権力の象徴やアクセサリー、貨幣、工業用途など、その特徴から人類史において重要な役割を果たしてきた金属、それがゴールドだ。その華やかな輝きを楽しむことのできる18Kイエローゴールドを用いた高級腕時計を5本厳選し、紹介する。

Text by Tsubasa Nojima
[2025年12月29日公開記事]
人々を魅了するゴールドの世界
いつの時代も人々が憧れを抱く金(ゴールド)。採掘量が限られているという稀少性に加え、優れた耐蝕性が長期にわたって華やかな輝きを保つことからも、ゴールドは時に富や権力の象徴として、人類史でも重要な役割を果たしてきた。
時計においても、ステータス性や加工のしやすさ、耐久性などの面から、早期より主に外装素材として用いられてきた歴史ある素材だ。ゴールドはそのままでは柔らかく、腕時計やアクセサリーに用いる際には18K合金とすることが一般的である。その際にどのような金属を混ぜ合わせるかによって、イエローゴールドやホワイトゴールド、ローズゴールドなど、多様な色彩を与えることが可能だ。
今回はその中から、最もベーシックで本来のゴールドに近い色味を持つ、18Kイエローゴールドを用いた現行モデル5本を選出して紹介する。昨今、市場価値の上昇を取り沙汰されることの多いゴールドだが、純粋な視点でその輝きに潜む甘美な世界に触れてみてはいかがだろうか。
ロレックス「オイスター パーペチュアル ディープシー」Ref.136668LB

18Kイエローゴールドの外装で仕上げた、プロフェッショナル仕様のダイバーズウォッチ。ブルーとゴールドの華やかなカラーリングが特徴だ。自動巻き(Cal.3235)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KYGケース(直径44mm)。3900m防水。
ロレックスの誇るハイスペックなダイバーズウォッチ、「オイスター パーペチュアル ディープシー」に加わったフルゴールドモデル。9時位置にヘリウムエスケープバルブを備えた飽和潜水用ダイバーズウォッチという位置付けを変えることなく、華やかな18Kイエローゴールドを組み合わせた本作は、2024年の発表当時、大きな話題となった。
ダイアルは、鮮やかなブルーラッカーによって仕上げられている。ドット、バー、トライアングルを組み合わせたインデックスは、ロレックスの多くのプロフェッショナルモデルが採用する意匠だ。インデックスと針には、長時間ブルーに発光する蓄光塗料、クロマライトが塗布されている。6時位置の“DEEPSEA”の表記は、パウダーイエローであしらわれ、デザイン上のアクセントとして貢献。セラクロム製ベゼルインサートと耐圧リングもブルーで統一され、ダイアルとの調和を図っている。
ステンレススティール製ケースのモデルでは、ヘアラインを基調とした外装が採用されていたが、18Kイエローゴールドケースの本作では、ブレスレットの中央のリンクをポリッシュ仕上げとすることで、華やかさを増している。ケースバックとヘリウムエスケープバルブはRLXチタン製だ。
オメガ「シーマスター アクアテラ 150M」Ref.522.53.38.20.03.001

東京2020 オリンピックを記念して発表された、18Kイエローゴールド製ケースの「アクアテラ」。ダイアルとケースバックには、大会のエンブレムがあしらわれている。自動巻き(Cal.8801)。35石。2万5500振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KYGケース(直径38mm、厚さ12.26mm)。15気圧防水。325万6000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
東京2020 オリンピックでオフィシャルタイムキーパーを務めたオメガが、大会を記念して発売した、「シーマスター アクアテラ 150M」の18Kイエローゴールドケースモデル。ブルーのセラミックス製ダイアルには、レーザー加工によって大会のエンブレムをモチーフとしたパターンが刻まれている。日付表示は6時位置に配され、シンメトリーなデザインが特徴だ。丸みを帯びたインデックスと針には蓄光塗料が塗布され、昼夜を問わず高い視認性を発揮する。時針はドーフィン型、分針はアロー型のアクアテラらしいアイコニックなデザインが与えられている。
ケースの直径は38mmと、男女問わず着用しやすいサイズ感だ。流麗なツイストラグを採用し、ポリッシュとヘアラインで磨き分けることで立体的に仕上がっている。ケースバックは、4つのネジによってミドルケースに固定されている。中央には大会エンブレムがあしらわれ、記念モデルならではの特別感を味わうことが可能だ。ベルトは、ブルーのアリゲーターレザー製。ゴールドケースに相応しい上品さを備えている。
ムーブメントは、自動巻きのCal.8801を搭載。コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを搭載し、マスター クロノメーター認定を取得した、優れた精度と耐磁性が魅力のムーブメントである。
ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」Ref.4200H/222J-B935

