ブラックのセラミックケースに、ディープブルーの文字盤を備えた「ルミノール GMT チェラミカ」と、古くから船や潜水用具の素材として使われてきたブロンズのケースをまとう「ルミノール マリーナ ブロンゾ」。パネライのふたつの新作は、ルミノールのデザインが海洋素材の「モダン」と「クラシック」、そのどちらも巧みに昇華することを実証した会心の仕上がりだ。
[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]
パネライ「ルミノール」にふたつの限定モデルが登場

ブラック文字盤モデルに続いて投入された、直径40mmケースの「ルミノール GMTチェラミカ」。端正な造形のマットブラックケースにディープブルーの文字盤を合わせ、モダンな印象にまとめ上げた。文字盤上の「BiTempo」はイタリア語でデュアルタイムの意味。自動巻き(Cal.P.900/GMT)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックケース(直径40mm、厚さ13.45mm)。30気圧防水。オンラインブティック限定80本。234万3000円(税込み)。
パネライの「ルミノール」に、素材と色使いによって既存作に新たな表情を与えた限定モデルが登場した。
ひとつは、「ルミノール GMT チェラミカ」のオンラインブティック限定の新作だ。通常モデルはブラック文字盤を備えているが、この新作はディープブルーの文字盤を採用している。ケースのブラックとディープブルーのコントラストが印象的で、モダンな趣が強い。長年イタリア海軍と密接な関係を築いてきた歴史を知る人ならば、サンブラッシュ仕上げのディープブルー文字盤に、深海のイメージを重ねるかもしれない。インデックスと針に高輝度なスーパールミノバX2を塗布したことで、暗い水中でも抜群の視認性を実現している。

パネライは2007年に「ラジオミール ブラックシール チェラミカ」を発表して以来、堅牢で審美性に優れたセラミックスを重要な素材と位置付けてきた。高温や腐食、傷に対して優れた耐性を備えるほか、軽量で快適な着用感という面でもラグジュアリーなツールウォッチにふさわしいからだろう。しかし、セラミックスは加工が難しく、複雑な構造を持つルミノールのケースを、コンパクトな直径40mmで実現するに至るまでに、技術的困難を極めたことは想像に難くない。
ディープブルー文字盤を備えた本作は、わずか80本での展開だ。絶妙なサイズ感とGMTという実用機能を備えることから、直径40mmのセラミックモデルに魅力を感じるパネリスティで、特別な1本を求めるなら本作は最適だ。

伝統のデザインはそのままに、防水性能を50気圧まで高めるなど進化した新しい「ルミノール マリーナ」。ステンレススティールとチタンケースモデルの成功を受け、ルミノール マリーナ初のブロンズケースモデルが登場した。マットなダークブルーの文字盤やベージュのスーパールミノバX2もヴィンテージ感を高める。ブルーのラバーストラップが付属。自動巻き(Cal.P.980)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブロンズケース(直径44mm、厚さ13.7mm)。50気圧防水。251万9000円(税込み)。
もうひとつは、ブティック限定の「ルミノール マリーナ ブロンゾ」である。このモデルは25年に大幅アップデートを行った「ルミノール マリーナ」のブロンズ版だ。ルミノール マリーナは象徴的なケースフォルム、レバーロック式リュウズプロテクター、太いラグ、ペンシル型の時分針、サンドイッチ文字盤といったデザインコードを踏襲しつつ、ムーブメントを新型のキャリバーP.980に刷新し、ケースを薄くすることで装着感を向上させた。サファイアクリスタルのシースルーバックを復活させつつ、50気圧まで防水性能を高めた点が魅力である。
ブロンズは高い耐久性と耐海水性により、古くから船舶や潜水用具に用いられてきた素材だ。パネライは自らの歴史とリンクし、時計界でいち早くブロンズに着目。11年の「ルミノール サブマーシブル 1950 3デイズ オートマティックブロンゾ-47MM」の発表以来、さまざまなモデルでブロンズを使用してきた。しかしルミノール マリーナに採用するのは、意外にも今回が初。ブランドの象徴とも言えるルミノール マリーナが、海の世界を投影する素材をまとう日を待望していた人は相当に多いだろう。

実機の仕上がりは素晴らしい。パネライのブロンズは、一般的な時計製造用のブロンズ合金とは異なり、純銅と純錫を使用した組成を持つ。その結果、独特な古色を帯びた金色となっており、それがルミノール マリーナの完成されたデザインに、一層のヴィンテージな風格を与えているのだ。ブロンズは使うほど雰囲気ある色合いに変化し、やがて緑青も吹く。なお、緑青は素材を守る保護層となる役目を担う。年を重ねるとともに渋く、たくましく育っていく、まさに人生の相棒にふさわしいツールウォッチだ。
セラミックスとブロンズ、どちらもその高い耐久性から海で実際に用いられてきた素材である。その「モダン」と「クラシック」な素材を見事に昇華させた、いずれも会心の腕時計だ。



