チューダーの代表的なコレクションである「ブラックベイ」。さまざまなサイズや機能、意匠を備えたモデルがそろっており、どれが良いか迷ってしまうことも少なくないだろう。そこで本記事では、ブラックベイにはどのような種類があるのかを解説。それぞれの違いを知ることで、自身に合った1本を見つけやすくなるだろう。

チューダー「ブラックベイ」の種類
チューダーは2012年、ダイバーズウォッチ「ブラックベイ」をリリースした。しかしチューダーのこのジャンルの歴史は、1954年の「オイスター プリンス サブマリーナー」までさかのぼる。サブマリーナー自体は1999年に生産終了となるものの、歴代モデルに採用されてきた意匠──1970年代から見られる“スノーフレーク針”やリベットブレスレット等──がブラックベイには盛り込まれることで、ヴィンテージのテイストが感じられる、しかし機能は現代的なダイバーズウォッチとして、高い人気を得ていくようになった。
誕生当初はベーシックな3針モデルのみであったものの、人気の高まりに比例するかのように、さまざまなバリエーションが展開されたことで、多彩なユーザーにリーチしていく。一方でその種類が多岐にわたったことから、どのモデルがどのようなコンセプトの下に生まれ、どんなサイズのどんな機能のモデルなのかを、一見で答えられるユーザーは、そう多くはないだろう。そこで、ブラックベイの種類をまとめてみた。
ブラックベイ|シリーズの原点となるクラシックダイバー

自動巻き(Cal.MT5602-U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。200m防水。64万3500円(税込み)。
「ブラックベイ」は、直径41mmのステンレススティール製ケースを採用した、シリーズの中心的存在だ。2012年のリリース、そして2016年の刷新を経ても基本スタイルを大きく変えておらず、そのためこのデザインを見て「チューダーのブラックベイ」と認識できる、アイコン的存在となっている。また、200m防水と逆回転防止ベゼルを備え、ダイバーズウォッチとして必要な基本構造を満たしている。文字盤には大ぶりのインデックスとスノーフレーク針が配され、どんなシーンでも視認性を確保するとともに、アイコンの確立にも寄与している。ドーム型サファイアクリスタルがまた、レトロな雰囲気だ。
外観は伝統を踏襲しているとはいえ、性能については常に進化を続けている。とりわけ2023年以降、マスター クロノメーター認定を取得した自動巻ムーブメントCal.MT5602-Uが採用されており、1万5000ガウスの耐磁性能をはじめとした、極めて高いスペックを実現している。もっとも、2016年以来採用されてきた、ケニッシ製ムーブメントのCal.MT5602搭載モデルも併売されており、こちらもCOSC認定の高い精度を有した、高性能ダイバーズウォッチである。

自動巻き(Cal.MT5602-U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。69万800円(税込み)。
ブレスレットはメタルの3連、5連、あるいはラバー、レザー、ファブリックストラップから選択できる。なお、マスター クロノメーター認定モデルには、工具なしで微調整がユーザー自身で行える“T-fit”クイックアジャストクラスプが搭載されている。
ムーブメントやディテールの違いはあれど、ブラックベイにラインナップされるモデルは、そのすべてがチューダーを代表するアイコニックな意匠と優れた性能を有しており、同ブランドの基準のような存在とも言えるだろう。
ブラックベイ 54|初代チューダーダイバーを再現した直径37mmモデル

自動巻き(Cal.MT5400)。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径37mm、厚さ11.2mm)。200m防水。59万5100円(税込み)。
「ブラックベイ 54」は、1954年に登場した初期のチューダーダイバー、「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」Ref.7922の意匠を踏襲した、直径37mmケースのモデルだ。シリーズの中で最も小径ケースに分類され、かつ厚みも抑えられることでクラシックな印象を強めている。リュウズガードを取り払ったケースやベゼルのスケール、そしてゴールドカラーをあしらった針とインデックス、ミニッツサークルなど、歴史的モデルの特徴を現代的な製造技術で再構成した点が特徴だ。
ムーブメントには自動巻のCal.MT5400を搭載。また、前述したブラックベイ同様、200m防水や逆回転防止ベゼルといったダイバーズウォッチとして必要なディテールを備えており、実用面にも配慮された仕様だ。文字盤は大ぶりのインデックスとスノーフレーク針を組み合わせ、読み取りやすさを保ちながら初代機の雰囲気が反映されている。

