本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る/『独自のブランディングで勝負するフォッシル』前編

FEATUREウェアラブルデバイスを語る
2018.08.08

フォッシル「Q CONTROL ブラックシリコン ジェネレーション3」
フォッシル銘柄で2017年に発売されたスマートウォッチ。ミスフィット譲りの活動量計と防水性能はもちろん、アクティビティトラッカー搭載機では主流となりつつある心拍モニターも搭載した。交換用のストラップが豊富にラインナップされている点に、腕時計にファッション性を持たせるブランディングを長年採ってきたフォッシルらしさを見いだせる。SS(直径45mm、厚さ14mm)。50m防水。4万3200円(税別)。㉄フォッシルジャパン℡03-5992-4611

長年培ってきたノウハウが可能にしたブランド戦略

 それでもフォッシルは、スマートウォッチの開発ペースを弛めようとはせず、経営幹部たちはいつかスマートウォッチがフォッシルを救うのだと主張してきた。ミスフィットのアクティビティトラッカーをアナログ指針の腕時計に埋め込んだハイブリッド型スマートウォッチ、Android Wear採用のスマートウォッチ(彼らは以前、これをディスプレイウォッチと呼んでいたが、現在はタッチスクリーンスマートウォッチと呼称している)の両面で開発を進めてきた。

 2017年のホリデーシーズンに向けて開発した「ジェネレーション 3」シリーズでは、心拍センサーを採り入れるなど、スポーツやヘルスケアといったジャンルに向けて新しい挑戦へ踏み出している。2018年の秋には、さらにハードウェアをアップデートした「ジェネレーション 4」が披露される見込みだ。

 同社が得意なライセンスブランドへの展開も初期段階から取り組んでおり、「ディーゼル」「マイケル・コース」「スカーゲン」「マーク ジェイコブス」「アルマーニ エクスチェンジ」「ケイト・スペード ニューヨーク」などのファッションブランドでスマートウォッチを発売している。

 同じムーブメントから、各ブランドのコンセプトに合わせた多様なデザインの腕時計へと展開する同社の優れたノウハウを、スマートウォッチというジャンルでも積極的に実行しているのだ。

 これは極めて難しい戦略である。

 基礎技術も生産技術も成熟した腕時計のムーブメントならばいざ知らず、常に最新のプラットフォームに更新しなければ能力面で置いていかれる可能性があるスマートウォッチ。多数のブランドに展開・流通させながら、毎年のようにプラットフォームを更新するには極めてきめ細かな在庫・流通管理が必要となろう。一般的な腕時計のムーブメントならば、その世代を気にする層はあまりいないだろうが、スマートウォッチは今まさに進化の過程にあり、一世代違えばバッテリー持続時間や動作パフォーマンスが大きく進歩すると考えられる。

 進化する技術トレンドに合わせて、スマートウォッチとしての魅力を保ちながら、多様な好みに合わせてブランドやラインナップが複数求められるファッションアイテムとしての性質を備える。これを流通も含めてコントロールすることは至難の業だろう。

 それでも、そこに活路を見いだすべきというのがフォッシルの結論である。そこれそが、彼らが腕時計というジャンル、ファッションアイテムの業界で生き残ってきた理由だからだ。