グランドセイコーのおすすめ9Fクォーツモデル3選。究極のムーブメントを装う!

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2024.04.19

日本が誇るグランドセイコーは、高い技術力を強みに、優れた品質と優美な意匠を備えた腕時計を製造するブランドだ。そんな同ブランドが手掛けるクォーツ式ムーブメントの性能は世界有数。ビジネスシーンはもちろんカジュアルシーンでも活躍する、グランドセイコーのクォーツモデル傑作3選を紹介しよう。

グランドセイコー クォーツ


グランドセイコーの「9Fクォーツ」って何がすごいの?

グランドセイコーのクォーツ式ムーブメントは「9F」で始まるキャリバーナンバーで管理される。9Fは1993年、「究極のクォーツ」を目指して開発され、以来、改良が続けられてきた。このムーブメントによってグランドセイコーが起こした数々のイノベーションは、クォーツウォッチを従来のプロダクトから、別次元へと引き上げた。

自動組立や他社製造では実現できない、9Fクォーツの多彩な機能とメカニズムについて紹介しよう。

1993年にグランドセイコーからリリースされたRef.SBGT001。搭載ムーブメントCal.9F83は、バックラッシュ・オート・アジャスト機構をはじめとする革新的な機構を有しており、“クォーツを超えたクォーツ”と称された。

圧倒的な精度

すべての水晶振動子は原理的には3万2768Hzで振動する。しかし個体差や環境の変化により振動数は不安定となるため、時計の精度は一定ではない。

一方の9Fクォーツは、3カ月にも及ぶエイジングを経て、安定した精度を発揮する水晶振動子だけを採用する。さらに、水晶振動子の個体差をICに記録し、駆動中は1日に540回の検温を行う仕様だ。このように、水晶振動子の厳選と誤差修正を行うことで、精度は通常のクォーツ式時計を大きく上回り、年差±10秒という圧倒的な精度を誇る。

トルクの強さ

クォーツ式時計は高精度だが、主ゼンマイがほどける力を利用する機械式時計よりもトルクが小さい。重い針を動かすのに十分な力を発揮しにくいため、クォーツ式時計の時・分・秒針は細く軽いことが一般的だ。

9Fクォーツでは「ツインパルス制御モーター」を搭載することで、1秒に1ステップ(6°)ではなく2ステップ(3°を2回)進む仕様を採る。もちろん、この2回のステップは肉眼では認識できないため、従来のように1回のステップに見える。

1ステップに必要な力を小さくすることで、軸トルクの効率を高めており、機械式時計然とした太く重い針を搭載することが可能だ。

緩急スイッチとデイト表示

一般的なクォーツ式ムーブメントは、自動組立でも機械式時計以上の精度が得られるため、ユーザーが精度の調整を行う必要はないものとしている。実際、高精度な9Fクォーツでは調整の必要はほぼないと言えるが、水晶振動子には個体差がある。

9Fクォーツのケースバックを開くと精度調整用の「緩急スイッチ」があり、ユーザーは個体の癖に合わせて精度調整が可能だ。

また、9Fクォーツは、世界で初めてクォーツ式時計に「瞬間日送りカレンダー」を搭載したことでも知られる。トルクの小さいクォーツ式時計では実現困難な機構であったが、24時前後でもデイト表示を瞬時に認識できるメリットを生んだ。

9Fクォーツの種類と主な搭載モデル

1969年にセイコーが世界初のクォーツ式時計「アストロン」を発売したことは、時計業界を一変させるほどのインパクトをもたらした。

88年発表のグランドセイコー初となるクォーツ式時計「95GS」から、グランドセイコーのクォーツムーブメントは最高峰の精度や品質を追求してきた。その多彩なキャリバーから3種類を紹介しよう。

95GS

1960年に誕生したグランドセイコーは、1970年代中頃にいったん生産がストップしていたが、1988年発表のクォーツモデル「95GS」によって復活を遂げた。搭載されたキャリバー9581には高品質の水晶振動子が採用され、年差±10秒という高精度を実現。現在の9Fクォーツへとつながる年差クォーツであった。


