海外ジャーナリスト的「上半期に発表された時計」ベスト5 ブルガリ、ブライトリングなど/グレゴリー・ポンス編

FEATURE本誌記事
2020.09.04

時計業界に限らず、世界がこれほど異常事態に見舞われた例を知らない。我々、時計業界に身を置く者としては、大規模な国際時計見本市が1月のドバイを除いてすべて中止となり、多くの新作に触れ、情報交換する〝場〟を失った。そんな2020年上半期発表の新作から、時計業界を代表するジャーナリストにベスト5を選出していただいた。同時に、岐路に立たされる大規模国際時計見本市に関するそれぞれの見解をうかがった。今回は独立系ニュースサイト「Business Montres & Joaillerie」を運営するジャーナリスト、グレゴリー・ポンス氏だ。
※本記事は2020年6月3日発売『クロノス日本版』89号を再編集して掲載しています。

グレゴリー・ポンスが選ぶ上半期ベスト5

1位
ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック ステンレススティール」

オクト フィニッシモ オートマティック ステンレススティール

ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック ステンレススティール」
自動巻き(Cal.BVL 138)。36石。2万1600振動/時。約60時間パワーリザーブ。SS(直径40mm、厚さ6.4mm)。100m防水。130万円(税別)。

サテン仕上げのマットスティール、滑らかなブレスレット、手首に軽やかになじむスリムさを備えたこの新しい「オクト フィニッシモ」コレクションは、2020年代のスポーツシックの新しい基準となるだろう。20世紀後半のすべての「スポーティーシック」アイコンを容赦なく時代遅れにしてしまったのだ。

2位
ドゥ ベトゥーン「DB28XP トゥールビヨン」

DB28XP トゥールビヨン

ドゥ ベトゥーン「DB28XP トゥールビヨン」
手巻き(Cal.DB2009V4)。33石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約120時間。Ti(直径43mm、厚さ8.1mm)。3気圧防水。

純粋に機構だけを追い求めるよりも、優れた時計というものは時計製造文化の結晶でもある。新しい超薄型トゥールビヨンDB28XPは、これらの要素に加え、スタイリッシュに仕上げることで、この時計を見るたびにその美しさを想起させ、喜びを感じさせることを見事にかなえた。

3位
シャネル「ココ クロック」

ココ クロック

シャネル「ココ クロック」
手巻き。17石。高さ153×横110×厚さ61mm。

女性用の時計では、小型化された男性用の時計以外のプロダクトにおいて、その製造に成功することはあまり一般的ではない。シャネルが女性に手を差し伸べる方法を知っていることを証明するこの置き時計よりも、時計を女性らしくすることは不可能だ……。

4位
ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ’57」

スーパーオーシャン ヘリテージ’57

ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ’57」
自動巻き(Cal.10)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42mm、厚さ 9.99mm)。100m防水。期間限定生産。49万5000円(税別)。

ヴィンテージのコードについて私たちが評価するのは、それらが黄金時代の精神に忠実であるという点においてだが、同時に今の時代の感覚を表現できていればこそだ。2020年上半期において持つべきダイバーズウォッチは、強いアイデンティティーと主張あるスタイルを持つこのブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ’57」である。

5位
アイクポッド「メガポッド オートマティック」

メガポッド オートマティック

アイクポッド「メガポッド オートマティック」
自動巻き(Cal.MIYOTA9039)。24石。2万8800振動/時。SS(直径46mm)。5気圧防水。14万5000円(税別)。

これは紛れもなく手首に載ったUFOだ。その大きなサイズ(直径46mm)、外周のフリンジに「飲み込まれた」アラビックインデックスを備えたミニマルなダイアル、廃されたラグにもかかわらず、サテン仕上げの丸っとした着用しやすいケースを持ったUFOだ。これだけ強力なインパクトを持つ時計にとって、10万円台という低めの価格は福音にほかならない。