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銀座ブティック10周年で振り返る 〝決して立ち止まらない〟 男たちの夢の形(1/2)

A. LANGE & SÖHNE

A.ランゲ&ゾーネの銀座ブティック10周年を祝す記念イベントが、2月25日に同ブティックで開催された。
ブランド復興までの歩みと、同社が持つ独自の技術力についてドイツから駆けつけたギズベルト・L・ブルーナー氏が語った。

 A.ランゲ&ゾーネの銀座ブティック10周年を祝うトークイベントには、ブランド復興前から、当事者に近い立ち位置で同社に関わってきたギズベルト・L・ブルーナー氏が登場。本誌編集長の広田雅将を聞き役として、約2時間をほぼノンストップで解説し続けた。なお、銀座ブティックの内外装は10周年をフィーチャーした装いに変更され、A.ランゲ&ゾーネのアイコンであるアウトサイズデイトをかたどったオブジェも10の数字を指し示していた。
Photographs by Yu Mitamura
Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)

 「A.ランゲ&ゾーネの復興を語るうえで欠かせない人物、ギュンター・ブリュームラインについて、まずは話しましょう。1980年代、ジャガー・ルクルトとIWCの親会社、LMHで会長を務めていた人物です。彼は1989年、ベルリンの壁が崩壊するのを目の当たりにしてひとつのビジョンを得ました。かつてのドイツ時計ブランド、A.ランゲ&ゾーネを復興させようと。そして彼は、創業者の曽孫、ウォルター・ランゲにこの話を持ち掛けます。ウォルターはさぞかし喜んだことでしょう。自分の曽祖父がつくった家族企業を復活させることは、ウォルターにとっても長年の悲願でしたから。そして、ウォルターの同意を得た後、ブリュームラインはLMHの親会社であるマンネスマンのアルベルト・ケックに相談をします。A.ランゲ&ゾーネを復興させたいのだが、マンネスマンにその資金はあるだろうか、と。幸いなことに、ケックはマンネスマンで働く前は、時計師としての勉強をしていたため、この話に賛同してもらえました」

 見るのも稀少なヒゲゼンマイの製造工程を説明するブルーナー氏と本誌編集長。まず原材料を圧延機にかけて厚さ0.5mmのワイヤ状にしたのち、ダイスで引っ張り細長くする。これをヒゲゼンマイの形状にするため、さらに圧延機にかけて平らにし、1/1000mmの精度で、1/10mmほどの厚さにする。
 こうしてブランド復興へと動き出したふたりであったが、その道のりは決して楽ではなかったようだ。
「ブランド復興の地は、かつてA.ランゲ&ゾーネの社屋があった東ドイツ、グラスヒュッテでなくてはなりません。しかし戦後、グラスヒュッテのあった東ドイツは社会主義国家となってしまいました。社会主義は仕事の内容にかかわらず、一定の給料をもらう仕組みであるため、コストや手間をかけないと作れないような品は当然生まれてきません。つまり〝高級〞という概念がなくなってしまっていたのです。そのため、いくら古の懐中時計時代の栄光があったとしても、旧東ドイツで働いていた時計師たちのノウハウだけでは、トゥールビヨンやクロノグラフを作ることは到底不可能でした。この状態からA.ランゲ&ゾーネが高級時計ブランドへと復活を遂げられたのは、やはりブリュームラインがIWCやジャガー・ルクルトという高級時計メーカーの経営者であったことが大きいでしょう。彼は、ブランドのアイコン的なモデルが必要であると考え、ランゲ1にオフセット文字盤を与えるなど、同社の経営は、高級時計とはどうあるべきかという彼の明確なビジョンにのっとって行われたため、今のA.ランゲ&ゾーネがあるのです」

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