自動巻き(Cal.MT5400)。27石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径37mm、厚さ11.2mm)。200m防水。56万4300円(税込み)。
ブレスレットは3連リベットブレスレットとラバーストラップの2種類が用意されており、いずれも“T-fit”クイックアジャストクラスプを搭載。装着感を細かく調整できるため、日常使用でも扱いやすい。37mm径というケースサイズは、手首回りの細いユーザーにも適している。ダイバーズウォッチと聞くと大ぶりのモデルをイメージするユーザーは、ぜひこのブラックベイ 54を試してみてほしい。
ブラックベイ 58|“ビッグクラウン”を現代に

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。67万4300円(税込み)。
「ブラックベイ 58」は2018年にラインナップされたシリーズで、1958年に同ブランドがリリースしたダイバーズウォッチ、「オイスター プリンス サブマリーナー」Ref.7924に敬意を払ったデザインを持つ。Ref.7924は8mmと、当時としては大ぶりのリュウズを有していたことから“ビッグクラウン”の愛称で親しまれていた。この当時のケースサイズである39mm径ケースや細みのラグ、ドーム型のサファイアクリスタルを踏襲することで、レトロ感を楽しめるダイバーズウォッチというポジションを獲得してきた。
コレクションの中で、バリエーションが多岐にわたっている点も魅力のひとつだ。今年リリースされたマスター クロノメーター認定のCal.MT5400-Uを搭載したバーガンディーカラーのモデルをはじめ、18Kイエローゴールドモデル、ブロンズモデル、シルバーモデル、あるいGMTモデルと、多彩な選択肢が用意されているのだ。

自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KYGケース(直径39mm、厚さ12.7mm)。200m防水。495万8800円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブロンズケース(直径39mm、厚さ11.9mm)。200m防水。ブティック限定モデル。73万8100円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。シルバーケース(直径39mm、厚さ12.7mm)。200m防水。70万6200円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5450-U)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。69万7400円(税込み)。
ブラックベイ 68|43mm径ケースのニューフェイス

自動巻き(Cal.MT5601-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。200m防水。各68万9700円(税込み)。
「ブラックベイ 68」は、2025年にリリースされた最新コレクションだ。スノーフレーク針が初めてチューダーウォッチに誕生した1968年をコレクション名に冠しており、さらに近年の小径化トレンドの中にあっては珍しく、ブラックベイ最大となる直径43mmケースを備えている。
ブルー文字盤とシルバー文字盤の2種類が同時リリースされており、日付表示を持たず、また、ブラックベイらしくヴィンテージ感がある一方で、サンレイ仕上げの文字盤がモダンでもあり、またリベット表現を省いたブレスレットが与えられていることから、従来モデルとはまた違った雰囲気だ。
ムーブメントは、いずれもマスター クロノメーター認定のCal.MT5601-Uを搭載。約70時間のパワーリザーブや200m防水と相まって、実用性は申し分ない。
43mmのケースは大ぶりであるものの、“T-fit”クイックアジャストクラスプの微調整機構や大きすぎない全長もあり、着用感は良好となっている。
ブラックベイブロンズ|経年変化を楽しめるブロンズケースモデル

自動巻き(Cal.MT5601)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブロンズケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。200m防水。68万2000円(税込み)。
「ブラックベイブロンズ」は、アルミニウムを含むブロンズ合金をケース素材に採用したモデルである。ブロンズは使用環境によって酸化の進行度合いが変化し、経年とともに独自の風合いを生む点が特徴だ。ケース径は43mmで、ブラックベイシリーズの中でも存在感の強いサイズ構成となる。文字盤とベゼルはブロンズケースと調和するスレートグレーの色調で統一され、大型インデックスとスノーフレーク針を備えたレイアウトとのバランスも絶妙だ。ブロンズを使ったモデルは、インデックスの3・6・9がアラビア数字となっているのも、特別感にあふれていて良い。
素材そのものの変化を外装全体で楽しめる点はブラックベイブロンズならではであり、シリーズの中でも個性が際立つモデルと位置付けられる。
ブラックベイ クロノ|人気のクロノグラフ搭載モデル

自動巻き(Cal.MT5813)。41石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。各84万8100円(税込み)。
「ブラックベイ クロノ」は、その名からも想像できるように、クロノグラフ機構を搭載したモデルだ。時間を計測できるクロノグラフ針やタキメータースケールをあしらったベゼルを有しており、ダイバーズウォッチの印象が強いブラックベイであるものの、レーシーな印象がもたらされている。なお、文字盤には3時位置に45分積算計、9時位置にスモールセコンドが配置されている。インデックスとスノーフレーク針の組み合わせは、ダイバーズとしての視認性とクロノグラフとしての機能性を両立させている。
ムーブメントには自動巻きのCal.MT5813を搭載。耐久性と安定した作動を重視した設計により、クロノグラフ操作時の安定性も確保されている。防水性能も200mとなっているため、さまざまなシーンでアクティブに使える1本となるだろう。

