カシオ オシアナスの新作「OCW-S7000AP-1AJF」を実機レビューする。本作は「Indigo Ocean-阿波藍」をテーマとした3種のうちのひとつであり、阿波藍の藍染めを取り入れたインダイアルや、サファイアクリスタル製のベゼルインサートを特徴としている。

「Indigo Ocean-阿波藍」をテーマとした3種の限定モデルのひとつ。インダイアルに藍染めを取り入れている。タフソーラー。フル充電時約19カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(直径42.8mm、厚さ9.5mm)。10気圧防水。世界限定1300本。26万4000円(税込み)。2026年5月発売予定。
Text & Photographs by Tsubasa Nojima
[2026年4月28日公開記事]
カシオ オシアナスに、「Indigo Ocean-阿波藍」をテーマとした新作3種が登場
G-SHOCKやPRO TREK、EDIFICEなどのスポーツウォッチや、カジュアルなカシオスタンダードのイメージが強いカシオ。そんな同社の中にも、ビジネスマンから厚い支持を得る高級腕時計ブランドがある。それがオシアナスだ。世界初のデュアルタイム搭載フルメタルクロノグラフ電波ソーラーウォッチとして2004年に誕生したオシアナスは、その優れた機能性と高級感によって注目を集め、以降進化を重ねながらさまざまなモデルを世に送り出してきた。
そして2026年。そのラインナップに「Indigo Ocean-阿波藍」をテーマとした3種の限定モデルが加わった。これらのモデルに共通するのは、江戸時代から続く技法を用いた徳島県産の天然藍「阿波藍」による藍染めを取り入れている点にある。日本の伝統的な染色技法である藍染めは、蓼藍(たであい)という植物の葉を発酵させた液を用いて衣服などを染め上げるものであり、その深い色合いは“ジャパンブルー”と呼ばれている。抗菌・消臭・防虫などの効果があるとされていることから、日本では古くから身の回りで使われており、庶民の生活にも密着してきた。
日常的に親しまれてきた伝統工芸を身に着けることのできる今回の新作は、海に着想を得た青の世界を持つオシアナスの新たな“オシアナスブルー”を切り拓く存在だ。今回は3種のうちのひとつ、「OCW-S7000AP-1AJF」のインプレッションをお届けする。
3つのインダイアルが示す、荘厳な海の神秘
縦三つ目のレイアウトを備えたダイアルは、それぞれのインダイアルに異なるブルーがあしらわれている。このブルーこそが、藍染めによって彩られたものであり、12時位置から9時位置、6時位置と、順に色味が濃くなるように阿波藍顔料を混ぜて調色されている。海とは、絶えず姿を変える自然そのもの。3色のインダイアルは、その海が緩やかに変化していく様子を表現している。インダイアルの素材はマザー・オブ・パールだ。素材自体が持つ複雑な模様や虹色の輝きが、海の持つ神秘性を思わせる。

ダイアル全体は、引き締まった印象のブラック系。ベースとなるプレートを着色し、さらにその上に波をイメージしたパターンをクリア印刷することで、奥行きを創出している。本作には光発電機能であるタフソーラーが搭載され、ダイアルを透過した光によって動力を賄うことが可能だ。光発電機能と高級感のあるダイアルを両立させることは容易ではないというのが長らくの常識であったが、本作ではその両立を見事に果たしている。
優れているのは審美性だけではない。実用面がしっかりと練られていることも、本作の魅力である。ペンシル型の時分針と立体的なインデックスには蓄光塗料が塗布され、昼夜を問わずはっきりと時刻を視認することができる。秒針がやや短い点は気になるものの、ホワイトで着色されているため、見やすさは十分だ。3時位置には日付表示窓が配され、6時位置のインダイアルによる曜日表示とともに、日常での使い勝手の良さを発揮する。本作にはフルオートカレンダーが搭載されているため、大小の月や閏年を自動的に判別して正しい情報を表示してくれる。フランジには都市コードが配され、ワールドタイム設定を簡単に行うことが可能だ。
サファイアクリスタルベゼル×チタンケースの爽やかな外装
外装のデザインは、上品さをたたえつつもスポーティーな印象。そう思わせるひとつの要素が、ブルーのサファイアクリスタル製ベゼルインサートだろう。リング状に成形したサファイアクリスタルにブルーグラデーション蒸着を施し、さらにタキメータースケールを加えることで、素材特有の輝きとクロノグラフらしいスポーティーさを共存させている。サファイアクリスタルはネイビーIP仕上げのチタン製ベゼルに取り付けられ、その外周に施された24面のカットがシャープさを感じさせる。