GMTを初めて搭載 Cal.9F86

「Cal.9F86」は、9Fクォーツとして初めてGMT機能を搭載したムーブメントだ。GMT針は時・分・秒針と同軸上に配され、デイト表示もある。また、時針・分針・秒針・GMT針の4本の針が互いに干渉することなく独立して回転する「4軸独立ガイド構造」を採用しており、時差のある地域の時刻に合わせる時に、時計を止めずに時針のみを修正できる。つまり、年差クォーツの高い精度を失うことがない利便性を実現しているのだ。

Cal.9F86


9Fの基本性能を凝縮 Cal.9F62

「Cal.9F62」は、9Fクォーツの基本性能を維持しつつ、サイズダウンに成功した小型ムーブメントだ。Cal.9F62を搭載した腕時計の外観は、3時位置にデイト表示を備えた、小型の3針モデルである。

9F62


時針単独の時差修正機能を搭載 Cal.9F61

前述したCal.9F62の、ノンデイト版がCal.9F61だ。コンパクトかつシンプルな機能ゆえ、9Fクォーツの優れた精度が際立つ。


コラム①9Fクォーツ式時計、電池が切れたらどうすればいい?

セイコーのクォーツ式時計は、電池切れ予告機能を標準搭載している。電池切れは使用開始から数年で訪れるため、機能の概要や電池交換サービスについて覚えておこう。

電池切れ予告機能

9Fクォーツの電池寿命はおおむね約3年となっている。電池切れの状態が続くとムーブメントに悪影響を及ぼすため、早めの電池交換を心掛けよう。

グランドセイコーの腕時計には、電池切れが近いことを直感的に判断できる「電池寿命切れ予告機能」が備わっている。

電池切れが近付くと、秒針が2秒ずつステップして進むようになる仕様だ。

電池交換の際に本体チェックも受けられる

グランドセイコーの電池交換を正規サービスに依頼すると、腕時計本体の詳細なチェックや洗浄なども同時に受けられる。

非正規サービスでも電池交換は可能だが、純正電池・純正パッキンの交換や、精度・電気特性・防水性能のチェックなどは受けられないのが一般的だ。

電池交換の際にはケースバックを開けるが、このとき内圧が変化し、作業中に電気特性が異変を起こすケースもある。

正規サービスを利用すると腕時計の返送まで1〜2週間かかるが、大切な腕時計を守るためには必要なケアと考えよう。


9Fクォーツおすすめモデル

グランドセイコーのメンズ腕時計は、「マスターコレクション」「エレガンスコレクション」「ヘリテージコレクション」「スポーツコレクション」「エボリューション9 コレクション」の5種類に分類される。

ここでは、ベーシックで扱いやすい「ヘリテージコレクション」やスポーティーな「スポーツコレクション」から、機能的かつデザインの秀逸なおすすめモデル3選を紹介しよう。


コンパクトでビジネスにも最適 Ref.SBGX265

グランドセイコー ヘリテージコレクション

グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX265
クォーツ(Cal.9F62)。SSケース(直径37mm、厚さ10mm)。10気圧防水。29万7000円(税込み)。

まず最初に紹介したいのが、ケース直径37mm、厚さ10mmと、コンパクトなサイズが魅力の「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX265だ。小さく薄い腕時計は装着感が良好で、また、ジャケットの袖口に収まるため、ビジネスシーンで日常的に使える1本と言えるだろう。

なお、クォーツウォッチは薄く小さい外装を与えやすい一方で、トルクが弱く、細く小さい針しか与えられない個体もある。しかし本作には力強い針が備わっており、また、立体的なインデックスやハイレベルな仕上げが加わることで、高級感を備えていることも特筆すべき点だ。

近年は世界的なインフレや原材料高騰によって、高級腕時計の価格上昇も著しい中、30万円以下という、手の届きやすい定価であることも、ユーザーにとってはありがたいポイントだろう。


さまざまなシーンに合わせられる Ref.SBGP003

グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGP003

グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGP003
クォーツ(Cal.9F85)。SSケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。10気圧防水。41万8000円(税込み)。

小径ケースは最近の時計業界のトレンドだが、ある程度の大きさがほしいというユーザーには、40mm径のRef.SBGP003がおすすめ。小ぶりすぎず、しかし厚さが抑えられたケースとブラック文字盤の組み合わせは、さまざまなシーンで合わせやすい装いだ。

