ジェームズ・ディーンが下積み時代から愛用する懐中時計

LIFEセレブウォッチ・ハンティング
2020.11.02

一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか? 世界のセレブたちのプライベートなワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は伝説のハリウッドスター、ジェームズ・ディーンが愛した時計を紹介する。

ジェームズ・ディーン


 1931年にアメリカ合衆国で生まれたジェームス・ディーン。若くして俳優として頭角を現し、1955年に初主演を務めた『エデンの東』でアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされる。それ以降も『理由なき反抗』『ジャイアンツ』で立て続けに主演、準主演としてアカデミー賞にノミネートされ、瞬く間にハリウッドスターの仲間入りを果たした。

 そんな彼が愛用した時計が、エルジン製の懐中時計だ。写真に写る彼の右腰に、その時計がチェーンでつり下げられているのが分かる。これは1889年頃にエルジンによって作られた直径37mmのゴールド製ケース、白いエナメル文字盤に青焼きの針を備える、キーレスの懐中時計だ。

 この時計は、ジェームス・ディーンがハリウッドスターを夢見てニューヨークで下積みをしていた1951年頃に購入したものである。当時の彼にとっては大きな買い物だっただろう。蓋にイニシャル「JD」を刻んだこの時計に、彼は幸運をもたらす「ラッキーウォッチ」と名付け、お守りのように携帯していた。

 彼が『エデンの東』の主役として大抜擢されたのは、それから間もなくのことだった。

『エデンの東』撮影のためにカリフォルニア滞在中、ジェームス・ディーンは家族の元を訪れ、その際に父親からゴールド製のチェーンを譲り受けている。写真で彼が腰に時計をつり下げるのに用いているチェーンはこれだ。彼は懐中時計をベストに収めることはせず、いつもこのチェーンで腰につり下げていた。『エデンの東』の撮影に際し、映画監督から苦言を呈されたにもかかわらず、彼はこのスタイルを貫いたという。

 ジェームス・ディーンは最終的にこの懐中時計を、元ワーナーブラザーズ社員で、彼のヘアセットを担当していたティリー・スターリエット(Tillie Starriet)に贈った。彼は年上の彼女を「ママ」と呼んで慕う仲だった。

時計が彼の元を離れたその後、ジェームス・ディーンは、24歳の若さで自動車事故により夭逝する。

 彼の時計は、オークションハウス「アンティコルム」による2013年の香港オークションで、再び多くの人の目に触れることとなった。ティリー・スターリエットの署名が入った証明書とともに出品され、32万5000HKドルというエスティメート(推定額)の8倍もの高値で落札されたのである。
 当時から58年前の悲しい瞬間を伝える5時43分に設定されていたその時計は、若き天才の流れ星のようなストーリーとともに、次のオーナーへと渡っていったのだ。

(参照/●Antiquorum●WATCH COLLECTING LIFESTYLE™


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