悩んでいる時間も楽しい。夏のボーナスで買いたくなる腕時計を6モデル紹介

FEATUREその他
2025.07.10

今回は、夏のボーナスを原資として、80万円台までのモデルから魅力的なモデルを選出して紹介する。この選出にあたり、幅広いシーンで活躍するシンプルな3針モデル、タフなツールウォッチ、モダンかつヴィンテージテイストもあるモデルの3つのジャンルに分け、各2モデルずつ紹介する。

佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2025年7月10日公開記事]


“悩んでいる時の楽しさ”を増大させるような魅力的な6モデルを紹介

 用途の決まっていないボーナス。それは無限の可能性を秘めている。生活に必要な耐久消費財への出費をかいくぐったボーナスを前にした時、ある人は時計専門誌やWEBメディアを閲覧して、そこに紹介されたモデルを着用した自分を夢想するのである。

 時計のみならず、“趣味は悩んでいる時が楽しい”ものだ。そこで今回は、その楽しみを増大させるべく、夏のボーナスを原資として、80万円台までのモデルから魅力的な選択肢として、幅広いシーンで活躍するシンプルな3針モデル、タフなツールウォッチ、モダンかつヴィンテージテイストもあるモデルの3つのジャンルに分けて紹介してゆく。

長年にわたって支持され、完成度を高めてきた「カレラ」の3針モデル

 最初に取り上げるのは、3針モデルである。日常生活に安心なレベルの防水性能と十分なパワーリザーブを有し、シンプルなデザインの腕時計は、ビジネスや改まったシーンだけでなくカジュアルにもマッチし、幅広く活躍してくれることだろう。価格帯を問わず、魅力的なモデルの多いジャンルである中、ピックアップしたのはタグ・ホイヤー「カレラ デイデイト」である。

 カレラの3針モデルは、デザインテイストを維持しつつラインナップされてきた人気モデルで、度重なるバージョンアップによって、基本性能だけでなく外装品質も高めてきた。

 掲載モデルは、日付と曜日表示を備えるデイデイト機能を備えた1本である。オパーリン仕上げの文字盤は、レッドをベースに外周にブラックを載せてスモーキーなグラデーションとしている。センターにラインを加えたペンシル型の時分針と、枠を設けたデイデイト表示、立体的なアプライドインデックスおよびタグ・ホイヤーのエンブレムが、文字盤デザインと相まって本作の魅力を生み出す。また、スポーツカーのメーターに用いられるような三角形の秒針は、モータースポーツとのつながりの深いタグ・ホイヤーのバックグラウンドを感じさせるディティールだ。本作のほかにも、ブラック、ブルー、日付表示のみのモデルにはシルバーなど、選択肢が豊富な点もカレラに注目する理由となる。

 本作に搭載される自動巻きムーブメントはCal.TH31-02で、約80時間のパワーリザーブを備える。100mの防水性能や薄手ですっきりしたデザインのバタフライ型バックルが採用され、その総合力は高い。

タグ・ホイヤー「カレラ デイデイト」Ref.WDA2113.BA0043

タグ・ホイヤー「カレラ デイデイト」Ref.WDA2113.BA0043
自動巻き(Cal.TH31-02)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.6mm)。100m防水。60万5000円(税込み)。(問)LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054

最新ムーブメントを搭載したスポーティーかつエレガントな「トップタイムB31」

 続いてピックアップするのがブライトリングから2025年に発表された「トップタイムB31」である。近年のブライトリングは、アイコニックなクロノグラフモデルの世界観をベースに3針モデルの展開を広げている。

「トップタイム」は、モータースポーツ向けクロノグラフとしてラインナップされてきたモデルで、本年には1960年代のモデルから着想を得た「トップタイム B01 レーシング リミテッドエディション」が発表されている。そして、取り上げるトップタイムB31は、ツートンカラーの文字盤デザインや、モータースポーツとのつながりを感じさせるデザインを引き継ぎながら、3針のデザインに落とし込んだモデルだ。

 カラーバリエーションの中から選んだグリーンの本作は、ブリティッシュレーシンググリーンを思わせる、深く、落ち着きのある色調が魅力である。グリーンを背景にオレンジの秒針が映えるのと同時に、スポーツカーのメーターを思わせる針色となっている。1/4秒まで刻まれた秒スケールはクロノグラフを思わせるデザインとして効いているだけでなく、本作にツールウォッチのテイストを加えるのに一役買っている。

 本作を選定した理由はふたつ。コンパクトでエレガントな仕立てと、基本性能の高いムーブメントの採用である。本作は、ケース径38mm、厚さ10.3mmに抑えられており、エレガントさを生み出すのと同時に、良好な着用感が期待される仕上がりである。

