LVMHグループの時計フェア「LVMH ウォッチ ウィーク ドバイ 2020」〜ブルガリ編〜

FEATUREその他
2020.02.19

ブルガリの2020年新作

 ブルガリがメインに押し出したのは、2018年に発表した「セルペンティ セドゥットゥーリ」のエクステンションである。アイコニックなセルペンティの造形はそのままに、標準的なブレスレットを組み合わせた本作は、2019年の大ヒットとなった。2020年に加わったのはコンビモデルである。また、「オクト フィニッシモ」には、待望のステンレススティール製モデルが追加された。これは、サテン仕上げをやめて、今風の“ラグジュアリースポーツ感”を強調したモデルだ。

セルペンティ セドゥットゥーリ

セルペンティ セドゥットゥーリ

新しく追加されたコンビモデル。セルペンティのユニークな意匠はそのままに、汎用性を増している。
クォーツ。SS×18KPG(直径33mm、厚さ6.85mm)。30m防水。38 個(最大0.38カラット)のダイヤモンドをセッティングしたモデルは125万円(税別)。ダイヤモンドなしのモデルは84万円(税別)。いずれも2020年9月発売予定。

セルペンティ セドゥットゥーリ

太陽光の下で見たセルペンティ セドゥットゥーリ。自社で製作するケースは、磨きが非常に良好である。歪みのなさは写真が示すとおりである。

 バネ性を持たせたユニークなブレスレットの代わりに、標準的なネジ留め式のブレスレットを与えられたセドゥットゥーリ。新しいコンビモデルは、相変わらず良く出来たブレスレットを持つ腕時計であった。ブレスレットの左右の遊びは適切で、ヘッドとテールの重さのバランスも良好。少し遊びを持たせてあるのは、女性が使うためだろう。インデックスはおそらくアプリック(接着による固定)だが、面の歪みはなく、立体的な造型を持つ高級時計に相応しいものだった。文字盤はホワイトシルバーオパーリン、つまりはブルガリお得意のポリラッカーである。リュウズにあしらわれているのはピンクルベライト。


セルペンティ セドゥットゥーリ トゥールビヨン

セルペンティ セドゥットゥーリ トゥールビヨン

世界最小級のトゥールビヨンを搭載した女性用モデル。一見、フライングトゥールビヨンに見えるが、キャリッジはサファイアクリスタルで固定されている。
手巻き(Cal.BVL 150)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWG(直径34mm、厚さ8.90mm)。299 個 (最大2.88カラット)のダイヤモンドをセッティング。30m防水。予価未定。2020年6月発売予定。

Cal.BVL 150

新しく設計されたトゥールビヨンムーブメントCal.BVL 150。コンベンショナルな設計に見えるが、サファイアクリスタルで固定されたキャリッジや、針合わせ機構と一体化した日の裏側など、目新しい要素が散見される。小型ムーブメントだが、針合わせの感触も良好である。ムーブメントサイズは縦22×横18mm、厚さ3.65mm。

ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニが自らセルペンティ セドゥットゥーリ トゥールビヨンの説明をしてくれた。小型化のために巻き真を6°傾けているとのこと。

セルペンティ セドゥットゥーリ トゥールビヨン

実際の写真。非常にコンパクトな時計であることが分かる。筒カナを小さくすることで、キャリッジへの張り出しを抑えたのは見識だ。

 新規設計のトゥールビヨンを搭載したモデル。ブルガリ曰く、現行では最小級のトゥールビヨンとのこと。ケースにはパヴェセッティング、文字盤にはスノーセッティングのダイヤモンドがあしらわれている。非常に小ぶりな時計だが、現行品らしくリュウズのガタもよく抑えられているほか、針合わせのトルクも適切であった。ただし、リュウズの形状がクォーツモデルと同じであり、巻き上げるのがやや難しい。この点は要改善だろう。フライングトゥールビヨンのように見えるが、受けは分厚いサファイアクリスタルで支えられている。


オクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュド スチール

オクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュド スチール

サテンとポリッシュの併用により、ラグジュアリー感を強調した新作。オクト フィニッシモのステンレススティールモデルはすでに存在していたが、こういったオーソドックスな仕上げの採用は初となる。価格は非常に戦略的だ。
自動巻き(Cal.BVL 138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径40mm、厚さ5.15mm)。100m防水。129万円(税別)。2020年7月発売予定。

オクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュド スチール

太陽光の下で撮影したオクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュド スチール。写真が示す通り、サテン仕上げが強調されているのが分かる。ポリッシュした針×ポリッシュしたインデックスの組み合わせだが、視認性は意外に良好である。

オクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュド スチール

オクト フィニッシモの特徴であるプレートをブレスレットにビルトインしたバックル。薄くて装着感に優れるが、プレートとブレスレットの噛み合わせが突起だけなのは惜しい。

 レギュラーモデルとしてはオクト初のステンレススティールモデル。既存モデルの素材を置き換えただけと思いきや、外装はポリッシュとサテンが混在した仕上げに変更された。薄いフィニッシモは、複数の仕上げを混ぜるのが難しいが、ブルガリはよりラグジュアリーな見た目をもたらすべく、部分的にポリッシュを加えた。また、鏡面仕上げだったポリラッカー文字盤も、IWC風のツヤを落としたものに変更された。結果として、ダイヤモンドカットインデックスとのコントラストが強調され、視認性も向上している。素材の変更にもかかわらず、極めて優れた装着感も不変だ。ただし、突起だけで押さえるビルトイン式のバックルは、長期の使用で摩耗しないのかやや疑問が起こる。なお、ねじ込み式リュウズにより、防水性は大幅に向上した。中身を考えると、価格は非常に魅力的だ。


オクト フィニッシモ オートマティック ブラック サンドブラストポリッシュ セラミック

オクト フィニッシモ オートマティック ブラック サンドブラストポリッシュ セラミック

2019年の“新しい”セラミックモデル。ケースやブレスレットが筋目仕上げに改められた結果、全体の立体感が強調されている。
自動巻き(Cal.BVL 138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラミックス(直径40mm、厚さ5.50mm)。30m防水。167万9000円(税別)。2020年4月発売予定。

2019年に発表されたモデルの仕上げ違い。基本スペックは「オクト フィニッシモ オートマティック セラミック」に同じだが、ケースやブレスレットに強い筋目仕上げが施された。チタンモデルに比べてケース厚がわずかに増えたが、それでも極薄であることに変わりはない。なお、リュウズはねじ込みではないため、防水性能は30mである。前作同様、バックルのプレートはわずかに厚く、セラミックスのベアリングで固定される。個人的にはこのタイプのバックルがステンレススティールモデルに転用されることを期待したい。ブレスレットのエッジはやや立ちすぎているように思えるが許容範囲か。

オクト フィニッシモ オートマティック ブラック サンドブラストポリッシュ セラミック

オクト フィニッシモ オートマティック ブラック サンドブラストポリッシュ セラミックのバックル。写真が示す通り、セラミックスのベアリングでバックルを支えている。左右に4つずつセラミックスのベアリングを内蔵して強固に支えるようにしたのは、スポーツウォッチとして使われることを意識したためか。普通、こういったベアリングは白を使うが、きちんと黒に統一したのは、ブルガリの見識である。


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