レトロフューチャーな大人向けデジタルウォッチ「ティソ PRX デジタル」をインプレッション!

FEATUREインプレッション
2024.05.21

ティソの「ティソ PRX デジタル」の実機レビューを行う。本作は「ティソ PRX」譲りの優れた外装を持つデジタルウォッチだ。高い質感とデジタルウォッチならではの多機能性を手軽に楽しめる、稀有な存在である。

ティソ PRX デジタル

野島翼:文・写真
Text & Photographs Tsubasa Nojima
[2024年5月21日公開記事]


人気コレクション「ティソ PRX」に、ひっそりと追加されたデジタルモデル

 今回は、「ティソ PRX デジタル」のインプレッションを行う。「ティソ PRX」は、2021年に登場したティソの人気コレクションだ。当初はクォーツ3針モデルのみのラインナップだったが、機械式3針やクロノグラフ等、徐々にバリエーションを拡充してきた。そんな中、23年9月に新たに加わったのが、デジタルモデルである。

 本作は、PRXをベースに、1977年にティソより発売されたデジタルウォッチの要素をプラスしたモデルである。多彩なバリエーションを擁している点もPRXのアナログモデルと同様だ。ケースサイズは直径40mmと35mmの2種類、カラーバリエーションは、ステンレススティールケースにブラックダイアルまたはシルバーダイアルを組み合わせたものと、ゴールドPVDを施したステンレススティールケースにゴールドダイアルを組み合わせたものの3種類が存在し、ケースサイズとカラーを掛け合わせた合計6つのモデルが用意されている。今回のインプレッションの対象は、直径35mmのゴールドPVDケースのモデルだ。

ティソ PRXデジタル

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今回レビューする「ティソ PRX デジタル」。基本的なデザインはアナログモデルと変わらないが、液晶が搭載されたことによってレトロフューチャーな印象が強まった。クォーツ。SS+ゴールドPVDケース(直径35mm、厚さ10.9mm)。10気圧防水。6万6000円(税込み)。


PRXならではのエッジの効いた外装

 それでは外装から見ていこう。基本的なケースデザインは、アナログモデルと同じだ。ケースとブレスレットが一体化した、直線を多用したデザインによって、シャープなエッジが強調されている。アナログモデルとの違いは大きく3つ。ひとつ目はダイアル、ふたつ目はリュウズがなくプッシュボタンが配されていること、3つ目はケースバックがソリッドになっていることだ。これらの違いは、文章にすれば些細なことかもしれないが、見た目には大きく影響しており、ひと目見ただけで新鮮な感動を覚えた。

 それは恐らく、他社も含めた現行品として、類似の性質を持つ時計が少ないためだろう。デジタルウォッチは今も数多く販売されている。しかし、本作と同じレベルの仕上げが施されているものとなると、その対象は一気に狭まる。そのためか、本作にはデジタルウォッチが今よりも高級であった時代のデッドストックかのような新鮮味があるのだ。

 ケースからブレスレット、ダイアルまでフルゴールドカラーな本作。では派手なのかと言うと全くそんなことはない。その理由は、サテン仕上げをメインとしているためだろう。これによってギラギラとした輝きが抑えられ、落ち着いた雰囲気を出している。

 無垢材ではなく加工によるゴールドカラーの時計には、目につかない部分に地の色が出ているものがある。具体的にはケースバックやブレスレットの内側、バックル等だ。しかし本作では、それらはもちろんブレスレットのピンに至るまで全てがゴールドカラーに統一されている。これならば、腕から外してじっくりと眺めてもチグハグな見た目にモヤモヤすることもないだろう。

ティソ PRX デジタル

ケースバックやバックルまで、全てがゴールドカラーで統一されている。腕から外して眺めても興ざめすることがない。

 ダイアルは、ラウンド型のプレートの中央を長方形に切り抜き、そこから液晶がのぞくように構成されている。プレートはゴールドカラーだが、まるで鏡のように仕上げられており、時刻を見ようとすると自身の顔がはっきりと映りこむほど。仮にここがケースと同じようなサテン仕上げだったとしたら、もっとのっぺりとしたデザインになっていたことだろう。プレート自体に機能はないが、アクセントとしては大きな役割を果たしている。

 液晶の表示は非常に簡潔だ。3段構えで表示され、上段がモード、中央がモードに合わせた時刻等のメインの情報、下段にはカレンダーまたは時刻表示モードの際に曜日が表示される。

 ブレスレットは、アナログモデルと同じ仕様を持つ。インターチェンジャブルシステムが採用されており、工具を使うことなく別売りのレザーストラップに変更することが可能だ。すでに35mmケースのアナログモデルでベルトを買いそろえている方にとっては、それをそのまま活用できるというわけだ。


