受け継がれし矜持 進化するブライトリングの双璧

2025.10.13

1884年の創業以来、ブライトリングはクロノグラフの進化を押し上げ、信頼に足る機能を“形”にしてきた。その蓄積は、今も色褪せない機能美となって「ナビタイマー」と「クロノマット」に息づく。前者は“計器の美”、後者は“万能の美”。どちらも機能を起点に磨かれ、その確かさが品格へと結ぶ。―― 伝統は進行形。選ばれる理由は、日々の手元で証明される。

星武志:写真
Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
大野高広:編集・文
Edited & Text by Takahiro Ohno (Office Peropaw)
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


空の伝統に、唯一無二の輝き

ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン リミテッド

ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン リミテッド
日本のファン50人のためだけに用意された、ブラックMOPと18Kレッドゴールドケースの稀少な限定ナビタイマー。ブライトリングのMOPは高品質なことで知られており、天然素材ならではの唯一無二の模様と質感、光の加減でさまざまに表情を変える美しさは、男女を問わず高い支持を得る。COSC認定クロノメーター。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRGケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。日本限定50本。317万9000円(税込み)。

 パイロットウォッチの枠を超え、音楽やファッションの文脈でも通用する〝計器の美〞。ナビタイマーは、航空用回転計算尺という特殊な装置でカルチャーと実用性を同居させる稀有な航空クロノグラフである。腕の上で「計算できる」こと自体がデザインの必然性となり、デジタル全盛の今もその意義は揺るがない。むしろ、そのクラシカルな機能美は愛好家の間で高く評価され続けてきた。

ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン リミテッド

2008年に自社開発され、切り替え車の改良やLIGA技術の導入など、飽くなき熟成を経た18年目のCal.01に18KRG製ローターを採用。ねじ込み式ケースバックの外周部に「ONE OF 50」の刻印が確認できる。

 現行では薄型化された回転計算尺とドーム型サファイアクリスタル風防が、モダンレトロなプロポーションを保ちながら視認性を整え、装着感も現代的に最適化。自社キャリバー01は約70時間のパワーリザーブとCOSC認定の精度を備え、コラムホイール×垂直クラッチが計器らしい明確な操作感をもたらす。サイズは36/41/43/46mmを中心に、素材はSS、ゴールド、コンビネーションなど。ダイアルは伝統のブラックやシルバーに加え、ブルー、グリーン、カッパー、MOPまで多彩で、コックピットから都市生活まで自然に溶け込む。さらにはGMTや3針自動巻き、32mm径のレディース(クォーツ)もラインナップ。例えば41mm径の「ナビタイマー B01 クロノグラフ」は、18KRGのレギュラーモデルがシルバーのみで、ブラック系(MOP)はジャパンリミテッドだけという〝通好み〞の選択肢を見つけるのも楽しい。

ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン リミテッド

1954年に最初のナビタイマーRef.806をAOPA会員向けに納品。約40mmのSSケースに、バルジューCal.72を搭載し、回転計算尺の周囲に滑り止めのビーズ装飾を装備。12時位置のAOPAロゴは現行モデルに受け継がれた。

 忘れてはならないのは、こうしたナビタイマーの輝かしい現在地が重層的な歴史に裏打ちされていることだ。1952年、航空用の回転計算尺を手首に載せる試みとして開発が始まり、2年後に完成した初代モデルは国際オーナーパイロット協会(AOPA)の公式時計に採用。12時位置の翼章は原点を示すシグネチャーとなった。62年には宇宙飛行士スコット・カーペンターが、24時間表示に改めた「ナビタイマー コスモノート」を使用し、昼夜の概念がない宇宙での実用性を証明。さらに60〜70年代にはマイルス・デイヴィスやセルジュ・ゲンズブールらに愛され、計器でありながらスタイルを規定するアイコンへと進化した。

