ベル＆ロスが2025年に発表した限定モデルをまとめて紹介！

ベル＆ロスの歩みは、常に航空計器という原点への立ち返りと、そこからの大胆な飛躍の繰り返しだった。機能美という揺るぎない芯を据えながらも、彼らはダイバーズやGMT、さらにはトゥールビヨンに至るまで、その表現領域を驚くべきスピードで拡張し続けている。今回発表された新作群を俯瞰すると、そこには単なる「時刻を知る道具」を超えた、光や構造、ナビゲーション、そして機械そのものが宿す美学への深い洞察が透けて見える。

計器時計のDNAを軸に、発光・航法・都市・ハイエンドへ拡張するベル＆ロスの新作群

　ベル＆ロスは、航空計器という原点を大切にしながらも、ダイバーズやGMT、さらにはトゥールビヨンに至るまで、その表現を驚くべきスピードで広げてきた。今回の新作群を見渡すと、単なる「時刻を告げる道具」という実用性を超えて、光の捉え方や素材の構造、あるいは機械そのものの美しさを追求していることがよく分かる。発光表現を深めたダイバーズから、実用的な航法を再定義したGMT、都市的なBR-05、素材の限界に挑むBR-X3、そして最高峰のトゥールビヨンに至るまで、そのラインナップは多岐にわたるが、根底にあるのは「視認性と機能性を守りながら、いかに新しい時計の姿を提示できるか」という変わらぬ問いだ。計器時計のDNAを核に据えつつ、用途や技術レベルに応じて表現を明確に使い分けることで、同社は今やツールウォッチの枠を超え、複数の高度な価値観を併走させるブランドへと進化を遂げたといえる。

BR-05 クロノ パトルイユ・ド・フランス

　フランス航空宇宙軍のエリートアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」とベル＆ロス。この長きにわたるパートナーシップが結実したのが、世界500本限定の本作だ。シリーズ4作目となる今回は、これまでの武骨なミリタリー路線とは一線を画し、都会的なBR-05の文脈でチームの精神を再解釈するという、極めて知的なアプローチが採られた。

　目を引くのは、航空機や飛行服の色彩を投影した鮮やかなブルーのコントラストだ。サンレイ仕上げのライトブルー文字盤に、深いネイビーのフランジとサブダイアルが奥行きを与えている。さらにクロノグラフ秒針に目を向ければ、そこにはアルファジェットのシルエットが躍り、6時位置の記章が精鋭たちの誇りを象徴する。

　心臓部には約60時間のパワーリザーブを誇るCal.BR-CAL.326を搭載。10気圧防水という実用性を担保しつつも、この時計が目指したのは単なるプロ用の道具ではない。エリートパイロットたちが体現する高度な技術と規律、そして優雅さ。それらを日常の風景へと見事に落とし込んだ、名声にふさわしい1本だ。

BR-03 アストロ

　これまで「空」を見つめてきたベル＆ロスが、ついに「宇宙」へとその視線を向けた。世界999本限定で放たれた「BR-03 アストロ」は、航空計器のリアリズムを宇宙空間のロマンへと昇華させた野心的な試みだ。特筆すべきは、時・分・秒という概念を天体の運行として文字盤上に再構築した独創性にある。

　アベンチュリンが輝く文字盤の上で、秒を表示する小型衛星が地球を周回し、それが1分を刻むごとに「月」が分を、そして「火星」が時を静かに告げていく。サファイアクリスタルに刻まれた地球の立体感と相まって、文字盤全体がひとつの壮大な宇宙アニメーションのように機能する。

　外装には、宇宙の闇を思わせるマイクロブラスト仕上げのブラックセラミックを採用。41mm径という現代的なサイズ感に加え、100m防水という実用スペックを維持している点も心強い。単なるコンセプトウォッチに終わらず、想像力を掻き立てる物語を腕元に共存させる。まさにベル＆ロスのクリエイティビティが結晶した1本だ。

BR-03 スケルトン ブラック セラミック

　ベル＆ロスの象徴であるBR-03。2025年に「四角の中に丸」の誕生20周年を迎えるにあたり、彼らはこのアイコンの再定義に打って出た。その急先鋒が、スケルトンという高度な表現を真っ向から融合させたこのモデルだ。

　スモーク仕上げのサファイア文字盤がヴェールとなり、その奥に新開発のムーブメント、Cal.BR-CAL.328の鼓動がのぞく。力強いX字型のブリッジはベゼル四隅のビスと視覚的にリンクし、時計全体の構造美を際立たせている。ステルス機やコックピット計器を彷彿とさせるブラックの静謐な佇まいは、実にブランドらしい。

