時計工房で実際に製造工程を見てみよう。国内工場やスイスの博物館

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2020.11.17

普段、身に着けている愛用の腕時計は、どのようにして作られているのだろうか。腕時計に込められた職人の情熱や製造の奥深さは、時計工房や博物館を訪れることで、より深く知ることができる。見学や製作体験ができる国内の工房や、スイスの博物館を紹介しよう。


時計工房の魅力とは

腕時計のメカニズムに感動するとき、それは誰がどのようにして作ったものなのか知りたいと思うことはないだろうか。

時計工房を訪れれば、まさにその一端が垣間見える。工房によっては、自分が時計師になった気分を味わうことも可能だ。

製造工程を実際に見ることができる

時計工房の大きな魅力のひとつは、ムーブメントの組み立てやケーシングなど、腕時計の製造工程を間近で見られることだ。グランドセイコーなど、日本を代表するブランドの工房の中には見学を受け入れているところもある。

国内有数の技能を持つ熟練職人の仕事風景が見学でき、目の前で製造された腕時計は実際に国産高級腕時計として販売されるのだ。そのブランドのファンはもちろん、時計好きなら誰でも一度は足を運ぶ価値がある。

体験可能な工房もある

見学だけでなく、時計師の指導の下で製造を体験できる時計工房もある。

一部の工房では、ケースの研磨やムーブメントの分解・組み立てなどを体験可能だ。しかも、ここで触れるパーツや機材は、実際の製造で使用しているものと同型である。

また、ケースやダイアルなど好きなパーツを組み合わせて、オリジナルの時計を作れる時計工房もある。自分で製作した時計をコレクションに加えるのも一興だろう。


日本の主なブランドの工場や工房

日本を代表する時計ブランドといえば、間違いなくシチズンやグランドセイコーの名が挙がるだろう。そこで、日本が誇るこれらのマニュファクチュールを紹介しよう。

自社一貫生産を行うシチズン時計マニュファクチャリング飯田殿岡工場

長野県飯田市にあるシチズン時計マニュファクチャリング飯田殿岡工場には、量産型ムーブメントの自動組み立てラインに加え、「南信州高級時計工房」が設けられており、ここでは手作業で高級腕時計が組み立てられている。

このシチズン時計マニュファクチャリング株式会社で行われている腕時計ムーブメントの部品から完成時計に至るまでの自社一貫生産の様子は、以下の公式サイトにおいて確認できる。

公式リンク:シチズン時計マニュファクチャリング株式会社

グランドセイコーが製造される雫石高級時計工房

岩手県雫石町にある「雫石高級時計工房」はグランドセイコーの製造拠点のひとつであり、機械式時計の聖地として知られる。グランドセイコーのメカニカルモデルの部品製造・組み立て・調整・ケーシングなど、一貫生産を行うマニュファクチュールである。

2020年7月20日、同工房内にグランドセイコーの機械式時計を製造する新施設「グランドセイコースタジオ 雫石」がオープン。

スタジオ内では、専任の時計師が組み立てや調整を行う専門工房をはじめ、ブランドの歴史を学べる展示スペース、さらには名峰・岩手山が一望できるラウンジも併設される。グランドセイコーのものづくりと、それを生み出す美しい自然を存分に堪能できる場所になっている。

公式リンク:お問い合せ|盛岡セイコー工業株式会社


体験可能なおすすめの工房

時計の魅力は「深淵なメカニズムにこそある」と考える時計愛好家も多いだろう。その思いが高じて「自分でもそれが作れたら……」という渇きを感じたことはないだろうか。次は、自分で1本の時計を製作できる、体験型の工房を紹介しよう。

木製から金属まで作れる ATELIER SAZANCA

千葉県船橋市の「ATELIER SAZANCA」は、ケースやダイアルを組み合わせて、3時間程度で木製のクォーツ式腕時計が作れる時計工房だ。

ケースの形状やオリジナルデザインにこだわるなら、約2日間の木製腕時計教室(プロフェッショナル)や、約3日間の金属腕時計教室も体験できる。

公式リンク:木製腕時計ATELIER SAZANCA

機械式の体験も可能な「時計工房 儀象堂」

長野県諏訪郡の「時計工房 儀象堂」は、セイコーエプソンOBの時計師による指導の下、クォーツ式時計や機械式時計の組み立て体験ができる時計工房だ。

クォーツ式、機械式ともに、3針モデルをムーブメントの組み立てから体験できる。時計師の気分が味わえる貴重な時計工房だ。

公式リンク:時計工房 儀象堂

「時計工房 儀象堂」の敷地内に設置されている「水運儀象台」も見どころのひとつ。これは大型の天文観測時計で、11世紀頃に作られた原型を完全復元したもの。毎正時にデモンストレーションが行われる。


本場スイスのミュージアムも行ってみよう

高度なメカニズムを追求すれば、やはりスイスの一流メゾンの存在に触れないわけにはいかない。ここでは、パテック フィリップやIWCが擁する、時計史を知る上で一度は訪れたいミュージアムを紹介しよう。

パテック フィリップ・ミュージアム

スイス、ジュネーブのプランパレ地区にある「パテック フィリップ・ミュージアム」には、パテック フィリップが所蔵する貴重なアンティーク時計や資料が展示されている。

展示品は、16世紀から現代までの2000点以上の時計やオブジェ、8000冊を超える時間や時間測定に関する書籍などだ。

館内にはアンティーク時計の修理工房もあり、熟練職人の技を間近に見ることもできる。パテック フィリップの公式サイトから、日本語ガイドによる「プライベート・ガイド・ツアー」の予約が可能だ。

公式リンク:パテック フィリップ・ミュージアム

IWCミュージアム

IWCシャフハウゼン本社社屋内にある「IWCミュージアム」は、IWCの230点以上の傑作選や、コレクションの詳細情報が記された台帳などが展示されている。

創業者フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズの手による「ジョーンズ・ムーブメント」の数々など、IWCファン垂涎の貴重な史料が豊富だ。

東棟のミュージアムでは、1900年以降に発行されたカタログや設計図などによる特別展も開催される。

公式リンク:歴史をめぐる旅 | IWCミュージアム


時計工房に行ってみよう

日本やスイスなど、各国の時計工房は、時計好きならば一度は訪れたいスポットである。

実際の時計製造を目の当たりにすれば新作を手に入れる喜びが増し、過去の史料に接すれば時計に対する理解が深まる。時計の魅力を味わうには、現場や歴史からというアプローチも一興であろう。

川部憲 Text by Ken Kawabe


聖地初訪問!グランドセイコースタジオ 雫石でグランドセイコーの底力を見る(前編)

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パテック フィリップ、ジュネーブ新工房落成を祝す 2020年の新作第1弾が上陸

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スイスで訪れるべき7つの時計ミュージアム

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