チタン製のミドルケースは、曲線と直線を織り交ぜた複雑なデザイン。エッジを利かせつつも、ラグの上面などに緩やかなカーブを設けることで、エレガントに仕上げている。仕上げはヘアラインが主体だが、一部の鏡面にはザラツ研磨が採用され、職人の手によって生み出された歪みのない鏡面を楽しむことができる。チタンカーバイト処理によって表面硬度を高め、傷をつきにくくしていることもポイント。長年にわたって美観を保ちやすいのは、実用時計として嬉しい要素である。
八角形のリュウズは、トップにオシアナスのブランドロゴを配している。控えめながらリュウズガードが備えられ、リュウズに直接ダメージが加わることを防ぎつつ、アクティブな印象を強めている。スクエア型のプッシュボタンは背が低く、手の甲への干渉や衣服への引っ掛かりが発生しにくいデザイン。背が低くとも幅は広いため、操作性は十分だ。

チタン製のブレスレットは、オシアナスでお馴染みのH型のコマと鏡面ライン入りの中ゴマを組み合わせた、矢羽根型のリンクによって構成されている。ケースとの連続性を感じさせるシャープな造形と、しなやかな動きが特徴だ。プッシュボタンによって開閉するバックルには、スライドアジャスト機構が搭載され、簡単に手首回りを微調整することができる。

各種機能も充実
オシアナスらしく、優れた機能性も魅力だ。タフソーラーや標準電波受信機能、フルオートカレンダー、10気圧防水など、特別な手間をかけることなく着用できる気軽さに加え、専用アプリを用いてスマートフォンと接続するモバイルリンク機能を使用することで、自動時刻調整やワールドタイム設定などの時計の各種設定、携帯電話探索、時計のステータス表示などを行うことができる。ストップウォッチ機能は、最大で24時間まで計測可能だ。
数々の電子機器を発明し、デジタルウォッチ市場にもいち早く参入したカシオの技術は、オシアナスにも受け継がれている。そのことを象徴するのが、「スマートアクセス」だ。これは針を複数のモーターで駆動させることでさまざまな機能表現を可能とする「マルチモーター」と、感覚的な操作性を実現する「電子式リューズスイッチ」によって構成される同社独自のシステムであり、一般的なアナログウォッチとは一風変わった滑らかな操作感が特徴だ。多彩な機能を搭載しながらも操作しやすく、さらにその機構を薄型のケースに収めることができているのは、これまで同社が培ってきたエレクトロニクス技術があってこそのものなのである。
長時間の着用にも耐えうるストレスフリーな装着感
実際に腕に装着すると、その快適さに驚かされる。厚さ9.5mmの薄型チタン製ケースは、軽量かつ低重心なため、長時間着用しても腕に負担を感じることがない。あまり調整幅はないが、バックルのスライドアジャスト機構によって、手首回りの変化に対応することも可能だ。

装着感もさることながら、3色に染め分けられたマザー・オブ・パール製インダイアルやブルーグラデーション蒸着のサファイアクリスタルベゼルも、本作の魅力である。光の当たり具合や環境の変化に合わせて、海のようにさまざまに表情を変える様子は、本作でこそ味わうことのできるものだ。特に晴天の下では、時刻を確認するつもりが透き通ったブルーに目を奪われてしまい、当初の目的を忘れてしまったということも一度や二度ではない。
その誘惑を振り切れるのであれば視認性は良好だ。蓄光塗料が塗布された時分針やインデックス、ホワイトの秒針は、昼夜を問わず一目で正確な時刻を教えてくれる。
最新技術と伝統工芸が融合した、欲張りな1本
今回インプレッションを行ったOCW-S7000AP-1AJFは、カシオの数ある腕時計の中でも、ハイエンドな高級機に位置付けられるモデルだ。かつての“電卓戦争”を勝ち抜いたカシオは、時間の流れを1秒の積み重ねによる足し算に見立て、腕時計市場へと参入した。そのパイオニア精神は、現在の高級機であっても変わらない。コンパクトなケースに、豊富な機能とスマートアクセスによる利便性を詰め込んだオシアナスは、カシオだからこそ生み出すことのできた、高級時計のひとつの姿だろう。
そんな最新技術の結晶に日本の伝統工芸である藍染めを融合させた本作は、電子的な機械に、人の手が脈々と紡いできた温もりを宿したひとつの作品である。本作は、伝統を重んじながらも前進を続けんとする人物の腕にこそふさわしい1本なのだ。