　もちろん、スケルトンゆえの視認性の懸念は無用だ。インデックスと針にはスーパールミノバX1が塗布され、いかなる条件下でも情報を瞬時に読み取れる。透明感という現代的な付加価値と、計器としてのストイックな機能主義。その両輪を高い次元で結実させた1本である。

BR-03 スケルトン グレー スティール

　新作のスケルトントリロジーにおいて、最も「時計としての色気」を感じさせるのが、このグレー スティールだろう。質実剛健なツールウォッチとしてのBR-03を、金属が持つ冷徹な輝きと彫刻的な造形美へと昇華させる試みが見て取れる。

　ポリッシュとサテンを精緻に使い分けたステンレススティールケースは、光の角度によって実に多彩な表情を描き出す。オープンワーク文字盤から露わになるCal.BR-CAL.328のメカニズムは、それ自体が装飾として機能し、どこかブルータリズム建築のような力強い美学を感じさせる。

　世界限定250本という数字が示す通り、これはBR-03の系譜においても特別な存在だ。プロフェッショナルな出自を隠しきれないまま、現代的なハイテクジュエリーとしての気品をまとう。そのギャップこそが、本作の真の魅力に他ならない。

BR-03 スケルトン ラム セラミック

　スケルトンという手法を用いながら、最も前衛的な視覚効果を狙ったのが、この「ラム セラミック」だ。日中、明所ではブラックセラミックが精悍さを主張するが、ひとたび暗闇に足を踏み入れれば、強烈な発光とともにアートピースのような姿へと変貌を遂げる。

　文字盤の縁に施されたスーパールミノバX1 C3が、ムーブメントのX字型構造をなぞるように鮮やかなグリーンの光を放つ。この発光はもはや「暗所での時刻確認」という実用を超え、造形そのものをデザインし直す装飾的な要素として機能している。

　計器時計の文法を守りつつ、SF映画のようなフューチャリスティックなビジュアルを追求する。BR-03という確固たるフォーマットが秘めていた、まだ見ぬ可能性を最も大胆に引き出した1本と言えるだろう。

BR-03 ダイバー ラム アウトライン

　BR-03 ダイバーに新たに加わったのは、発光のあり方を「点」や「面」ではなく「輪郭」へと絞り込んだ、極めて実験的な新作だ。インデックスや針を縁取るように配されたスーパールミノバが、まるで暗闇に浮かぶネオン管のような独自の表情を作り出している。

　マットブラックの文字盤上で、グリーンの輪郭を描くスーパールミノバX2が鮮烈に主張する。日中の視認性はもちろん、夜間や水中での判読性を確保しつつ、それがそのままブランドの視覚的シグネチャーとして機能する設計だ。秒針に至るまで蓄光が施され、機能主義が細部まで徹底されている。

　一方で、ダイバーズとしての出自は揺るぎない。ISO 6425準拠の300m防水を誇り、逆回転防止ベゼルを備えた堅牢なセラミックケースは、過酷な任務にも耐えうる。プロユースのスペックを担保しながら、発光という要素をデザインの主役に据えた、ベル＆ロスらしい哲学が宿る1本だ。

BR-03 クロノ ラファール・ソロ・ディスプレイ

　フランス空軍のエリートたちによる飛行展示プログラム「ラファール・ソロ・ディスプレイ」。その卓越したパフォーマンスを称え、パートナーシップの証しとして誕生したのがこの限定クロノグラフだ。戦闘機ラファールの凄みと洗練を、BR-03のプロダクトデザインへと見事に転換している。

　マイクロブラスト加工のブラックセラミックケースは、反射を抑え、過酷な環境下での信頼性を約束する。マットブラックの文字盤には、日付窓を囲む黄色の点線やオレンジのクロノグラフ針など、コックピット計器特有のコードが散りばめられ、ファンの心をくすぐる。

　搭載される自動巻きCal.BR-CAL.301は、一瞬の判断が機動を分けるパイロットたちの要求に応える精密さを備える。世界限定500本。この時計は単なる記念碑ではなく、航空の世界に深く根を張り、プロフェッショナルと共に歩むブランドの真摯な姿勢を体現している。

BR-X3 ナイトビジョン

　前衛を突き進む「BR-X3」コレクションの次なるステージ、それがこの「ナイトビジョン」だ。最新鋭機のヘッドアップディスプレイ（HUD）に着想を得た本作は、ブランドの核心である視認性を、もはやSFの世界に近い未来的な造形へと昇華させている。

　驚くべきは、ケースそのものが光を放つという独創的な外装表現だ。カーボンに蓄光素材を融合させた「LUM-CAMO」を上下プレートに採用し、暗所では時計の輪郭自体が浮かび上がる。ミドルケースのDLCチタンやラバーリングなど、異素材を重層的に組み合わせた構造美は圧巻の一言だ。

