんら変わっていない。防水性能は依然300mを備え、高い視認性と屈強なケース、そしてアイコニックなライダータブを配したベゼルは、初代から変わらぬ機能性を発揮している。

 アベンジャーはこれまで、ブライトリングの中では比較的地味な存在であったように思う。エントリーモデルのコルトと、フラッグシップのクロノマットの間に挟まれ、どっちつかずの印象を持っていた方もいたはずだ。コルトという名前が消え、クロノマットがよりラグジュアリーなテイストを強めた今、アベンジャーは、ブライトリングの伝統を継ぐ大きな柱としての第一歩を踏み出した。


Contact info: ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


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