ナビタイマー オートマチック GMT 41

ナビタイマー オートマチック GMT 41
回転計算尺を備えたナビタイマーの機能美にGMTを重ねた41mm径モデル。センター同軸で第2時間帯を示し、視認性と直感的な操作を両立。人気色の爽やかなアイスブルー。自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。88万5500円(税込み)。
ナビタイマー B01 クロノグラフ 43

ナビタイマー B01 クロノグラフ 43
王道たる43mm径クロノグラフ。回転計算尺、ドーム風防、AOPAロゴの復活が、伝統と現代性の最良の均衡を示す。文字盤色とブレス/ストラップの組み合わせは多彩だ。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.69mm)。3気圧防水。128万1500円(税込み)。

 現代の大型ジェットは自動化が進むが、燃料計を含むアナログ計器に依存する小型機も多い。万一計器が故障した際、航空用回転計算尺があれば燃料消費や地上速度、毎分の飛行距離、平均上昇・降下率など、多くの航空計算を即座にこなせる。ナビタイマーは最後のバックアップたりうる計器なのだ。また、計算尺は掛け算や割り算が容易なため、為替換算や燃費など日常的な計算にも気軽に使える。

 つまりは今も昔も、ナビタイマーは操縦席から街角まで横断できる〝現役の計器〞である。文化的アイコンでありながら、実用の核はぶれない。選ばれ続ける理由は、機能が導く美の説得力にある。

ナビタイマー B01 クロノグラフ 46

ナビタイマー B01 クロノグラフ 46
もはや王者の風格を漂わせる46mm径。広い文字盤が回転計算尺の可読性を高め、操縦席でも街でも堂々たる佇まい。バランスのよいケース形状ゆえに大型でも装着感は快適だ。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径46mm、厚さ13.95mm)。3気圧防水。136万9500円(税込み)。
ナビタイマー オートマチック 36

ナビタイマー オートマチック 36
クロノグラフを外し、ビーズ装飾の回転計算尺と時分秒で再解釈した直径36mmの3針ナビタイマー。カラーや素材の多彩さ、ブレス/ストラップの選択肢で装いを自在に。自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KRGケース(直径36mm、厚さ11.42mm)。3気圧防水。171万500円(税込み)。


あらゆるシーンに、機能美という品格を

クロノマット B01 42 ジャパン エディション

クロノマット B01 42 ジャパン エディション
ライダータブ付きの逆回転防止ベゼルが、ナビタイマーよりタフで幅広く、ケースもボリュームがあるため、18Kレッドゴールドのラグジュアリー感がより際立つ。アンスラサイトカラーの文字盤に漆黒のサブダイアル、ルーロー調のラバーストラップを組み合わせ、世界的にも稀少性の高い日本だけの限定エディションに仕上げた。COSC 認定クロノメーター。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ15.1mm)。200m防水。344万3000円(税込み)。

 洗練されたスタイルと確かな質感。クロノマットは力強さを上質へと昇華する万能クロノグラフだ。ベゼルのライダータブとルーローブレスレットという、見た瞬間に機能が直感的に伝わるふたつのシグネチャーが、都市とアウトドア、フォーマルとカジュアルの境界を消す。約70時間駆動の自社キャリバー01、200m防水と堅牢なケース、視認性の高い文字盤、取り回しの良さ、それらが日常使用の確かな根拠となる。ケースサイズは40/42/44mmを中核に36mm径の3針自動巻き、32/28mmのレディースまで用意。カラーバリエーションも多彩で、1本でワードローブの軸になる。

クロノマット B01 42 ジャパン エディション

サファイアクリスタルバックを通して、自社開発・製造キャリバー01の精緻な仕上げと鼓動が堪能できる。18Kレッドゴールド製ローターは中空きの新デザイン。

 こうして〝万能〞の基準を更新し続けてきたクロノマットのルーツは、1983年にさかのぼる。薄型クォーツが隆盛を極めた時代、ブライトリングは次世代に向けてイタリア空軍アクロバット飛行チーム「フレッチェ・トリコローリ」と共同開発し、あえて機械式クロノグラフを〝使える道具〞として再定義した。取り外し可能なライダータブは、15と45を入れ替えればカウントダウン用の目盛りとなり、同時にグローブ着用時の滑り止めも担う。ラグ間をリズミカルにつなぐルーローブレスレットは、しなやかな装着感と外観の個性を両立。これらが〝計器の力強さ〞を保ちながら、都会的な洗練と融和する独自のデザインコードを形作った。