　文字盤はX字型を強調した3層のスケルトン仕様。そこにケニッシと共同開発したCOSC認定のマニュファクチュールムーブメントが収まる。約70時間のロングパワーリザーブを備え、航空計器の思想を最先端のテクノロジーで具現化した。まさに“夜間任務”を象徴する究極の計器だ。

BR-05 レッド ブラック セラミック

　ベル＆ロスが日本市場のためだけに用意した、極めて稀少な99本の限定モデル。まず目を奪われるのは、燃えるようなレッド文字盤と艶やかなブラックセラミックスが織りなす、強烈なまでのコントラストだ。都会的なBR-05という器が、ここまで熱量を持った表情を見せるとは誰が想像しただろうか。

　そもそも「レッド」はブランドにとって特別な意味を持つ。かつての「レッド・レーダー」で見せた革新的な色彩感覚を、今回は都会の風景に溶け込む洗練へと昇華させた。サンレイ仕上げの文字盤は光を捉え、ポリッシュとサテンを使い分けたケースの質感が、その赤をさらに際立たせる。

　あえて分目盛りを削ぎ落としたミニマルな文字盤構成が、素材と色の美しさをストレートに伝える。一体型のセラミックブレスレットが腕元に吸い付くような装着感をもたらし、アーバンウォッチとしての完成度を証明する。日本限定というステータス以上の価値を、その圧倒的な存在感で語る1本だ。

BR-03 GMT コンパス

　時計の原点である「ナビゲーション」という役割。そこに改めてスポットを当てたのが、この「BR-03 GMT コンパス」だ。GMT機能に方位計の思想を掛け合わせ、時刻だけでなく自らの進むべき「方向」を指し示す。現代の探検家たちの心を揺さぶる、実にベル＆ロスらしいツールといえる。

　昼夜を分かつツートーンの24時間回転ベゼルと、独立して動くGMT針。これに文字盤外周の方位計目盛りを組み合わせることで、太陽の位置を頼りにした簡易的なコンパスとしても機能する。理詰めの設計でありながら、どこか古の航海術のようなロマンを感じさせるのが面白い。

　42mm径のステンレススティールケースは100m防水を確保し、プロフェッショナルな使用にも十分応える。世界500本という限られた数のみが生み出された本作は、ブランドが長年培ってきた計器時計の思想を、旅と冒険という不変の文脈で表現した傑作だ。

BR-X3 トゥールビヨン マイクロローター

　ベル＆ロスがこれまでの文脈を鮮やかに踏み越え、オートオルロジュリーの極致へと到達した。世界わずか25本の「BR-X3 トゥールビヨン マイクロローター」は、ブランドが掲げる視認性や信頼性を礎にしながらも、ムーブメントそのものを舞台装置へと変えたマニフェスト的な1本だ。

　スティールとサファイアクリスタルを組み合わせた3層構造のスクエアケースは、かつてない透明性を獲得している。もはやケースとムーブメントは別個の存在ではなく、4本のスクリューで一体化されたひとつの構造体だ。時分表示をあえて2時位置にオフセットし、空間の主役をメカニズムへと譲り渡した潔い構成が、ベル＆ロスの美学を突きつける。

　厚さわずか9mmのケースに収められたCal.BR-CAL.389は、フライング・トゥールビヨンとマイクロローターを同一平面上に配置。5時30分位置で舞うトゥールビヨンが、時計全体をメカニカルな舞踏の場へと変える。ベル＆ロスの創造性と技術力の、まさに頂点に位置する存在と言えるだろう。

BR-05 グレー ミラー スティール

　素材としてのスティールを、物理的な堅牢性から解き放ち、刻々と変化する「光」そのものとして再定義した。この「BR-05 グレー ミラー スティール」が放つオーラは、従来のスポーツウォッチの枠を遥かに凌駕している。ミラーポリッシュとサテンを緻密に配置した外装は、さながら手首にまとう光の彫刻だ。

　圧巻は、インデックスやフランジに至るまで鏡面仕上げを徹底した文字盤である。金属の塊から削り出されたような抽象的な表情は、光の反射によって水銀のようにその姿を変えていく。あえてカレンダー表示を廃した決断も、この純度の高いミニマリズムを貫くための必然であったに違いない。

　2019年の誕生以来、都会的な計器時計として支持されてきたBR-05。本作はその完成されたフォーマットに、ジュエリーのような洗練と仕上げの力を吹き込んだ。ブティック限定250本。手にする者は、時計という形を借りた「光の断片」を所有することになるだろう。