チューダー「ロイヤル」のうち、直径28mmの小ぶりなケースを持ったモデルを着用レビューする。「ブラックベイ 58」や「ペラゴス ウルトラ」など、話題性の高いモデルが多数展開されるチューダーの中で、ロイヤルは目立たない存在かと思いきや、イエローゴールドとチョコレートブラウンのカラーリングの組み合わせがもたらす華やかなデザインによって、本作は王道のかわいさを味わえるモデルであった。
Photographs & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2025年5月27日公開記事]
チューダー「ロイヤル」のレディースモデルを着用レビュー
スポーティーなメンズモデルの印象が強いチューダー。実際、「ブラックベイ」と「ペラゴス」が知名度、人気ともに高く、チューダーと言えば名前の挙がるコレクションだろう。一方、2020年から展開される「ロイヤル」は、切り込みが装飾されたベゼルや薄く仕立てられたケース、ローマ数字インデックスをあしらった文字盤などによって、ドレッシーなテイストの強いシリーズとなっている。前述した人気コレクションよりかは知名度が低いかもしれないが、今回このロイヤルのうち、28mm径のケースを持ったチョコレートブラウン文字盤のモデルを着用レビューしたことで、「定番の良さ」を多く抱える、万人にお勧めしやすいチューダーウォッチであることを知った。

自動巻き(Cal.T201)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径28mm、厚さ9.8mm)。100m防水。54万1200円(税込み)。
着用することでジワジワ伝わってくる、本作のたくさんの見どころを、レビューを通してお届けしたい。
「ロイヤル」を、なぜ購入しなかったんだっけと思い返す
ロイヤルがリリースされたのは、2020年のことだ。当時、新型コロナウイルス禍の真っ只中で、春先の時計業界の新作見本市は中止となり、多くの時計ブランドはその年の新作発表を見送ったり、オンライン上で独自発表したりしていた。チューダーはロレックスとともに、9月にその年の新作発表を行った。その新作の顔触れの中にいたのが、ロイヤルだった。
その頃から今に至るまで。かつてチューダーが日本で「チュードル」と呼ばれていた頃に製造された「オイスター プリンス サブマリーナー」を愛用しており、現行モデルでも何か購入しようかなと思っていたタイミングだったので、ロイヤルの28mm径モデルを探すことにした(ちなみに愛用しているのがいわゆる“ミニサブ”で、直径33mmのモデル)。しかしこの2020年というのは、ロレックスの二次流通市場での価格が跳ね上がったせいで、その兄弟ブランドであるチューダーにも影響が及び、現行モデルの品薄が続いていた。新型コロナウイルス禍で海外との製品の行き来がスムーズではなかったという事情もあったかもしれない。いずれにせよチューダーの新作モデルはなかなかブティックでも見ることがかなわず、結局「ブラックベイ 32」を購入した。
ロイヤルの入荷を待って、実機を見てからでも良かったのだが、そうしなかったのは、自分の中にも「現代チューダーと言えば『ブラックベイ』でしょ!」といったイメージがあったのかもしれない。その後、店頭で並べられているモデルを眺めることはあっても、実機のタッチ&フィールはしておらず(まだクロノスにも入社していなかったし)、なんとなく今日まで見送っていた。
しかし今回、2020年当時に自分自身も購入を検討していた28mm径のロイヤルを実機レビューできる機会を得て、実際に1週間程度着用したことで、改めて購買意欲を刺激されることになったのだった。その理由はふたつあり、ひとつが着用した時に感じる「カワイイ」意匠が思いの外良かったということ、もうひとつがドレッシーでありながらもチューダーらしい優れた実用性に、毎日助けられたということだ。
イエローゴールド×チョコレートブラウンのカラーリングがカワイイ!

前述の通り、チューダーのロイヤルには多彩なバリエーションが展開されている。サイズだけでも直径41mm、38mm、34mm、28mmの4種類があり(41mm径のみ曜日表示もあるデイデイト仕様で、そのほかはデイト表示のモデル)、素材はステンレススティール製をベースに、今回着用したモデルのように、ベゼルとねじ込み式リュウズに18Kイエローゴールドを、ブレスレットにイエローゴールドキャップをあしらった“コンビ”も展開されている。
この“コンビ”の華やかな意匠と、チョコレートブラウン文字盤の組み合わせがマッチしており、王道のカワイイを楽しめると感じさせられた。
なお、チューダーにとってロイヤルは「スポーツシックな腕時計」というポジショニングとなっており、ブラックベイなどと同様、スポーティーテイストも備えた腕時計となっている。しかし、このふたつのカラーリング、イエローゴールドカラーのローマ数字インデックスを備えた文字盤、そして薄型ケースといった要素によって、私にとって本作は、エレガントでドレッシーな、ちょっと特別な日の装いに身に着けたいような、そんな腕時計というイメージを持ち、そのイメージに大いに引かれることになった。
近年、こういった薄型でドレッシーな腕時計への需要が高まっている。ロイヤルをチェックしてこなかったチューダーファンは、男性であっても女性であっても、今こそこのコレクションに目を向けるべきだということを、声を大にして言いたくなる。


実用性にも優れる1本
ドレッシーなデザインとはいえ、スポーツウォッチらしい実用的なスペックを備えている点も、本作の美点だ。
防水性能は100m。ブラックベイやペラゴスに比べると高い性能ではないものの、普段使いで100mあれば十分だろう。水仕事の多いユーザーにもお勧めできるポイントのひとつとなっている。
搭載されるムーブメントは自動巻のCal.T201。汎用機で、パワーリザーブ約38時間と、近年のケニッシ製ムーブメントを搭載させているモデルと比べると短いものの、価格を考えれば問題ないと個人的には思う。巻き上げ効率も良く、精度はきちんと計測していないものの大きなズレもなかったことから、主ゼンマイを巻き上げたり、時刻修正したりする手間は少なかった。
なお、本作は18Kイエローゴールドをベゼルとリュウズに使ったSS製モデルで税込み54万1200円と、最近のスイス製時計の高額化の中において、お手頃価格。むしろ自社製ムーブメントになって、価格が高くなってしまうというのは悲しいなぁ……

時刻修正の必要は少ないと前述したが、操作感などを確かめるために、時刻やデイト修正を行ってみた。リュウズは小さいものの操作性が良く、リュウズに入れられた装飾によって指の腹が痛くなるということもない。
ただ、リュウズ一段引きで日付の早送り、二段引きで時分針の操作というスタンダードな操作性であったものの、二段引きに力が結構必要で(汎用ムーブメントだから仕方ない面はある)、二段引いたと思ったらできていなかったということが何度かあった。カレンダー操作禁止時間帯に誤って一段引きにして操作してしまうというミスには気を付けたい。
欲しいね! チューダーウォッチ
チューダー「ロイヤル」の28mm径モデルを着用レビューした。
チューダーは2018年に日本へ出店してから、この国の市場で大きな成功を収めてきた。メンズの印象が強いとはいえ、レディースウォッチも優れた品質とデザイン性、そして実用性を備えており、改めてチューダーの腕前の高さを知る思いだった。
かつて購入を検討していたこのコレクションのうち、カワイイ意匠を備えた本作によって、また購買欲求が高まってしまったのは言うまでもない。頑張ってお金稼ぎます。