日本に根差す職人技と最新のテクノロジーを融合し、G-SHOCKの中でもとりわけ独創的かつ高品質なモデルを送り出している「MR-G」。そのエッセンスを凝縮した限定モデルが堂々登場した。古来の兜や鎧を彩った武骨なカラーと、本邦を代表する名工が手掛けた彫り込みベゼルが最大のポイント。強く気高く美しく。現代を生き抜く“サムライ”の護符として申し分のないスペックを備える、最強腕時計である。

Photographs by Yu Mitamura
長谷川剛:文
Text by Tsuyoshi Hasegawa
加瀬友重:編集
Edited by Tomoshige Kase
[2025年11月19日公開記事]
「鐵(くろがね)」と呼ばれた古色の来歴
G-SHOCKの最高級ラインとして素材、構造、仕上げのすべてにおいて極限を追求し、日本のもの作りの精神を込めて開発されるMR-G。2025年5月には、古来の武具に使われていた鉄の色味からインスパイアされた「鐵色(くろがねいろ)」モデルが打ち出され、世界的な話題となった。
そのさらなる強化モデルとして、11月にリリースされた新作がこの「MRG-B2000KT 鐵鐔(くろがねつば)」だ。“鐵シリーズ”の頂点となる作り込みと完成度を誇る、世界に800本の限定ピースである。

吉兆を表わす瑞鳥(ずいちょう)として尊ばれる鳳凰を、日本を代表する彫金師・小林正雄氏がベゼルに彫り込んだ限定モデル。MR-Gらしくハイグレードな素材使いに加え、優れた機能と耐衝撃構造を備える。タフソーラー。フル充電時約26カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(縦54.7×横49.8mm、厚さ16.9mm)。20気圧防水。93万5000円(税込み)。
商品ページ:https://www.casio.com/jp/watches/gshock/product.MRG-B2000KT-3A/
鐵色とは、伝統的な甲冑などの武具に用いる鉄への焼き入れで表れる、深く濃い青緑色を指す。そして今回の新作では、武士のアティテュードともいえる日本刀の鐔(つば)に着目した。
刀身と柄(つか)の間にある鐔は、柄を握る拳を守るガードであり、刀剣の重心を調節する金具でもある。本来実用的なパーツであるが、比較的平和な江戸期に入ると、多彩な装飾が凝らされるようになった。

鐔を含め、日本刀の外装部全般を「拵(こしらえ)」と呼ぶ。このMRG-B2000KT 鐵鐔は、かつて「拵」としての鐔に施された工芸的な意匠をベゼルに彫り込むという、離れ業を実現したと言えよう。

もちろんG-SHOCKゆえ、世界最高峰の耐衝撃構造、20気圧防水、Bluetooth®搭載、タフソーラー、標準電波受信など、現代のライフスタイルに対応する多機能スペックであることは言わずもがな。
そう、本作はいわば、今を生きるサムライのための特別仕立ての1本。では、美しく頼りがいのあるこの最強腕時計をつぶさに見ていこう。
吉兆を呼ぶ「鳳凰」がベゼルに舞う
最大の見どころはやはり、彫り込みを加えたチタンベゼルにある。
江戸時代の鐔には多様な意匠が施され、そのすべてが唯一無二の一点もの。とりわけ鳳凰や龍、松といった縁起の良いモチーフが人気を博したという。
本作では、伊勢神宮の社殿や神宝(じんぽう)の刷新時に彫金師として腕を奮った小林正雄氏が、鳳凰の絵柄作りと彫金を手掛けている。

「細いベゼルの中に、鳳凰の特徴をいかに入れ込むかが苦労した点です」という小林氏。鳳凰ならではの鶏冠(とさか)や肉髭(にくひげ)、嘴(くちばし)が見事に彫り込まれているのは、名工なればこその仕事である。

