永遠に語り継がれるタイムピース #16 シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」

シチズンが展開するブランドの中でも最高峰に位置付けられる「ザ・シチズン」は、誕生から今年で30周年を迎えた。技術の粋を結集させ、今や国内外から高い評価を得るに至ったザ・シチズンだが、「アイコニック ネイチャー コレクション」の新作でも日本製高級時計の進化を目指し、その理想形を追求している。

シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」

春の明け方の情景を描いた「AQ4106-00A」、夏の夜の情景を切り取った「AQ4100-22L」に続く、ザ・シチズンの30周年を記念したアイコニック ネイチャー コレクションの限定モデル。本作は「沈みゆく夕陽で山の端が煌めく瞬間」に着想を得た、秋の夕暮れのワンシーンを表現し、暗色の文字盤と金箔の意匠との組み合わせが落ち着いた印象を放つ。
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
ギズベルト・L・ブルーナー(ジャーナリスト、著作者):文
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


ブランド誕生30周年── なおも止まることのない、進化と挑戦

「ザ・シチズン」とは、シチズン時計が幅広いコレクションの頂点に位置付ける、小規模ながら精緻を極めたブランドの名称である。この名称は、シチズンの名を東京市(当時)の長であった後藤新平から授かる名誉にあずかった、この日本企業の長い歴史に由来しており、それは時計界でもおそらく唯一の出来事だろう。

 シチズンの前身である尚工舎時計研究所が創設された1918年の時点で、時計は研究課題に過ぎなかった。具体的な成果として、「CITIZEN」のサインを持つ懐中時計が姿を現すのは24年12月。昭和天皇は最初期のシチズン製懐中時計を愛用され、晩餐会において「とてもよく時間が合う」とお話しされていたと伝えられている。

シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」

ケースにはステンレススティールに比べて40%軽く、約5倍の硬度を誇るスーパーチタニウム™を採用。しかも、本作には新しい表面硬化技術デュラテクトアンバーイエローを用いており、アンティーク時計を想起させる上品な金色に彩っている。

 とはいえ、当時はその名を冠した時計会社を設ける発想はなく、会社の創立までには、さらに6年を要することとなった。30年5月28日、中島與三郎がシチズン時計の礎を築き、やがて世界に広がる大企業の基盤が据えられた。

 ザ・シチズンが生まれたのは、シチズン時計が創立65周年を迎えた1995年。社内的には、70年代の「クロノマスター」やクロノメーターに連なる存在である。以来、プロダクト担当は一貫してモデルレンジに取り組み、拡張、評価し、その完成度を高めてきた。

シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」

文字盤の6時側には、金箔を用いて「かすれ」を表現した優美な山の稜線をレイアウト。

 そして、ザ・シチズンの誕生30周年にあたって発表されたのが、力強い表現力を持つ和紙文字盤の限定モデルだ。世界に向けて提供されるアイコニック ネイチャー コレクションは、日本の古典文学に用いられる「をかし」という言葉が日常の中に瞬時に現れる美的印象、すなわち風景、季節などによって引き起こされる感覚を表現。近しい概念に、繊維紙上において墨の自然な効果を生む「にじみ」と「かすれ」があり、こうした考えに基づく和紙文字盤は、質感が視認できるテクスチャーと書に近い親密さを備え、新しいザ・シチズンの要諦をなす。

 そのひとつである「AQ4103-16W」は、山での夕暮れの一瞬に着想を得たモデル。暗色の和紙文字盤には金箔による「かすれ」の趣が与えられ、背景となるブラウンのグラデーションは、秋の気配を映す。ケースはスーパーチタニウムの新しい硬化処理で、デュラテクトアンバーイエローと呼ばれる琥珀がかった黄の色調を得ている。

 このケースに用いられているスーパーチタニウムが生まれたのは2000年。チタン特有の軽さや耐食性、肌への優しさに加え、独自の表面硬化技術により、強靭さと美しい色彩も手に入れた。デュラテクトの手法には3種あり、コーティング用、素材表面の純硬化用、両者を併せ持つものがある。どれを用いるかは、時計のキャラクターや意図する外観に依存する。だが確かなのは、こうして処理されたケースが、1000HVを超える顕著な硬さを備えていることだ。

シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」

さらに文字盤の12時側には、ブラウンの色調が微かなグラデーションを描いており、金箔の意匠と組み合わせることで、秋の夕暮れに見られる儚げな情景を、見事に表現している。

 搭載するムーブメントに選ばれたのは、将来を見据えた光発電エコ・ドライブである。光をエネルギー源として、腕時計の精密な電子クォーツを駆動する技術で、これも2026年に50周年を迎える。1997年6月に日本で発表された「シチズン エクシード エコ・ドライブ」のクォーツムーブメントは、最大10秒しかズレない、世界初の年差ソーラーパワー時計だった。これは今回の限定モデルに搭載されるキャリバーA060にも当てはまり、精度は年差±5秒という狭いレンジに収まる。節電モードでは、フル充電後、外部からのエネルギー供給なしでも、永久カレンダーを備えるムーブメントが約18カ月動き続ける。世界を巡る人々には、タイムゾーンの境を越える際に、時針だけを独立調整できる点も大いに喜ばれるだろう。

 その完成度が稀有であることを、シチズンは厳格な限定数で示す。本作の販売本数は400本のみ。世界的に存在感を示す日本の偉大な時計ブランドであることを考えれば、これは実に限られた数だ。

シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」

ザ・シチズン「アイコニック ネイチャー コレクション AQ4103-16W」
秋の夕暮れのイメージをより豊かにしているのは、文字盤に用いられた土佐和紙によるもの。ストラップにはLWG(レザーワーキンググループ)認証を受けたタンナーの生産によるクロコダイルが使われる。光発電エコ・ドライブ(Cal.A060)。フル充電時約1.5年駆動(パワーセーブ時)。スーパーチタニウム™ケース(直径38.3mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。世界限定400本。47万3000円(税込み)。



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https://citizen.jp/the-citizen/special/index.html



Contact info:シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807


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