「0から1を生み出す」というカシオ計算機の理念は、創業時から連綿と受け継がれ、やがては耐衝撃構造を備えたG-SHOCKを生み出した。この象徴的タイムピースは、誕生から40年を超えてなおも健在だ。新しい技術を取り入れつつも、そのルックスはいまだ比類なく、耐久性も揺るがない。

Photographs by Eiichi Okuyama
セルジュ・メイラード:文
Text by Serge Maillard
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]
耐衝撃時計のオリジネーターが象徴的タイムピースで魅せる、進化の先
象徴的なモデルは可能な限り忠実に復刻すべきなのか、それとも解釈を加えて強化すべきなのか? あらゆる時計ブランドが必然的に自問する問いであり、愛好家たちの意見も分かれる。そこでカシオは、誕生から40年以上を経た象徴的かつ超高耐久のG‐SHOCKにおいて、両方の期待に応えることを選んだ。1983年のオリジナルに忠実な「DW‐5000R」と、卓越した素材と仕上げを特徴とする「MRG‐B5000」である。
この戦略はまた、象徴的モデルが持ち得る多様な側面を示している。なぜなら冒頭で述べたように、単純な話ではないからだ。実際、DW‐5000Rはオリジナルである「DW‐5000C」の外観と感触を忠実に再現している。だが、その一方でバイオ由来樹脂や高輝度LEDバックライトといった新しい技術や素材も備えている。ケースサイズも見直され、41.6mmから42.3mmへと拡大した。

他方、ハイエンドラインのMR‐Gに属するMRG‐B5000は、卓越した仕上げを施した特別な金属を用い、83年には存在しなかったスマートフォンリンク機能も備える。しかし、外観において過度な変化はなく、デザインは依然としてオリジナルに忠実である。古きを新しくするのか、新しきを古く見せるのか? 時計製造において、答えは常に微妙なものとなる。
2024年に、カシオウオッチ50周年を記念してDW‐5000Rを発表した際、そのオリジナルモデルへの忠実なオマージュは多くの人々の目に涙を誘った。このモデルは初号機が備えていたスクエアデザインの本質を捉えつつ、21世紀にふさわしい微妙な改良を取り入れている。表示枠のレンガパターンは継承されているが、素材は最適化され、耐衝撃性、軽さ、堅牢性のすべてが向上している。まさに逆説的だ。

MRG‐B5000は、ディテールの随所に前例のない職人技と技術力を示す。黎明期の樹脂からは大きく進化し、ケースとベゼルには高硬度の64チタンが、バンドには純チタンの約3倍の硬度を持つDAT55Gが使われている。トップベゼルはコバリオン®で、これは純チタンの約4倍の硬度を持ち、プラチナのような輝きを放つ。MRG‐B5000Bでは、このコバリオン®の鏡面仕上げを活かしつつ、初号機を思わせるブラックDLCの艶やかなコーティングを加えている。
さらに各部品は、高級時計製造に用いられるザラツ研磨によって手作業で磨き上げられる。この仕上げは、複雑で角張ったG‐SHOCKの形状であっても歪みのない鏡面を実現する。

伝統的な外観の裏には、最先端の機能が組み込まれている。光による持続的な電力供給を可能にするタフソーラー、電波受信により自動時刻修正を行うマルチバンド6、スマートフォンとの接続を可能にするBluetooth®、そして暗所でも視認性を確保するスーパーイルミネーターだ。このハイテクの結晶の堅牢性を保証するため、ベゼルパーツの間にステンレススティール製の板バネやシリコーン等の緩衝体を備え、強度を高めた新しい耐衝撃構造のマルチガードストラクチャーを採用。これにより堅牢性を保ちつつ、ラグジュアリータイムピースの優雅さも併せ持つことになった。
DW‐5000RとMRG‐B5000はともにG‐SHOCKの本質を体現している。革命的なコンセプトの誕生と先見性、そして性能を絶え間なく洗練し改良する力。この二面性こそがG‐SHOCKの長寿の秘密である。すなわち、民主的で手に届く存在であると同時に、世界最高級のタイムピースと肩を並べる革新のプラットフォームでもあるのだ。一方はアイデアの誕生を体現し、もう一方はその最も洗練された表現を体現する。両者はともにG‐SHOCKの豊かな物語、伝統への敬意、そして革新への“Relentless”(決してあきらめない)の追求を語っている。地平線は限りなく広がっているのだ。

“初代G-SHOCK 復刻モデル” のフレーズ通り、樹脂製の5000 系では約30 年ぶりにフラットベゼルを採用し、スクリューバックも備えたファン垂涎のモデル。もっとも、アウターケースとバンドにはバイオマスプラスティックを用い、バックライトはスーパーイルミネーターに変更するなど、仕様は現代的だ。クォーツ。樹脂×SSケース(縦48.9 ×横42.3mm、厚さ13.1mm)。20気圧防水。3万3000円(税込み)。

初号機をフルメタル化するのみならず、最高峰シリーズにふさわしい完成度を追求し、細部にまで徹底した研磨を施した傑作。一方で、Bluetooth®経由でスマートフォンと連携できるモバイルリンク機能を備え、実用性も格段に高められている。タフソーラー。フル充電時約22カ月駆動(パワーセーブ時)。64Ti ×コバリオン®ケース(縦49.4 ×横43.2mm、厚さ12.9mm)。20気圧防水。49万5000円(税込み)。
「DW-5000R」
https://gshock.casio.com/jp/products/others/dw-5000r/
「MRG-B5000」
https://gshock.casio.com/jp/products/mr-g/mrg-b5000/