腕時計の世界でも多用される、アナログとデジタルという言葉。機械式時計の多くは針で時間を示すアナログ表示だが、数字で時刻を表示するデジタル式の機械式時計も存在し、実はその歴史も長い。
![広田雅将](https://www.webchronos.net/wp-content/uploads/2023/02/people_1_880.jpg)
Q:デジタル時計とは? 機械式時計にもあるって本当?
A :時間を針ではなく、数字で時間を示すものをデジタルウォッチと呼びます。
今や、液晶表示を持つクォーツ時計のほとんどが、デジタル表示を備えるようになりました。
またごく一部ではありますが、機械式時計にも存在しています。そしてこのデジタル表示の時計、実は長い歴史を持っています。というのも、1970年代にLEDやLCDが普及する以前から、いくつかの機械式時計でデジタル表示を採用していたのです。またルネサンスの時代には、回転するディスクの裏から光を当てて時間を確認するデジタルクロックが存在していましたことが記録に残されています。その歴史を見ていきましょう。
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今やポピュラーとなった、瞬時に時間が変わるデジタル時計は、1883年にオーストリアの時計師であるヨセフ・パルウェーバーが開発しました。その後、IWCやコルテベールと言ったメーカーが、彼の手掛けた「パルウェーバー型」のデジタル式懐中時計を発売しました。もっとも、デジタル表示を動かすのは難しかったようで、数年間しか製造されていません。
デジタル時計が腕時計サイズに縮小されたのは、1920年代前半とされています。コルテベールやニトンといったメーカーは、レクタンギュラーのケースにデジタル表示を収めることに成功しました。50年代にはアメリカのエルジンなどもデジタル表示を採用。医師が使う通称「ドクターズウォッチ」にも、デジタル表示が見られます。
![IWC「トリビュート・トゥ・パルウェーバー “150イヤーズ”」](https://www.webchronos.net/wp-content/uploads/2019/08/IMG_0134_880.jpg)
1884年にIWCが発売したパルウェーバー型懐中時計を腕時計に復刻させた限定モデル。見た目こそオリジナルにストラップを追加し、腕時計に仕立て上げたような“忠実な復刻モデル”であるが、中身はディスクを動かすトルクを稼ぐためにツインバレルを採用しているほか、3枚のディスクを瞬時に切り替えるためのスイッチングシステムを新たに開発するなど、全くの別物だ。手巻き(Cal.94200)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRG(直径45mm)。3気圧防水。世界限定250本。
70年代以前、すべてのデジタル表示は、回転するディスクをゼンマイやモーターで回すというものでした。そのため、力のある機械式や、卓上クロックにしか採用例はありませんでした。しかし、70年代頃から普及しはじめたLEDやLCDは物理的に動かす部品がないため、デジタル表示の時計にはうってつけでした。
現在、デジタル表示を持つ時計の代表作としては、A.ランゲ&ゾーネの「ツァイトヴェルク」やカシオの「G-SHOCK」などがあります。前者は強い力を持つ機械式時計のメリットを生かして、大きな時分表示を瞬時に切り替えるメカニズムを持っています。
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