白金族金属ルテニウムをゆっくりと蒸着、結晶化させ、フラクタルのような結晶を生み出した「クリスタリウム」。これを文字盤に採用したのが「フリーク X」の最新作だ。ブラックで統一された外装とのコントラストが印象的な1本だ。
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]
ユリス・ナルダン「フリーク X クリスタリウム」

ユリス・ナルダンは、回転アワーディスクに独自素材の「クリスタリウム」を用いた「フリーク X クリスタリウム」を発表した。クリスタリウムは、特有の輝きと強度を備える白金族のルテニウムを原材料とするが、最も重要であるのはその製造プロセスだ。クリスタリウムは、ルテニウムを「ガラスに霜が降りるように」ゆっくりと数日間かけて蒸着、結晶化させて作られる。蒸着させる速度や安定して結晶化させることが難しく、製造プロセスの開発には数年を要した。こうして生み出されたクリスタリウムは、フラクタルのような結晶模様を持つことで、それぞれに異なる個性を持ち、表情豊かな反射が楽しめる。ただし、製造難易度が高く、販売本数は世界で50本に抑えられるとのことだ。

ローズゴールドのような色調と、特有の結晶模様で不規則な光の反射を生み出すクリスタリウムが目を引く新作。アリゲーターストラップのほか、ファブリックを模したテクスチャーのラバーストラップの組み合わせも用意される。自動巻き(Cal.UN-230)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径43mm、厚さ13.92mm)。50m防水。世界限定50本。666万6000円(税込み)。
フリーク Xの独自性の要となるのは、自動巻きムーブメントのキャリバーUN - 230である。最も大きな特徴は、フライングカルーセルで時刻表示を行う点であり、アワーディスクは、その表面に固定された時針を伴って回転する機構となっている。この動力伝達のために欠かせないリング状の内歯車は、それを支える梁と共に文字盤デザインに取り入れられた。本作では、この内歯車や輪列、表示針をブラックに統一。チタン製のケースとストラップもブラックとすることで外観を引き締め、そこにクリスタリウムのローズゴールドのような色調と、キラキラとした反射や立体感が引き立つ仕上がりを持つ。ここで目を引くのが、本作の中で唯一ブルー系の色調で光を反射するシリコン脱進機だ。シリコンを他社に先駆けて採用してきたユリス・ナルダンの技術的背景が反映されたシリコン脱進機は、ガンギ車の形状ひとつ取っても他社にはない意匠を持つ。



