国民的アイドルグループ「嵐」のメンバーとして活躍する一方、キャスターや俳優としても多彩な才能を発揮する櫻井翔。43歳を迎えた今、彼の手首に光る時計には、アイドルの枠を超えた大人の男性としての品格と知性が表れている。ジャガー・ルクルトとブレゲという名門ブランドへの深い愛着からは、時計に対する真摯な姿勢が垣間見える。

Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年6月8日掲載記事]
国民が涙した嵐解散発表。GWを震撼させた電撃ニュース
2025年のGW期間中、「嵐」は2026年春頃にコンサートツアーを行い、5月末をもって活動を終了するという電撃発表があった。300万人以上いると推定されているファンクラブ会員は、さぞかし驚いたに違いない。また、ファンクラブからは一旦離れてしまったがラストツアーはライブで見たいという往年のファンや、嵐メンバーと同世代で嵐の活動を見ながら半生を過ごしてきた人たちも、きっと最後の姿を直に目に焼き付けたいと思うだろう。ツアーチケットは、一大争奪戦になることが必至だ。
ラストツアーについての発表動画の中で、櫻井翔は「20年以上にわたり、お世話になってきた多くのスタッフの皆さんと共に、その景色を作り上げていきたい」と、誓いの言葉を発した。ツアーでメンバーが再び揃う姿を見ることができることは嬉しいが、その姿で嵐としての活動は見納めとなるという複雑な心境を抱えるファンは、いまだ感情の整理が追いつかないという。
早くもコンサートツアーに関する偽の情報まで飛び出し、宿泊先の心配をする声も上がっている。というのも、嵐のデビュー20周年を記念して2018年11月から2019年12月にかけて開催されたツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」は、5大ドームで合計50公演が行われ、総動員数237万5000人という単一ツアーにおいて国内史上最大規模を記録しているからだ。
ラストライブはどのような規模になるのか、ライブ配信や全国の映画館でのライブビューイングも含めて、嵐の活動の集大成がどのような形で行われるのかに、今後も注目が集まりそうだ。
櫻井翔の左腕に光る逸品。ジャガー・ルクルト「レベルソ」への深い愛着
そんな中、編集部は2019年に撮影された櫻井翔の左腕にジャガー・ルクルト「グランド・レベルソ976」があることを確認した。質感の高いネイビーのスーツにレジメンタルタイというコーディネイトとの相性も抜群だ。控えめでありながらも知的な存在感をしっかりと主張するレベルソは、まさに「嵐」における櫻井翔のキャラクターにも重なる。

櫻井翔の「レベルソ」への愛着が垣間見えるエピソードもある。2022年に放送された「櫻井・有吉THE夜会」の中で、オリンピック銀メダリスト女子パシュートの高木菜那が自分へのご褒美として時計を購入したいという相談に対し、最後の3本の候補のうちの一本だったジャガー・ルクルトのレベルソに「絶対いいと思うよ。5年とか10年とかで使えなくなるものじゃないから。持ってるレベルソ、15年ぐらい使ってる」とコメント。さらに「ベルトだって替えて、長く雰囲気変えられる」とプレゼンし、「値段としては高いけど、長い目で見たらいいやつ1本持ってるのってめちゃくちゃいいと思うけどね」と、話していた。
そんな櫻井からの後押しも手伝ってか、高木菜那は最終的に「レベルソ」を購入したという。この一連のやり取りからも櫻井翔の時計愛が伝わってくる。
「レベルソ」は、ジャガー・ルクルトを代表するコレクションのひとつだ。反転式のケースを持つ「レベルソ」の由来は、1930年代初頭にインドに駐在していたイギリス人将校が、ポロの試合中に衝撃に耐え得る腕時計の開発をジャガー・ルクルトに依頼したことにある。文字盤をスライドすると裏面が現れ、スティックによる打撃からダイアルを保護することができる。
その意味ではラグジュアリー・スポーツウォッチの元祖とも言える時計である。エレガンスを感じさせる黄金比のレクタンギュラーケースは、どのようなシーンにおいても品位を損なわない。時を経ても色褪せることのない普遍的な魅力を持つ「レベルソ」は、多くの愛好家からの信頼を集めている。
慶應義塾での特別対談で確認。ブレゲ「タイプXX」が語る挑戦者精神
一方、こちらのYouTube動画で櫻井翔が着用するのは、ブレゲ「タイプXX トランスアトランティック」だ。慶應義塾で16年間を過ごした彼が、塾長との特別対談の第一回ゲストとして登場した動画である。
動画の中でも“学ぶ姿勢を常に持ち続けたい”という気持ちを語った櫻井翔だが、この時計は自身がキャスターを務める「NEWS ZERO」の相棒として愛用しているものだ。時計のストラップの色合いに合わせてネクタイの色を揃えているのか、はたまたその逆か、クラシックな雰囲気の学舎にも溶け込む選択だ。

自動巻き(Cal.582Q)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径39mm)。
時計の名称は、ルイ-シャルル・ブレゲの開発した航空機が1930年にパリ〜ニューヨーク間の初の無着陸飛行による大西洋横断を成し遂げたことを意味する。ブレゲと航空機のつながりや、チャレンジングな思いが感じられるモデルだ。
フランス空軍のために1950年代に生み出された「タイプXX」は、現在もブレゲのコレクションのひとつで、民間用、軍用の2バージョンが展開されている。航空用ウォッチを特徴づけるフライバック機能を備え、蓄光塗装を施した針やインデックス、簡単にストラップが交換できる着脱システムなど、さまざまな有用ディテールが組み込まれている。
時を刻む美学が語る、真の大人の選択
43歳を迎えた櫻井翔は、アイドルとしてだけでなく、俳優、キャスター、司会者として多彩な才能を発揮している。物静かで品のある佇まいは男女問わず好感度が高く、多くの企業が彼をCMに起用する理由もそこにある。そして彼が選ぶ時計もまた、そんな知的で洗練された人柄を映し出すセレクトだ。
15年という長きにわたって「レベルソ」を愛用し続ける櫻井翔の姿勢からは、時計を単なるアクセサリーではなく、人生のパートナーとして捉える哲学が垣間見える。「長い目で見たらいいやつ1本持ってるのってめちゃくちゃいい」という彼の素直な言葉は、大人の時計選びの真髄を表している。

手巻き。約48時間パワーリザーブ。SSケース(38.5×30mm)。3気圧防水。
ジャガー・ルクルトが持つ伝統と革新性、そしてブレゲの歴史と挑戦者精神は、デビューから25年以上にわたって常に進化し続けてきた櫻井翔自身の歩みと重なる部分が多い。時計に込められた職人の魂とブランドの哲学を深く理解し、共鳴しているからこそ、これらの名門ブランドを選び続けているのだろう。
アイドルとしての活動がカウントダウンに入った今、櫻井翔の腕で刻まれる時間の価値はより一層重みを増している。しかし一つだけ確実に言えることがある。それは、彼の手首に光るジャガー・ルクルトとブレゲが、これからも変わらず時を刻み続けるということだ。真の大人が選ぶ時計とは何か。櫻井翔の選択が、その答えを静かに、しかし雄弁に物語っている。