カシオのワンランク上を体感できる「エディフィス オートマティック」は、「機械式」だけが見どころじゃない!

FEATUREWatchTime
2025.10.23

精密なクォーツとデジタル技術で世界を席巻してきたカシオが、ついに機械式時計の領域へと踏み出した。そのデビュー作となる「エディフィス オートマチック」は、スポーティーなエディフィスラインを舞台に、鍛造カーボンやサファイアガラスといった上質な素材を採用し、価格帯の常識を覆す完成度を実現。カシオはなぜ2025年に機械式ムーブメントを搭載した腕時計を発表したのか、そしてエディフィス オートマチックがどこまで「本気」なのかを、実機レビューを通じて『ウォッチタイム』ドイツ版編集長ダニエラ・プッシュがチェックする。

文字盤にはフォージドカーボンを使用。比較的高級な腕時計に使用されるこの素材を、大胆にも入門機的な価格帯の「エディフィス オートマチック」の一部のモデルに採用している。写真はステンレススティール製ケースを備えたRef.EFK-100YCDだ。
『WatchTime』ドイツ版2025年7月8月号
Text by Daniela Pusch
[2025年10月23日掲載記事]

「エディフィス オートマティック」の完成度は半端じゃない!

 私、『ウォッチタイム』ドイツ版編集長ダニエラ・プッシュは、おおよそ10万円以下の機械式腕時計を手に取った時に志の高さを感じることはめったにない。しかし、新しい「エディフィス オートマチック」は、その第一印象からまるでワンランク上、いやそれ以上を狙っているかのような感触を与えてくる。

 この腕時計が持つのは、単なる「手に取りやすい価格」以上の体験だ。機構、素材の選択、デザインの完成度が高い調和をもって結実しており、自分が今どの価格帯の腕時計を扱っているのかを、一瞬忘れてしまうほどの出来栄えを覚えてしまう。

ホワイト、ブルー、グリーンの文字盤は「カーボン風」の模様があしらわれたものだ。とはいえ、「エディフィス オートマチック」の世界を見事に体現していると言えるだろう。

カシオにとっての新章の幕開け

 カシオといえば何十年もの間、G-SHOCKに代表されるような精度に優れたクォーツムーブメント、機能性を重視したデジタルウォッチ、そしてタフな日常使いのパートナーとしての腕時計の代名詞であった。機械式ムーブメントを搭載した腕時計は、これまで同社のフィールドには存在しなかった領域である。

 だからこそ、長年にわたり噂されながらも実現しなかった機械式時計参入のニュースは、業界の期待と好奇心を掻き立て続けてきた。そして今回、ついにカシオはその一歩を踏み出したのである。それも、これまでセイコーやシチズンといったブランドが支配してきたカテゴリーに対して入門機という市場に真っ向から参入する形でだ。

 さらに注目すべきは、カシオが機械式デビューの舞台として「スポーティーかつ都会的」というイメージを持つブランド、エディフィスを選んだことだ。これは単なる新機構の投入ではなく、ブランドの今後を示す姿勢そのものを示すシグナルと言える。

ラインナップの核心、5モデルに込められた思想

カシオ エディフィス オートマチック

カシオ「エディフィス オートマチック」Ref.EFK-100XPB-1AJF
自動巻き(Cal.NH35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。カーボンケース(直径40mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。7万4800円(税込み)。

 エディフィス オートマチックシリーズは、すべて自動巻きムーブメントを搭載しながら、素材とデザインの方向性によって5モデルが展開されている。主軸となるのは、ステンレススティール製ケースを採用した4つのモデルで、いずれも5万5000円以下という戦略的な価格設定だ。そしてシリーズの中でも、もっともアイコニックな存在となるのが、フォージドカーボンを文字盤だけでなく、ケースにも用いたRef.EFK-100XPBである。

カシオ エディフィス オートマチック

カシオ「エディフィス オートマチック」Ref.EFK-100YCD-1AJF
自動巻き(Cal.NH35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。5万5000円(税込み)。