自動巻き(Cal.MT5813)。41石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。各86万4600円(税込み)。
ブレスレットは3連リベットブレスレット、5連ブレスレット、ブンド付きのレザーストラップ、ファブリックストラップが用意され、使用目的や好みに応じて選択できる。ブラックやホワイト、ブルーなどと、文字盤カラーを選べる点も魅力的である。
ブラックベイ GMT|複数タイムゾーンを表示できる実用モデル

自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.6mm)。200m防水。66万5500円(税込み)。
「ブラックベイ GMT」は、24時間表示の両方向回転ベゼルとGMT針を組み合わせることで、複数のタイムゾーンを読み取れる構成を持つモデルだ。赤青の2色で構成された24時間ベゼルは昼夜の判別を容易にし、GMT針と合わせて使用することで、2〜3つの時刻を同時に確認できる。タイムゾーンをまたいでの移動の多いユーザーや複数の時間を確認する環境で、実用性を発揮してくれる。なお、前述したブラックベイ 58にもGMT搭載モデルはラインナップされているが、ブラックベイ GMTはケース直径41mmとなっており、また、外装フォルムもオーソドックスなブラックベイのそれとなっている。
ムーブメントはCal.MT5652を搭載しており、時針を単独稼働させることができるタイプとなっている。
ブレスレットは3連ブレスレット、5連ブレスレット、ファブリックストラップの選択肢が用意され、外装の印象を用途に応じて調整できる。ステンレススティール製またはステンレススティールに18Kイエローゴールドを組み合わせたコンビカラーのモデルがラインナップされており、後者は手元に華やかな印象をもたらすことができるだろう。
ブラックベイ ワン|シンプルでオールマイティーに使える1本

自動巻き(Cal.MT5601)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.2mm)。200m防水。62万7000円(税込み)。
「ブラックベイ ワン」は、これまで紹介してきたモデルと異なり、アウターベゼルを持たない、シンプルなブラックベイコレクションだ。このシンプルさは、あらゆるユーザーが、さまざまなシーンで使うことのできる汎用性につながっており、実際、ケースサイズが31mm、36mm、39mm、41mmと展開されていることからも、ターゲット層の広さがうかがえる。一方で5連タイプのブレスレットがドレッシーで特徴的でもある。センターコマにポリッシュが施されていることから、手元でさりげなくきらめき、存在感を放ってくれることもポイントだ。
なお、現行モデルにはチューダーのマニュファクチュールムーブメントが搭載されているため、直径39mm、41mmケースのモデルはパワーリザーブ約70時間、直径31mm、36mmケースのモデルがパワーリザーブ約50時間と、実用的だ。

幅広いユーザーにマッチするため、男女問わず身に着けられる。パートナーとのペアウォッチやシェアウォッチとして検討するのもオススメだ。
ブラックベイ プロ|24時間表示を搭載した39mmツールウォッチ

自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ14.6mm)。200m防水。64万2400円(税込み)。
「ブラックベイ プロ」は、2022年にブラックベイに加わったコレクションだ。24時間スケールが直接印字された精悍な固定式ベゼルを備えており、また、兄弟ブランドであるロレックスの往年のツールウォッチを彷彿とさせる意匠で話題となった。時分針のほかにGMT針も備えているので、第2時間帯表示も可能となっている。
ムーブメントはブラックベイ GMTと同様に、Cal.MT5652を搭載。COSC認定の精度と約70時間のパワーリザーブを備えており、実用性にも優れている。

自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。200m防水。64万2400円(税込み)。
ストラップは3連リベットブレスレット(T-fit クイックアジャスト対応)、テキスタイルストラップ、レザーストラップの3種類が用意される。ブラックベイ プロでは5連ブレスレットやラバーストラップは、今のところは用意されていない。
39mmという扱いやすいサイズと、ツール感の強いGMTモデルとして、日常使用から旅行まで幅広い用途に対応する。
まとめ|自分に合うブラックベイを選ぶために
ブラックベイは、ケース径、外装素材、機能の違いによって多様な選択肢を備えている。それらを明確にすることで、自分に合うモデルを選びやすくなる。ぜひ、毎日の相棒となる1本を見つけてみてはいかがだろうか?



