ザ・シチズンの未来を担う、シンプルだが高精度な「Cal.0200」【傑作ムーブメント列伝】

2025.12.03

ハカセこと時計専門誌『クロノス日本版』編集長の広田雅将が、傑作ムーブメントについて2024年に記したコラムを5回分、webChronosに掲載する。第2回は、クォーツを作り続けてきたシチズンが2021年に打ち出した、機械式ムーブメント「Cal.0200」を取り上げる。

グランドセイコーが〝感触〟を追求した手巻き「Cal.9SA4」【傑作ムーブメント列伝】

FEATURES

Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
[ムーブメントブック2024 掲載記事]


シチズンの高級機を支える機械式ムーブメント

Cal.0200

極めてオーソドックスな構成を持つムーブメント。片方向巻き上げ自動巻きに、シンプルなスモールセコンド輪列、そしてフリースプラングテンプを採用する。また、ラ・ジュー・ペレによる地板や受けの仕上げはこの価格帯随一だ。直径29.1mm、厚さ5.0mm。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。

 1995年以降、一貫してクォーツと光発電エコ・ドライブムーブメントを搭載してきたザ・シチズン。同社がこれらの技術に長けていることを考えれば当然だが、使える自動巻きがミヨタの8200系しかなかったことを考えれば、やむを得ない選択だったとも言える。

 対してシチズンは、2009年に新しい自動巻きのミヨタ9000系をリリースした。これは安価な8200系とは異なり、ETA2892A2の代替機となるようなスペックを備える高級機だった。パワーリザーブは8200系に同じ約42時間だが、振動数が2万8800振動/時に上げられたほか、地板や受け、歯車などの仕上げも改善された。この優れた自動巻きから生まれたのは、2010年の「ザ・シチズン メカニカル」である。これは9000系の仕上げをさらに改良し、高級機に仕立て直したものだったが、ヒット作とはならなかった。

 シチズンの機械式への取り組みが加速したのは、2012年以降のこと。この年にはムーブメントメーカーのラ・ジュー・ペレ、そして完成品メーカーのアーノルド&サンなどを擁するプロサーホールディングを買収。翌年には時計本体の製造関連部門を一本化し、時計製造を担う「シチズン時計マニュファクチャリング」を設立した。スイスとの協業、そしてマニュファクチュールとしての進化は、2021年のCal.0200に結実した。

メカニカルモデル Caliber 0200

セラミックベゼルをあしらった「メカニカルモデル Caliber 0200」の限定版。モダンさを強調すべく、ストラップには姫路黒桟革が採用されている。直径は40mmだが、全長が短いため取り回しは快適だ。また、外装に注力するシチズンらしく、ケースのエッジも立っている。メーカー在庫完売。

 ムーブメントの設計と基本的な部品の製造はシチズン、そして地板と受けは、ラ・ジュー・ペレによるものだ。シチズンはその理由を「ラ・ジュー・ペレが培ってきた仕上げのノウハウを活かしたかったため」と説明する。その一方で、シチズンはCal.0200の設計を物堅く留めた。自動巻きはミヨタで採用する片方向巻き上げ。結果としてこのシンプルな自動巻きは、デスクワークでも十分巻き上がるだけの高い巻き上げ効率をもたらした。また輪列の配置も、あえて中心に4番車を持たないシンプルなスモールセコンド輪列だ。

 もっとも、完成度が高い故にCal.0200には高い拡張性を期待できなかった。しかしシチズンは、文字盤側の設計をやり直した日付表示付きのCal.0210をリリース。このムーブメントは今後間違いなく、シチズンの高級機を支える基幹キャリバーになっていくだろう。


【4K動画】高級機械式時計へのカムバックを果たした注目の新型自動巻き/シチズン「ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200」

FEATURES

ザ・シチズン Part.1

ザ・シチズンの機械式時計について知ろう。高精度ムーブメントと最新モデルを解説

FEATURES