 航空宇宙分野にルーツを持ち、現在ではハイパフォーマンスカーに欠かせないこのフォージドカーボンを、カシオは「入門機の価格帯」の機械式時計に採用した。これは単なる素材選びではない。価格への挑戦であり、ブランドの技術力と未来志向を象徴する大胆なメッセージである。

カシオ エディフィス オートマチック

カシオ「エディフィス オートマチック」Ref.EFK-100YD-2AJF
自動巻き(Cal.NH35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)。

カシオ エディフィス オートマチック

カシオ「エディフィス オートマチック」Ref.EFK-100YD-3AJF
自動巻き(Cal.NH35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)。

カシオ エディフィス オートマチック

カシオ「エディフィス オートマチック」Ref.EFK-100YD-7AJF
自動巻き(Cal.NH35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)。

静かな自信を語る造形、デザインと装着感

 ステンレスモデルは直径39mm、カーボンモデルは40mmと、いずれも現代の装着トレンドに合致したサイズ感を備える。厚みは控えめで、特にカーボンモデルはスポーティーさとエレガンスの絶妙なバランスを実現。重量は最軽量87gから148gまでと幅があるが、いずれのモデルも腕上でのバランスに優れており、長時間の着用でも疲れを感じさせない。

カシオ エディフィス オートマチック

文字盤だけでなくケースにもフォージドカーボンを仕様したRef.EFK-100XPB-1AJF。スポーティーさとエレガンスさを見事に両立したモデルだ。なお、すべてのモデルで風防にはサファイアクリスタルが採用されているのも高ポイントだ。

 マット仕上げのケース、マーブル模様のカーボン、樹脂バンドの柔軟性、そしてステンレスモデルに装備された無垢の金属製ブレスレットと、セーフティ付きフォールディングクラスプ。これらのディテールは、明確に「価格以上の体験」を意図した設計である。

ムーブメントをのぞいて楽しめる

 ケースバックにはねじ込み式のトランスパレント仕様を採用し、ムーブメントの動きを直接楽しむことができる。ローターにはカシオのロゴが配され、過度な装飾は控えながらも「機械式への真摯な姿勢」が表現されている。

 ステンレススティール製モデルのケースにはヘアラインとポリッシュを組み合わせて表面が仕上げられている。この価格帯でありながら光の表情に奥行きが与えられているのだ。

 唯一の注意点として、ラグの角度が細身の手首ではやや張り出して見える場合があるが、標準的な手首サイズであれば問題にならないレベルだ。

カシオ流「機械式」の回答

 搭載されるムーブメントは約40時間のパワーリザーブと毎秒6振動の安定したビートを持つ。公表されている日差は−35秒~+45秒と広めに見えるが、このムーブメントはすでに他ブランドで実績のある汎用ムーブメントであり、適切に調整された個体であれば日常使用において十分な信頼性を発揮する。

 傷に強いサファイアクリスタル製風貌、10気圧防水、ねじ込み式ケースバックと堅牢な構造。これらは「日常で使い倒せる機械式」というカシオの明確な哲学を示していると言えるだろう。

静かな革命としてのエディフィス オートマチック

裏蓋はトランスパレント仕様。搭載されたムーブメントの動きを存分に楽しむことができる。ローターに施された「EDIFICE」、そして「CASIO」の刻印が見て取れるだろう。

 エディフィス オートマチックは、カシオが機械式時計の世界に初めて放った一作という枠に収まらない。これは、同社が持つテクノロジーと量産技術、そして現代ユーザーのリアルなニーズを再解釈し、「誰もが手に取れる現実的な価格で、機械式の魅力を正面から体験できる腕時計」を具現化したモデルである。

 派手な主張をする腕時計ではない。しかし、その静かなたたずまいの中に、カシオが目指す次の時代の時計像が息づいている。エディフィス オートマチックは、同社が機械式時計とどのように向き合っていくのか、その未来を照らす重要な第一歩なのだ。


Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


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