ロンジンが、往年のドレスウォッチのような趣きのあるモノプッシャークロノグラフモデル「ロンジン マスターコレクション クロノ モノプッシャー」を発表した。本作は、1913年の腕時計用クロノグラフムーブメントCal.13.33Zをはじめとした、長きにわたるロンジンのクロノグラフの系譜を引くモデルであり、アラビア数字インデックスや3時と9時のサブダイアルに、その特徴が見られる。ロンジンの新作の中でも、文字盤の完成度が傑出して素晴らしく、注目すべきモデルとして、本作を詳しく解説してゆこう。

手巻き(Cal.L799.5)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.60mm)。3気圧防水。56万2100円(税込み)。
Text by Shin-ichi Sato
[2026年9月19日公開記事]
ロンジンのモノプッシャークロノグラフの歴史を継承する新作が登場
今回注目するのは、歴史的な名作を現代の技術力と美意識によって、巧みに再解釈した腕時計を生み出してきたロンジンが放つ、新作の「ロンジン マスターコレクション クロノ モノプッシャー」である。本作はモデル名の通り、ひとつの(モノ)プッシャーによって制御するクロノグラフである。本作のプッシャーはリュウズと一体化した構造となっており、ケースサイドのシンプルなアウトラインと、クラシカルな文字盤デザインの組み合わせにより、シックでエレガントな仕立てとなっている。
ではなぜ、リュウズ部にプッシャーを配置するのか? それは、20世紀初頭の懐中時計型クロノグラフでは、リュウズにプッシャーを配置する構造が主流であり、初期の腕時計型クロノグラフでもその構造が採用されていた歴史を反映しているためだ。ロンジンは、まさに20世紀初頭から懐中時計型のクロノグラフを製造し、1911年には、腕時計用として設計されたモノプッシャークロノグラフムーブメントを発表。腕時計用としてさらに技術を発展させ、1913年には世界初の小型クロノグラフムーブメントとされるCal.13.33Zを完成させている。そして、Cal.13.33Zもまた、モノプッシャー型であったのだ。

そのため、ロンジン マスターコレクション クロノ モノプッシャーは、クロノグラフの技術史と、ロンジンの名作からの系譜を引くモデルと言えるもので、「ロンジン マスターコレクション」として初めてとなるモノプッシャークロノグラフとして企画されている。
ヘリテージのデザインコードを継承する文字盤
本作が属するロンジン マスターコレクションは2026年に刷新されており、ロンジンのウォッチメイキングの真髄を凝縮することがコンセプトに置かれ、数々のヘリテージのデザインコードを継承している。その代表的な要素のひとつが、1928年発表の「ロンジン ウィームス セコンド セッティング ウォッチ」に着想を得たアラビア数字インデックスである。
ロンジン マスターコレクション クロノ モノプッシャーは、これまでのロンジンのヘリテージを継承する、アラビア数字インデックスを持つクラシカルでドレッシーなモノプッシャークロノグラフとなった。本記事で取り上げるRef.L2.960.4.78.2は、中央部に細かな幾何学模様を重ねたバーリーコーン仕上げのシルバーオパーリン文字盤を持つモデルである。センターにリーフ型の時分針と、クロノグラフ秒針を配し、3時位置には30分積算計、9時位置にスモールセコンドを組み合わせている。文字盤外周に配置されているのはパルスメーターで、30回脈を打つまでの時間を計測することで、心拍数を算出するものだ。電子式心拍計が普及する以前は医療分野でのニーズが高く、往年のクロノグラフでの採用事例が多かった仕様となる。このように、本作はクラシカルなディテールを多く持つデザインであるが、特定モデルの復刻ではなく、ヘリテージのデザインコードを継承するオリジナルモデルとして企画されている。
表情豊かで立体感のある文字盤に大注目
注目は文字盤の立体感だ。バーリーコーン仕上げによって規則的な陰影が生まれ、フラットな仕上げのサブダイアルやパルスメーター部よりも少しダークに見える。光の角度が変わると陰影も変化し、表情豊かな仕上がりである。

ここに、ローズゴールドカラーでアプライドインデックスが載せられる。繊細で柔らかな曲線を有するアラビア数字は精彩に造形されており、その仕上げ品質も高い点は、本作の重要な見どころである。
ケースは全面がポリッシュ仕上げとなる。近年は、ケースの天面と側面で仕上げを分け、そのコントラストによって立体感を際立たせるアプローチが多い。それに対して、本作のポリッシュ仕上げのケースは往年のドレスウォッチのような趣きがあり、文字盤デザインとマッチしている。面白いのはベゼルの面を再構成して、凹型とした点で、すっきりとコンパクトな印象を有している。また、凸となっているケースサイドでは像が広がって反射するのに対してベゼルでは像が引き締まり、見え方に変化が生まれている。仕上げではなく、形状でコントラストを生むアプローチと言えそうだ。

なお、シルバーオパーリン文字盤モデルのほか、フロステッドブルー文字盤にロジウムカラーの針やインデックスを組み合わせたモデルも用意される。淡く、クールな色調が特徴であり、ヴィンテージテイストを備えながらモダンな印象もある点が魅力だ。

手巻き(Cal.L799.5)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SSケース(直径41.00mm、厚さ12.60mm)。3気圧防水。56万2100円(税込み)。
コラムホイールを採用した手巻きクロノグラフムーブメントCal.L799.5を搭載
搭載されるのは、ロンジン専用の手巻き式クロノグラフムーブメントのCal.L799.5である。プッシャーの良好な操作感を提供する伝統的な機構であるコラムホイールを採用しており、このコラムホイールによってクロノグラフ機構の稼働、停止、リセットを制御する様子をケースバックから観賞することができる。また、シリコン製ヒゲゼンマイを採用しており、パワーリザーブも約68時間と現代的な性能を持つ。

総合力の高いロンジン マスターコレクション クロノ モノプッシャーに注目
ここまでで述べたように、本作は、クロノグラフの技術史とロンジンの名作からの系譜を引くモデルとして企画されている。特定モデルの復刻ではないにもかかわらず、過去に実在していてもおかしくないようなクラシカルな趣きがありつつ、バーリーコーン仕上げやアプライドインデックスの完成度の高さなどの独自の魅力を打ち出している。この点は、ロンジンのウォッチメイキングの手腕が発揮されていると言えるだろう。
搭載されるCal.L799.5が手巻き式であり、往年のクロノグラフモデルを所有するかのような、「手で主ゼンマイを巻き上げてから着用するルーティーン」も楽しめることだろう。パワーリザーブが約68時間であるため、日常使用にも安心感がある。
ロンジン マスターコレクション クロノ モノプッシャーは、コンセプト、デザイン、実用性のいずれの観点でも魅力のある仕上がりとなっており、総合力の高い、要注目の1本である。