驚くほどに馴染むゴールドカラーウォッチ

 現行機としては小ぶりな直径35mmのケースは、約16.5cmの筆者の手首にも違和感なくマッチする。ブレスレット一体型ケースのためベルトの幅が広く、それによって過度に小ささを感じさせないことが要因だろう。一般的なラグを持つ時計では、同じケースサイズでもラグ幅が16mmを下回ると、だいぶ小さい印象を受ける。

 筆者は、自分にゴールドカラーの時計は似合わないと考えていた。これまでにも何度か身に着けたことがあったが、その度に“おじいちゃんの時計を借りてきた孫”のような、己の未熟さを浮き彫りにされて少し恥ずかしくなるようなミスマッチ感を覚えたものであった。

ティソ PRX デジタル

シャープなエッジが際立った外装は、PRXの魅力のひとつ。それはデジタルでも変わらない。サテン仕上げを基調としているため、ゴールドPVDでも落ち着いた感じがある。

 しかし、本作に限ってはそのような印象は受けなかった。華美さを抑えたサテン仕上げが光の反射を抑え、肌に調和しているように見えるからだろう。思えばこれまで着用してきたゴールドカラーの時計は、いずれもポリッシュされたケースのドレスウォッチで、ブラックのレザーストラップが装着されていた。これでは肌から浮いたように見えるのは当然だろう。

 それでは本作は地味なのかと言えば、そうではない。ベゼルやケースのエッジ、ブレスレットのコマとコマの間に施されたポリッシュが輪郭を浮かび上がらせ、確かな存在感と高級感を主張している。可動域の広いコマやサラリとした肌触りのソリッドバックは、装着感の向上にも寄与している。

 ダイアルの視認性も良好だ。太陽光の下でも、液晶に表示された内容をしっかりと読み取ることができる。10時位置のプッシュボタンを0.5秒以上押すことによってバックライト機能が起動するため、暗所でも問題なく使用可能だ。

ティソ PRX デジタル

両開き式のバックルは、閉じた状態では目立たなくなる仕様。解除する際には、プッシュボタンを押下する。


慣れれば便利なUI

 針や歯車などの物理的な制約の少ないデジタルウォッチは、複数の機能を安価に搭載できる点も魅力だ。本作では7つのモードが設定されており、3つのプッシュボタンとそれらを押す長さによって機能の設定と使用を行うことができる。モードは、カレンダー表示、時刻表示、第2時間帯表示、ラップ機能、スプリット機能、タイマー、アラームだ。

 多機能ゆえに操作は複雑だが、慣れてしまえば使い勝手は非常に良い。カレンダー表示のレイアウトには少し癖があるが、これも慣れの問題だろう。欲を言うならば、クロノグラフの起動中にボタンひとつで時刻を表示できたり、時刻表示モードで曜日だけではなく日付も常に表示されたりすると良い。本作の仕様では、時刻表示モードで時分秒と曜日が表示され、そのまま2時位置のプッシュボタンを1回押下することで、5秒間だけ西暦と日付、曜日が表示される。

 プッシュボタンを押下する度にピッという電子音が鳴るが、これは設定で解除することが可能だ。音自体が少し大きいため、外出先で操作をする際には音を消しておいた方が良いだろう。

ティソ PRX デジタル

デジタルウォッチらしく、多くの機能を搭載している。上段に“DATE”の表示があるときは、カレンダー表示のモードだ。中段左から、2024年5月19日と読み、下段に曜日が表示されている。


所有欲を満たしてくれる大人のデジタルウォッチ

 デジタルウォッチに対するイメージは、年々変わってきているように感じる。70年代の広告には、その多機能性からビジネスウォッチとして訴求するものも見られるが、今からひと昔前になると、デジタルウォッチはビジネスには不適とする意見も珍しくはなかった。それが近年は液晶を備えたスマートウォッチが普及し、ビジネスで使用されているところを見かけることも多くなってきた。デジタルウォッチは再びカジュアルシーン以外での市民権を得るに至ったと考えて良いだろう。

 では、一時期でビジネスに不適とされた背景は何だったのか。これは筆者の想像だが、アナログウォッチに比べて製造工程の自動化が容易であり量産に向いていたため、大量かつ安価に販売することを前提にプラスチック製の外装を与えられることが多かったのではないだろうか。ゆえにカジュアルなイメージが定着し、忌避されたと想像できる。

 現代に登場したPRX デジタルは、そんなイメージを完全に消し去るほどの仕上げの良さと高級感を備えたモデルだ。ゴールドPVDモデルであれば華やかなシーンにもふさわしく、シルバーのステンレススティールケースモデルであればビジネスシーンにも自然に溶け込むことだろう。“外し”としてではなく、多様なシーンで着用できるデジタルウォッチを求めていたユーザーにとって、本作の存在はその渇望感を癒すに足るはずだ。


Contact info:ティソ Tel.03-6427-0366


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