ひと目では多くを語らないオリスの「プロパイロットX キャリバー400」。装飾を控えたその外観の下には、洗練された構造と日常使いに適した機能性が巧みに組み込まれている。静けさを装いながら、手に取るほどに奥行きが感じられる1本だ。
機能をそぎ落としたデザインに潜む魅力
一見すると、オリス「プロパイロットX キャリバー400」は、日付表示付きの“シンプルな”3針時計にすぎない。回転ベゼルやセラミックインサートといった特殊な機能はなく、控えめな構成だ。しかしその静かなたたずまいのなかには、視覚的な工夫や素材選びによる高い完成度が潜んでいる。

自動巻き(Oris Cal.400)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。Tiケース(直径39mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。81万4000円(税込み)。
粒感のある文字盤、斜めにリブを刻んだベゼル、大型のリュウズと角張ったブレスレットなど、個性を演出する造形は、視認性や操作性といった実用面にも結びついている。ケースとブレスレットはチタン製で、軽量かつ温かみのあるダークトーンが特徴だ。
歴代モデルからの進化とパイロットウォッチの伝統
プロパイロットXの名称は本作以前のモデルにも見られるが、従来はスケルトン構造や約10日間パワーリザーブなど技術重視の設計であった。一方、本モデルではそうした機能をあえて省き、日常使いに徹した堅実な時計として再構成されている。
また、光の反射を抑えるマットな仕上げや太く読みやすい針、夜間の視認性を確保する蓄光表示など、オリスが1910年代から展開してきたパイロットウォッチの伝統を受け継ぐ設計も随所に見られる。
着け心地と操作性を両立するチタンブレスレット

ねじ込み式のリュウズは操作しやすく、オリス独自のリフトクラスプは、指先で簡単に開閉できる構造だ。リンクはスクリューピンによって固定されており、片側から操作することでブレスレットを外し、長さを調整できる。

ケースサイズは直径39mm、厚さ11.8mm。軽量なチタンとの組み合わせにより、長時間装着しても負担が少ない。実測ではブレスレット調整後の重量が93g(実測値)と、数値的にも非常に軽量である。
自社製ムーブメントCal.400の実力

Cal.400は、30個の耐磁性パーツによって高い耐磁性能を備え、ツインバレルによって約5日間のパワーリザーブを確保する。また、メンテナンス間隔は10年と長く、公式サイト、マイオリスでの登録によって、保証期間も同様に延長可能だ。
かつて報告された分針の“跳ね”現象は、ムーブメント設計の見直しによりすでに解消されている。精度についても歩度測定機では日差プラス5秒前後と良好である一方、使用状況により日差10〜15秒にぶれることもあった。自動巻きローターの動きが不十分な環境では、定期的に手巻きを併用するのが望ましい。
日常を支える“発見のある”時計
初見では控えめに映るプロパイロットX キャリバー400だが、実際には素材、設計、機構のすべてにおいて高い完成度を備えている。小さな癖はあるものの、それも含めて魅力となる1本であり、日々使うなかでその良さを実感できる、“発見のある”腕時計である。