現代的にアップデートされたジャガー・ルクルト 「ポラリス・クロノグラフ」の魅力

FEATUREWatchTime
2019.12.28

自社のヒストリカルピースにオマージュを捧げ、2018年に再スタートを切ったポラリス・コレクション。今回は、オリジナルモデルのデザインコードを踏襲しつつも、現代人のライフスタイルを見据えてアップデートされた「ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ」をレビュー。その詳細に迫った。

Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo

ポラリス・クロノグラフ

ジャガー・ルクルト 「ポラリス・クロノグラフ」
自動巻き(Cal.751H)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ65時間。SSケース(直径42mm)。10気圧防水。104万円(税別)。


ジャガー・ルクルト 「ポラリス・クロノグラフ」

 ヴィンテージ・テイストの腕時計の中には、歴史的モデルの外観を忠実に再現しようとするだけのモデルもあれば、オリジナルをベースにしながらも、そこに新たな機能を盛り込もうとする意欲的なモデルもある。1968年に誕生したダイバーズ・アラームウォッチの傑作「ポラリス・メモボックス」にインスパイアされた「ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ」は、2018年に刷新されたポラリス・コレクションの中でも、とりわけ傑出したモデルの1つ。現行のヴィンテージ・テイストの時計が、前述のような2タイプに大別できるとすれば、このモデルは明らかに後者だろう。今回、ステンレススティール製ケースにブルー文字盤を組み合わせた「ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ」をレビューする機会を得た。以下がその概要である。

ケース

 ジャガー・ルクルトはこのモデルを製作するにあたり、1968年の「ポラリス・メモボックス」をベースにしながらも、より現代的なサイズとラグジュアリーな仕上げ、そしてオリジナルにはないいくつかの要素を付与した。直径42mm、厚さ11.9mmのスラリとしたステンレススティール製ケースは全面にサテン仕上げが施され、一部、ラグの面取りされた個所やスリムなベゼル、プッシャーの表面、リュウズといった細かな部分にのみポリッシュ仕上げを施すことで立体感を生み出している。プッシャーは人間工学に則った形状になっており、スタート、ストップ、ゼロリセットといった一連の操作は実に心地よい。そしてリュウズの上部には、さり気なく「JL」ロゴがレリーフで刻まれているのも確認できる。

ポラリス・クロノグラフ

オーシャンブルーの文字盤には、異なる3種類の美しい仕上げが施されている。

ポラリス・クロノグラフ

ケースサイドはサテン、面取り部分はポリッシュでそれぞれ仕上げられている。

 クロノグラフのプッシャーは、「ポラリス・メモボックス」に備わっていた3つのリュウズを想起させるデザインだ。もちろん、今回の時計はアラームもインナーベゼルも備えてはいない。つまり「ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ」は、機構ではなく、外観のデザインによってオリジナルにオマージュを捧げたモデルであると解釈できるだろう。

リュウズとクロノグラフのプッシャーは操作しやすい形状に。

文字盤

 新しいポラリス・コレクションには、1968年のオリジナルを想起させるいくつかの要素が含まれている。その1つが文字盤。同心円状の3つのサークルで構成され、それぞれが異なる仕上げを施すことによってコントラストを生み出している。センターがサンレイ仕上げで、その外側はグレイン仕上げ、インナーベゼルはオパーリン仕上げといった具合だ。また「ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフ」のインナーベゼルは回転式ではないが、代わりにカーレーシングにインスパイアされたタキメータースケールを設け、スポーティなテイストを強調している。ここで見られる意匠の多くは、2008年に発表されたリミテッドエディション「トリビュート・トゥ・ポラリス」に由来するディテール。つまり、このモデルの成功こそがジャガー・ルクルトの新作開発に影響を与えており、それは、「オーシャンブルー」カラーにスネイル模様のサブダイアルを組み合わせた魅力的な文字盤には、さらなる洗練さと深みを与えることにつながった。

ポラリス・クロノグラフ

針とアプライドインデックスには夜光塗料を塗布。

ポラリス・クロノグラフ

1968年発表のオリジナルに搭載されていた60分アラームスケールは、タキメーターに置き換えられている。

 クラシカルな文字盤との調和を見せる太くて見やすい時分針には夜光塗料が塗布され、また台形のインデックスはオリジナルモデルを想起させる。そして、このモデルに秒針とデイト表示がないことに気づくと、ポラリスに宿るツールウォッチとしてのアイデンティティも感じ取れるだろう。サブダイアルは両方ともクロノグラフのカウンター(3時位置に30分積算計、9時位置に12時間積算計)となっており、長くテーパーの効いたクロノグラフ針は、機能を作動させるまで静かに12時位置に収まっている。デイト表示がないことを嘆く人は少ないだろう。しばらく使わず、時計が止まってしまった場合でも、時刻調整が容易になるのだから。

ポラリス・クロノグラフ

サブダイアルはふたつともクロノグラフ用の表示。ダイアルにはスネイル仕上げが施されている。

ポラリス・クロノグラフ

縁のオパーリン仕上げは、文字盤のミニッツスケール部分に施されたグレイン仕上げとの絶妙なコントラストを生み出している。