なお、搭載するCal.9F85は、時・分・秒針のシンプルな3針機能でありながらも、時針の単独時差修正機能が追加されている。9Fクォーツの高精度を損ねることなく時差修正ができるため、海外旅行や出張の際に高い利便性を発揮してくれる。


9F86搭載のクォーツGMT Ref.SBGN027

グランドセイコー「スポーツ コレクション」Ref.SBGN027
クォーツ(Cal.9F86)。SSケース(直径39mm、厚さ12.3mm)。20気圧防水。45万1000円(税込み)。

スポーツコレクションのRef.SBGN027は、ベゼル上に24時間表示を配した、スマートで都会的な印象のGMTモデルである。

Cal.9F86を搭載しており、センターのGMT針に加え、4時位置のデイト表示も備える。針やインデックスのシェイプやカラーリングはブラックダイアルによって一層引き締まり、スポーティーかつスタイリッシュだ。

デイト表示や24時間表示ベゼルの字体、ケースやラグの形状もバランスが良く、隙のないフェイスに仕上がっている。


コラム②グランドセイコーには3つのムーブメントが存在する

グランドセイコーの腕時計は「グランドセイコースタジオ 雫石」(岩手県雫石町)と「信州 時の匠工房」(長野県塩尻市)というふたつの工房で自社生産される。前者は機械式、後者はクォーツ式とスプリングドライブを手掛けている。

クォーツ式時計の傑作選を見る前に、まずはグランドセイコーに採用される3種類のムーブメントについて見ていこう。

高精度の機械式ムーブメント「9Sメカニカル」

グランドセイコーの機械式ムーブメントは、ヒゲゼンマイや歯車など、すべての部品を自社製造している。0.01mm単位の微細加工技術と、熟練職人の調整や組み立てにより、スイスのクロノメーター規格を超える非常に高精度なムーブメントの製造が可能だ。

「メカニカル自動巻3DAYS」と呼ばれるCal.9S65やCal.9S68は、主ゼンマイの厚みと幅の調整により、シングルバレルでありながら最大約72時間のパワーリザーブを誇る。

「メカニカルハイビート36000 80 Hours」と呼ばれるCal.9SA5では、毎時約3万6000振動のハイビートでありながら、最大約80時間という驚異的なパワーリザーブを達成した。

クォーツを超えたクォーツ「9Fクォーツ」

多くの時計メーカーではクォーツムーブメントを自動組立しているが、グランドセイコーの9Fクォーツは複雑であり、手作業で組み立てられていることが特徴だ。

秒針の動きを安定させる「バックラッシュオートアジャスト機構」には、本来は機械式ムーブメント用の精密なヒゲゼンマイを用いているため、職人による調整が必要だ。

時・分・秒針が独立した軸で回転する「3軸独立ガイド構造」の採用により、時刻合わせ時にも3本の針が互いに干渉することなく、それぞれの針の動きが他の針に影響を与えることのない、滑らかな動きを可能にした。

また、水晶振動子の個体差を加味して3カ月間のエージングを行うことも、9Fクォーツのクォリティのひとつだ。

機械式とクォーツ式のハイブリッドムーブメント「9Rスプリングドライブ」

セイコー独自の駆動方式「スプリングドライブ」は、機械式時計と同じように主ゼンマイを動力源とし、クォーツ式のように水晶振動子・IC・ステータで調速を行う。

主ゼンマイの大きなトルクで重い針を動かし、クォーツ式時計と同等の高精度を実現する、技術的に高度かつ複雑な駆動方式だ。

機械的な力・電気信号・磁力が協働する制御システム「トライシンクロレギュレーター」を搭載するため、9Rスプリングドライブムーブメントの部品数は200以上、クロノグラフモデルでは400以上にもなる。


グランドセイコーのクォーツモデルを選ぼう

グランドセイコーのクォーツモデルは、完成度の高いデザインと高度な機能性を兼ね備え、世界有数の信頼性を誇る。

スポーティーなモデルであれば、ビジネスシーンはもちろんカジュアルシーンでも活躍するだろう。日本が誇るクォーツ式時計の中から、お気に入りの1本を選び出そう。



Contact info: セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617

川部憲 Text by Ken Kawabe


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