ヴァシュロン・コンスタンタンの名作、「222」の復刻モデル。基本的なデザインを踏襲しつつ、細部とムーブメントのアップデートが図られている。自動巻き(Cal.2455/2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KYGケース(直径37mm、厚さ7.95mm)。50m防水。1205万6000円(税込み)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
ヴァシュロン・コンスタンタンの「222」は、1977年に創業222周年を記念して発表されたスポーティなブレスレットウォッチだ。2022年には「ヒストリーク・222」として18Kイエローゴールドケースモデルが復刻され、2025年には続くステンレススティールモデルが発表された。
オリジナルの「Ref.44018」が持つ特徴を抑えつつ現代的にアレンジされたヒストリーク・222の18Kイエローゴールドケースモデルは、バーインデックス、バトン型の時分針を組み合わせたシンプルな2針のゴールドカラーダイアルを採用している。
222を象徴するのが、切れ込みの入ったベゼルだ。これはもともと、ミドルケースにベゼルをねじ込むために採用された機能的なデザインである。フラットなケースはなだらかにブレスレットへとつながり、ヘアライン仕上げで統一することで一体感を高めている。ブレスレットはしなやかに可動し、コマを繋ぐピンを隠すことで、見た目にもすっきりとした印象だ。ケースの隅に配されたマルタ十字は、ヴァシュロン・コンスタンタンを象徴する意匠である。
搭載するCal.2455/2は、毎時2万8800振動の自動巻きムーブメントだ。222のロゴを刻んだローターやコート・ド・ジュネーブを施したブリッジなど、ジュネーブ・シールの基準を満たす職人技をシースルーバックから鑑賞することができる。
チューダー「ブラックベイ 58 18K」 Ref.M79018V-0006

グリーンとゴールドの色合いを持つ、コンパクトなダイバーズウォッチ。18Kイエローゴールド製の外装は、ヘアライン仕上げによって落ち着いた風合いに仕上げられている。自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KYGケース(直径39mm、厚さ12.7mm)。200m防水。495万8800円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570
1958年に発表されたチューダーのダイバーズウォッチ、「オイスター プリンス サブマリーナー Ref.7924」に着想を得た「ブラックベイ 58」には、ステンレススティール、シルバー925、ブロンズなど、さまざまなケース素材のモデルが存在する。そのうちのひとつが、18Kイエローゴールドケースを採用した本作だ。
ノンデイト仕様のシンメトリーなダイアルは、ややくすんだヴィンテージ調のグリーン。ドット、バー、トライアングルを組み合わせた判読性に優れるインデックスと、チューダーを象徴するスノーフレーク型の時針が特徴だ。逆回転防止機構を搭載したベゼルには、グリーンのアルマイト加工を施したディスクが装着されている。
ケースとブレスレットは、どちらも18Kイエローゴールド製だが、華美な印象はない。大半をヘアライン仕上げとしているため光の反射が抑えられ、ブラックベイらしいクラシカルなデザインがそのまま生かされている。
ブレスレットには、ダブルロック式の堅牢なバックルが組み合わされている。バックルの内部には独自の微調整機構である“T-fit”アジャスティングシステムが搭載され、工具を使うことなくワンタッチで手首回りを調整することが可能だ。
ムーブメントは、ケニッシ社製のCal.MT5400を搭載。COSC公認クロノメーターの基準を満たす高精度や約70時間のパワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイによる優れた耐磁性など、高い実用性を誇る。
カルティエ「タンク アメリカン」Ref.WGTA0300

1988年に発表された「タンク アメリカン」の現行モデル。優雅な曲線を備えた縦長のケースが特徴だ。自動巻き。18KYGケース(縦44.4×横24.4mm、厚さ8.6mm)。日常生活防水。289万800円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
1919年に発売され、カルティエを代表するコレクションとして親しまれている「タンク」は、その長い歴史の中で数々の派生モデルを生み出してきた。1988年に登場した「タンク アメリカン」も、そのひとつだ。大きく湾曲し、丸みを付けたレクタンギュラーケースを特徴とするタンク アメリカンは、そのエレガントなデザインが好評を博し、現代に至るまでアップデートを重ねてきた。
その現行モデルである「Ref.WGTA0300」では、サテンブラッシュ仕上げのシルバーダイアルに象徴的なローマ数字インデックスとレイルウェイミニッツサークルを組み合わせ、ブルースティールのバトン型時分針によってアクセントを付けている。デイト表示や秒針の無いドレスウォッチらしい佇まいは、華やかなパーティシーンにもふさわしい。
18Kイエローゴールドケースには、カーブしたサファイアクリスタルとトップにサファイアをセットしたリュウズが組み合わされ、優雅な曲線を引き立てている。ネイビーブルーのストラップは、セミマットのアリゲーターレザー製。カルティエを象徴するDバックルが装着されており、腕への脱着を簡単に行うことが可能だ。
自動巻きムーブメントを搭載し、機械式ならではの操作を楽しむことができるのも魅力である。