クロノマット B01 42 ジャパン エディション

スティール製のルーローブレスレットに着想を得たラバーストラップ。エッジ部を艶消し、中央部は本物そっくりにテクスチャード加工を施す。1コマおきのポリッシュリンクも再現するなど、細部まで手の込んだ作りが贅沢感を添える。ストレスフリーな装着感を追求した肌触りの優しさも格別だ。

 興味深いのは、翌年市販化されたクロノマットを見て、プロの飛行士が機能性を、一般ユーザーはデザインをそれぞれ強く支持したこと。世界的ヒットの起点が審美眼の高いイタリアだったのも象徴的だ。近年のアップデートは、その機能美を崩さずに洗練を深める方向にある。2020年に誕生した現行モデルは、〝マルチパーパス〞というステージを明確化。モダンレトロな佇まいが多様なシーンに溶け込みつつ、力感と品位を同時に演出する。例えば当初からラインナップされた18KRG×アンスラサイトは、トレンドだった〝黒金〞の押し出しをグレー文字盤で調律する配色が日本の嗜好に合致し、高い支持を獲得。その評価を受け、同仕様はルーロー意匠のラバーストラップと組み合わせたジャパン エディションに結実した。現行レギュラーモデルの金無垢クロノマットがグリーンダイアルのみであることも相まって、この日本仕様を指名する声は根強い。

初代クロノマット市販化の前年、フレッチェ・トリコローリの公式クロノグラフとして1983年に誕生。チームのパイロットたちから聞き取った意見がライダータブやルーローブレスレットなどアイコニックなディテールに結実した。

 結局のところ、クロノマットは誕生から40年を超えた今も進化を止めていない。装飾に頼らず、操作と着用の必然から立ち上がる形状だからこそ、静かな風格へと結実する。ビジネスやパーティーシーン、旅から海辺の週末まで、装いと用途の狭間で基準がひとつに定まらない時代に、クロノマットは機能美という品格を携えた基準そのものになる。

クロノマット B01 42 ジャパン エディション

クロノマット B01 42 ジャパン エディション
クロノマットの中核42mm径。ライダータブ付き逆回転防止ベゼルとルーローブレスを備え、自社製キャリバー01搭載。ポリッシュ&サテン仕上げも繊細。COSC認定クロノメーター。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm、厚さ15.1mm)。200m防水。125万4000円(税込み)。
スーパークロノマット B01 44

スーパークロノマット B01 44
存在感と実用性を両立する直径44mm。逆回転防止ベゼルやガード付きプッシュボタン、リュウズにセラミックスを使い、ルーロー意匠のラバーを合わせた。COSC認定クロノメーター。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径44mm、厚さ14.45mm)。200m防水。168万8500円(税込み)。
クロノマット GMT 40

クロノマット GMT 40
文字盤外周に配された24時スケールとセンター同軸のGMT針で第2時間帯を示すトラベル仕様。直径40mmは袖口の収まりにも余裕があり、視認性の高い文字盤と日付表示も実用的。自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.77mm)。200m防水。85万8000円(税込み)。
クロノマット オートマチック 36

クロノマット オートマチック 36
端正な3針ユニセックスサイズで設計思想を純化。洗練のシルエットとルーローブレスレットが特徴で、多彩な文字盤色や素材、ベゼル装飾のバリエーションも魅力。自動巻き(Cal.10)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS×18KRGケース(直径36mm、厚さ10.01mm)。10気圧防水。116万6000円(税込み)。



Contact info:ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707


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ブライトリング「クロノマット B01 42」を着用レビュー! 万能性を追求したチタンケースの出来はいかに!?

FEATURES

【85点】ブライトリング「スーパー クロノマット B01 44」