永遠に語り継がれるタイムピース #09 ハリー・ウィンストン「ザリウム バリエーション」

特殊合金ザリウムを用いたハリー・ウィンストンのアイコニックなモデル「プロジェクト Z11」に再解釈を施したバリエーションが2025年に誕生。ザリウムによるケースやオープンワークダイアルを強調するのは、文字通り巧みなカラーバリエーション。弾ける色使いが唯一無二の創作を再び輝かせる。

ザリウム バリエーション

サンドブラスト仕上げによるレッドのオープンワークダイアルに蓄光塗料を施したターコイズとブラックのインデックス、ターコイズの蓄光塗料を施した針とHWロゴ、グレーのアリゲーターレザーストラップを組み合わせたモデル。自動巻き(Cal.HW3206)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ザリウムケース(直径42.2mm、厚さ10.6mm)。10気圧防水。
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
菅原茂:文
Text by Shigeru Sugawara
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


ジュエラーらしいデザイン感覚がほとばしる、アバンギャルドにして正統な機械式の快作

 世界屈指のハイエンドジュエラーに数えられるニューヨークのハリー・ウィンストンが時計部門を設け、スイスを拠点に創作を始めたのは1989年。それ以来、高級時計の分野において絶え間なく探求を続けてきたのは、ダイヤモンドをはじめとする貴石や高級ジュエリーがそうであるように、レアでユニークであること、言い換えれば「稀少性」という価値だ。ハリー・ウィンストンは、時計の独創的なデザインや異例の複雑機構、素材などに特別な稀少性を体現することによってジュエラー・ウォッチメーカーとして別格のアイデンティティーを築き、世界的な名声を手に入れたのである。

ザリウム バリエーション

ハリー・ウィンストンのニューヨーク本店のファサードに設けられたアーチをシンボリックに表現するリュウズガード。

 ザリウムをケース素材に採用した「プロジェクト Z」シリーズもそうした探求を語る代表作のひとつだ。ジルコニウムを主成分とするザリウムは、強靭で軽量、耐腐食、低刺激といった優れた性質があり、宇宙工学の分野にも利用される特殊合金である。2004年にファーストモデルを発表した「プロジェクト Z」シリーズで時計ケースに初めてザリウムを導入して注目を浴びたハリー・ウィンストンは、このケースに複雑ムーブメントと大胆なデザインのダイアルを組み合わせ、ユニークの極みとも言うべき驚異のモデルを次々と生み出した。

 多彩なデザインを展開するスポーティーでラグジュアリーな「HW オーシャン」コレクションの25年最新作「ザリウム バリエーション」は、プロジェクト Zの11作目(2017年)をベースにして、名称の通り新たなカラーバリエーションを展開する限定モデルである。カラーバリエーションによる再解釈という手法は、同10作目(2016年)をグリーンやオレンジ、イエロー、ターコイズなどで鮮烈に彩ってイメージを新たにした21年および24年発表のザリウム バリエーションですでに試みられたが、今回はその続編といえる。

ザリウム バリエーション

ニューヨークのランドマークのひとつ、マンハッタンブリッジの吊り橋構造を思わせる力強いモチーフと、その窓から見える大型日付表示。

 新たに誕生した3種類のカラーバリエーションもまた刺激的である。ニューヨークの巨大な鋼鉄の吊り橋マンハッタンブリッジの構造から着想を得てデザインされたオープンワークダイアルは、ブライトイエロー、ディープブルー、レッドの各色に彩られ、オフセンターダイアルに配された針やインデックス、手裏剣スモールセコンド、HWロゴなどにオープンワークダイアルと効果的なコントラストを成すカラーリングが施されている。暗所で視認性を高める夜光塗料は、時刻表示のエレメントのみならず、アイコニックなビッグデイトの数字にも用いられている。ザリウムのグレーがかった色調に合わせて全体をモノトーンに近い落ち着いた色をまとうプロジェクト Z11と見比べると、アバンギャルドなダイアルの構成要素は同じでも、新作には格段のインパクトがあり、別物に思えるほどだ。

ザリウム バリエーション

ブラックの放射状グリッドを中心に据え、蓄光塗料を施したホワイトゴールド製インデックスとユニークな手裏剣スモールセコンドを配したオフセンターダイアル。

 ハリー・ウィンストンは、高級時計では見かけない色使いの探求によって、またひとつ独自の「稀少性」を手に入れた。ブライトイエローのオープンワークダイアルにレッド×ライトブルーのアリゲーターレザー×ラバーストラップを組み合わせ、最もカジュアルな印象を与えるモデルはとくにそれが際立っている。ニューヨークの躍動感と同時に、ビーチリゾートで過ごす自由なバカンスさえも連想させ、とりわけ興味深い。新たなカラーリングは、さらに凝ったディテールをくっきりと見せる。ブラックに縁取られたオフセンターダイアルは言うまでもなく、自動巻きムーブメントのダイアル側プレートに施されたダイナミックなサーキュラー・コート・ド・ジュネーブ模様や、ふたつの日付ディスクを露わにしてビッグデイトの仕組みを見せる日付などだ。

 高級機械式でこんな時計が果たして他にあるだろうか? 世界中を見渡したとしても、ハリー・ウィンストンが創作する時計以外に見当たらないに違いない。

ザリウム バリエーション

ザリウム バリエーション
ザリウムケース、ダイアルデザイン、自動巻きムーブメントは共通で、それぞれ異なるテイストを持った3 つのモデル。(右)ディープブルーのオープンワークダイアル、ベージュサンドとブラックの蓄光インデックス、カーキのアリゲーター×ラバーストラップ。(中)ブライトイエローのオープンワークダイアル、ライトブルーとブラックの蓄光インデックス、レッドのアリゲーター×ラバーストラップ。(左)レッドのオープンワークダイアル、ターコイズとブラックの蓄光インデックス、グレーのアリゲーター×ラバーストラップ。世界限定各50本。各377万3000円(税込み)。



▼詳細情報はこちらから▼
https://www.harrywinston.com



Contact info:ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション Tel.0120-346-376


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