VACHERON CONSTANTIN ETERNAL DESIGNS(ヴァシュロン・コンスタンタン 造形の花傳)

2018.02.23

2016年のフルモデルチェンジを経て、第3世代へと進化を遂げたオーヴァーシーズ。同社にしては珍しく、デザイナーの個性を前面に打ち出したコレクションでもある。原型の222をヨルグ・イゼック(1977年)、第1世代をディノ・モドーロとヴァンサン・カウフマン(96年)、第2世代をジャンピエロ・ボディーノと同じくカウフマン(2004年)が手掛けているが、“マニッシュさをやや抑制した”というこの第3世代には、10年からアーティスティック・ディレクターに就任したクリスチャン・セルモニの意向も色濃く反映されているのだろう。ベゼル下に設けたプレートをケースからはみ出させて、ラウンドモデルとしての存在感を強調しつつ、全体としてはソフィスティケートされた雰囲気に仕立てた手腕は見事。新規導入されたインターチェンジャブルストラップに合わせて一体化されたラグの造形も、“洗練されたオーヴァーシーズ”の印象を一層強めている。

Overseas

 スイスの時計業界に〝ウォッチデザイナー〟という職種が誕生するのは,ジェラルド・ジェンタが登場して以降である。1954年頃(公式資料では61年)からケースデザインを手掛け始めたジェンタだが、初期のクライアントは時計ブランドではなく、やはりケースメーカーが主体だった。69年に自社工房を立ち上げて以降はOEMも多く手掛けたが、そんなジェンタをしても、時計全体のデザインをトータルプロデュースする初の機会は、72年のオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」を待たねばならなかった。

(左)オーヴァーシーズ
Ref.4500V/110A-B128

2016年に刷新された3代目オーヴァーシーズの基幹モデル。鮮烈なブルーダイアルや、ブレスレットのリリース機構が魅力。
自動巻き(Cal.5100)。SS(直径41.0mm、厚さ11.0mm)。15気圧防水。SSブレスレット、アリゲーターレザーストラップ、ラバーストラップ、フォールディングバックル付属。232万円。
(右)オーヴァーシーズ・スモールサイズ
Ref.2300V/100A-B17

スモールサイズのオーヴァーシーズは、2017年にダイヤモンドレスのプレーンベゼルが追加されて、使い勝手が高まった。
自動巻き(Cal.5300)。SS(直径37.0mm、厚さ10.8mm)。15気圧防水。写真のSSブレスレットの他、アリゲーターレザーストラップ、ラバーストラップ、フォールディングバックルが付属。220万円。

 では何故、この時代になってようやく、スイスにウォッチデザインという概念が華開くことになったのか? 通説では安価な外国製クォーツ腕時計の台頭を受けて、スイスが異なる価値観を模索し始めたということになっている。しかしこれは、確実に後付けの理屈のように思えるし、そもそも事実関係が時系列にそぐわない。また、登場初期のクォーツ腕時計は非常に高価なプロダクトであったし、実際の市場投入時期こそ日本の後塵を拝したものの、スイスでもクォーツ腕時計の開発は積極的に行われていたのである。

Cal.5100

Cal.5100
2016年初出。ツインバレルを備えたCal.5000系の基礎となるベーシックムーブメント。クロノグラフのCal.5200と基本輪列を共有するため、インダイレクトセンターセコンドを採用。直径30.6mm、厚さ4.7mm。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。
Cal.5300

Cal.5300
2016年初出。Cal.5000系の基本輪列を用いながら、シングルバレルのスモールセコンド専用機にアレンジ。巻き真の延長線上に4番車を置くレピーヌスタイルは、現行機では極めて珍しい。直径22.6mm、厚さ4.0mm。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。