 このシルエットを実現するのが、ブライトリングの代表的なクロノグラフムーブメントのCal.01をベースにしつつ、機能を時刻表示に絞り、その基本性能や信頼性を引き上げることがコンセプトの自社製ムーブメントCal.B31である。基本性能の代表例として、約78時間のパワーリザーブとスイス公式クロノメーター検定協会によるCOSC認定機であることが挙げられ、現代基準で申し分ない。また、その開発にあたり、10万回のリュウズの巻き上げ、345万6000回のローター巻き上げ、500Gの耐衝撃試験6万回など16年間の使用に相当する過酷なテストによって信頼性が高められた。その結果を根拠として、Cal.B31には5年間の保証が付与される。これは、ユーザーにとって安心材料となることだろう。

 なお、本作にはブレスレットモデルも用意され、好みや用途によって選択できる点も選定理由のひとつだ。

ブライトリング「トップタイムB31」Ref.AB3113171L1X1

ブライトリング「トップタイムB31」Ref.AB3113171L1X1
自動巻き(Cal.B31)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約78時間。SSケース(直径38mm、厚さ10.3mm)。100m防水。81万9500円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

ブライトリング「トップタイムB31」Ref.AB3113171L1A1

ブライトリング「トップタイムB31」Ref.AB3113171L1A1
自動巻き(Cal.B31)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約78時間。SSケース(直径38mm、厚さ10.3mm)。100m防水。86万9000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

高い完成度にさらに磨きがかかった「ブラックベイ 58」の最新作

 ミドルレンジの中で、完成度の極めて高いツールウォッチを提供するのがチューダーである。完成度が高いとする根拠は、高い評価を集めるムーブメントと、それが備える実用的なパワーリザーブ、200mの防水性能といった文字に表しやすいスペックだけでなく、外装の仕上げや使い心地に関わるさまざまなディティールに心を配っていることである。

 これらの完成度の高さを更に一段押し上げるのが、今回選定した「ブラックベイ 58」の新作であるバーガンディーモデルである。「ブラックベイ」は元々、チューダーの往年の名機「オイスター プリンス サブマリーナー」をリバイバルするところからスタートしたコレクションで、派生モデルを生み出しながら現在のチューダーの屋台骨となっている。そしてブラックベイ 58は、直径39mmとダイバーズウォッチとしては比較的コンパクトなサイズを採用するモデルである。

 2025年の最新作である本作に搭載されるムーブメントは、METAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター認定ムーブメントのCal.MT5400-Uであり、その基本性能はまさに“折り紙付き”。マスター クロノメーター認定ムーブメントは、セラミックス製ケースモデルなど特別なモデルへの採用事例はあったが、ベースモデルへの採用は初となる。

 マスター クロノメーターは、1万5000ガウスの磁場にさらされた場合でも精度を維持すること、パワーリザーブ残量による精度の変動が小さいことなどのさまざまな項目について、ムーブメント単体の状態とケーシング後の状態で、全数検査を10日間にわたって行うもので、認定ムーブメントは現代基準で最高レベルの信頼性を有すると評価してよいだろう。

 この他、従来モデルの厚さ11.9mmから11.72mmにシェイプされ、39mmケースでは初となる5連ブレスレットおよび、従来もラインナップされてきた3連リベットブレスレットの組み合わせが用意され、いずれにも、長さ調整を可能とする「T-fitアジャスティングシステム」が採用されている。このような着実な改良が続けられていることから「最新作が最良」と安心してお勧めできるコレクションでありブランドである。

チューダー「ブラックベイ 58」Ref.M7939ALA0RU-0001

チューダー「ブラックベイ 58」Ref.M7939ALA0RU-0001
自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。65万7800円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570

従来のフルメタルモデルとは一線を画す外装品質のG-SHOCK

 続いて選出したのが、タフなツールウォッチの代名詞であるG-SHOCKの「MR-G」Ref.MRG-B2100D-1AJRである。近年のG-SHOCKのラインナップには30万円台のモデルが増えている傾向にある中でも、60万円を超える本作は極めて高額である。そのコストの大部分は非常にレベルの高い外装仕上げにあてられている。

 本作の外装設計のアプローチは2022年発表の「MRG-B5000」に準じている。ケースとブレスレットは金属製の「フルメタル」の仕立てでありながら、従来のフルメタルモデルとは全くの別物と言えるレベルの高品質な仕上げが施され、高い評価を集めたモデルである。この仕上げを施すため、従来のフルメタルモデルでは一体成型されるベゼルを、MRG-B2100では27のパーツに細分化し、ブレスレットのディンプル部も分割して、それぞれに磨きをかけた上で組み上げている。この手法により、研磨処理が難しい凹部まで歪みの無い面が形成され、高い完成度を実現している。各パーツはチタン製で軽量な仕立てであり、ベゼルトップにのみ、プラチナと同等の輝きを持つとされるコバルトクロム合金の「コバリオン」を採用している点も見どころである。