立体感際立つ肉合彫り(ししあいぼり)の技法で緻密に彫り込まれたベゼルは、工芸品のごとき景色をもたらす。そして彫り込みの後に深層硬化処理、グリーンDLC(ダイヤモンドライクカーボン)加工を施し、古来の甲冑にも似た、不敵で、他に類を見ない「鐵色ベゼル」が完成するのである。
本作のベゼル800個の彫刻は、一点一点、すべて小林氏が手掛けたものである。過去に製作した龍や虎に比べ、非常に手間がかかったという。そのクラフツマンシップが凝縮されたベゼルの迫力たるや。まさに、唯一無二の存在感を放っている。
その鳳凰の彫り込みを引き立てるように、本作には随所に縁起の良いデザインがちりばめられている。
文字盤も一般的な筋彫りやサンレイではなく、矢羽根紋様を装飾とする。破魔矢と同様に邪気を払う意味を持つモチーフであり、「的を射る」といった意味も併せ持つ。

“現代の刀剣”を意識するこの鐵鐔モデルは、ケースにおいても非凡だ。刀身に見られる波形紋様「沸(にえ)」を模した加工に加え、かつての刀剣における「拵」に多用された銅色使いも、タフな印象を高める要因となっている。
そしてタフネスと同時に華やかさを感じさせるディテールも。

ベゼルを留める4本のビスには英知の象徴であるエメラルド(人工)があしらわれている。このエメラルドには「真実を見抜くお守り」としての意味も込められているのだ。
“G”特有のタフネスと現代的な高機能を完備
日本の伝統的な工芸美を随所に盛り込んだMRG-B2000KT 鐵鐔。もちろんG-SHOCKの血を引くモデルゆえ、タフネスと実用機能の追求に関しても抜かりはない。
ムーブメントを中空で支える独自の免震構造はもちろん、本作では軽量なカーボンを、大型の時分針にも採用する。

落下に際し、重量ある針では衝撃を受け止めきれない場合がある。しかし軽量なカーボン針であれば、衝撃の影響も限定的なのである。大ぶりなため、視認性も確保している。
また、操作系を守るG-SHOCKならではの「クラッドガード構造」もポイントである。落下などでリュウズやボタンに衝撃が加わると、直結するモジュールにそのダメージが伝わってしまう。
そこでリュウズやボタンの軸に耐衝撃パーツを組み込み、ガードとパーツを一体化。さらにリュウズユニットには「αゲル®」を内蔵するなど、より効率的な衝撃の緩和がなされた。リュウズガードを持たないため、結果として優れた操作性も実現している。

※αゲル®は、日本および他の国々におけるタイカの登録商標。
前述の通り、現代生活に必要不可欠な機能を完備している点にも言及しておきたい。
ムーブメントはBluetooth®搭載の電波ソーラー。スマートフォンと接続することで時刻を自動修正してくれる優れものだ。
高トルクのデュアルコイルモーターを搭載し、時・分・ワールドタイム針の高速調整が可能に。ストップウォッチなどもスムーズに連動させることができる。

高輝度のLEDを採用したスーパーイルミネーターは、暗所での時刻確認に威力を発揮。蓄光処理の時分針と相まって、高い視認性を実現している。
現代の刀、現代の護符たり得る存在
練り上げられたコンセプト、それを具現化する素材と技術、そして時計としての優れた機能。本作「MRG-B2000KT 鐵鐔(くろがねつば)」から漂うのは、今作り得る最強のMR-Gを追求せんとする気概である。
そして繰り返しとなるが、本作の剛健なチタンベゼルは、現代の名工により鐔のごとき装飾が手彫り込まれている。加えて銅色のケースには日本刀の「沸」にインスピレーションを得た処理が施されている。
いわば本作「MRG-B2000KT 鐵鐔」は、現代の日本刀なのである。
翻って21世紀の今、刀に置き替えられるアイテムとは何か。もちろん候補はひとつじゃない。しかしながら、腕時計はその最たるものではないだろうか。タフで美丈夫なMRG-B2000KT 鐵鐔を身に着けることで、自信を持って日々を戦える。現代のサムライをあらゆる難敵から守ってくれる、護符たりえる存在なのだ。
G-SHOCK「MRG-B2000KT 鐵鐔」商品ページ
https://www.casio.com/jp/watches/gshock/product.MRG-B2000KT-3A/