 文字盤は木組みに着想を得たデザインで、3時位置に日付表示、8時位置に曜日と時計ステータス表示を兼ねたインジケーターが配される。デザインのベースとなったフルメタルモデルの「GM-B2100」では、4時位置に液晶画面を配してストップウォッチ機能やアラーム機能を実現していたが、本作では廃されているので、その点は注意が必要だ。

 かつては「ビジネスシーンにはシンプルな3針モデル」というのが相場観であったが、近年ではさまざまな時計が受け入れられている(もちろん業界にもよる)ように筆者は感じている。その観点で、例えば機械加工に従事するエンジニアが本作の高い仕上げ品質を評価して選ぶというのは良い選択ではなかろうか。

G-SHOCK「MR-G」Ref.MRG-B2100D-1AJR

G-SHOCK「MR-G」Ref.MRG-B2100D-1AJR
光発電クォーツ。フル充電時約5カ月稼働(パワーセーブ時約18カ月稼働)。Tiケース(縦49.5×横44.4mm、厚さ13.6mm)。20気圧防水。64万9000円(税込み)。(問)カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925

ノモス グラスヒュッテらしいデザインに独自のワールドタイム機能を搭載した新作

 ミドルレンジに充実したラインナップを持ち、クラシカルなテイストを残しながらモダン、そしてシンプルかつスタイリッシュなモデルを並べるのがノモス グラスヒュッテである。そんな同社から、今年発表された新作「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー」をピックアップした。ポップなカラーリングを特徴とする「クラブ」の中でも、「クラブ・スポーツ」はブレスレットモデルを用意し、幅広いシーンにマッチするインフォーマルウォッチとして展開されている。

 本作は、新ムーブメントのCal.DUW 3202によって、簡単なプッシュ操作で世界各国の時刻を表示可能なワールドタイム機能を備えており、より幅広く、世界に活躍の場を広げるようなモデルとなっている。基本となる表示系は、センターのローカルタイムの時分針、6時位置のスモールセコンドであり、3時位置に24時間表示のホームタイム表示を配する。

 そして注目は、2時位置のプッシュボタンと文字盤周囲の都市名表記だ。12時位置に赤いラインがあり、その地点に位置する都市のローカルタイムを示していることを意味する。各都市の時刻を表示する前に、赤いラインを現在地にセットした上で時刻を合わせ、ホームタイム表示も同様にしておく。ここから、プッシュボタンを押すことで都市名表記のディスクが回転し、同時に時針も対応する時刻にジャンプするのだ。

 海外旅行を趣味とする方には嬉しい機能であり、海外出張や世界各国の顧客とのミーティングが多いビジネスマンにとっては、スーツスタイルに合わせやすいデザインと、ビジネスをサポートしてくれる機能を有するモデルとして、本作をピックアップした。

ノモス グラスヒュッテ「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー シルバー」Ref.791

ノモス グラスヒュッテ「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー シルバー」Ref.791
自動巻き(Cal.DUW 3202)。37石。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ9.9mm)。10気圧防水。77万2200円(税込み)。(問)大沢商会 Tel.03-3527-2682

完成度の高い“ネオ・ヴィンテージ”デザインのメカニカルクロノグラフ

 機械式時計のメカニカルな魅力に注目すると、クロノグラフモデルも候補に入れたくなる。そこで今般選出するのが、レイモンド ウェイルの「ミレジム クロノグラフ」である。

 近年、注目度を急速に高めている「ミレジム」は、1930年代に流行したアールデコ様式を思わせるセクターダイアルを採用しつつ、モダンな印象もあるトライアングル型の針を組み合わせ、“ネオ・ヴィンテージ”をコンセプトとしたラインナップである。この観点から見れば、平面と曲面を組み合わせたケースは完全なヴィンテージテイストでなく、モダンさも感じられる点がコンセプトと合致していると筆者は考えている。シックなコーディネートに取り入れやすいヴィンテージのテイストと、カジュアルにもマッチするモダンなエッセンスが人気の秘訣であり、本作を選出した理由である。

 この他の選出理由としては、ケース径39.5mmのクロノグラフモデルとしてはコンパクトなサイズ感によって、各カウンターが文字盤一杯にバランスよく配置されたデザインを実現しており、これがヴィンテージテイストを醸し出すのに一役買っている点だ。さらに、厚さ12.9mmの“リーズナブルな”厚さにまとめられていることも見逃せない。機械式クロノグラフは厚さ14mmを超えるモデルも多い中で、本作の仕立てはエレガントさを生み、着用感の向上にも寄与することだろう。

 ピックアップしたのは新作のアンスラサイト(グレー)文字盤のブレスレットモデルで、本作以外にもブラックやネイビー文字盤が用意され、選択肢が豊富な点も魅力である。

レイモンド・ウェイル「ミレジム クロノグラフ」Ref.7765-ST-60651

レイモンド ウェイル「ミレジム クロノグラフ」Ref.7765-ST-60651
自動巻き(Cal.RW5030)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約62時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ12.9mm)。50m防水。61万6000円(税込み)。(問)ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080


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