尋常ではない時間の楽しみ方。風変わりな時分表示を行う時計5選

FEATUREWatchTime
2022.03.24

いくつもの機構を搭載したどんな複雑時計であろうと、デザインがどれだけ個性的であろうと、時分表示の基本的な形となるとその多くはふたつの針によるアナログ式指針が多い。ここではそんな常識に囚われない、ユニークな時時刻表示を行う時計を見ていきたい。

Originally published on watchtime.com
2021年3月9日掲載記事


MB&F「HM3 フロッグX」

HM3 フロッグX

MB&F「HM3 フロッグX」
自動巻き(ジラール・ペルゴベース)。36石。2万8800振動/時。サファイアクリスタル(縦52.7×横48.3mm、厚さ17.5mm)。3気圧防水。世界限定10本。14万9000スイスフラン(問)https://www.mbandf.com/

マキシミリアン・ブッサーとそのフレンズは、大胆不敵なウォッチメイキングでその名を残してきた。独創的なデザインを採用する「オロロジカル・マシン」の中でも、最も記憶に残るのが2010年の「HM3 フロッグ」だ。そして、HM3 フロッグの誕生10周年を記念してアニバーサリーモデルの「HM3 フロッグX」が20年には発表されている。HM3 フロッグXでは、ふたつの「目」によって時と分をそれぞれ表示する方法を受け継いでいる。カエルの形をしたケースはサファイアクリスタル製で、ジャン・マルク・ヴィダレッシュが設計したムーブメントをあらゆる角度から楽しむことができる。ケースの側面から3気圧の防水性能を実現させるカラーガスケットがのぞく点もサファイアクリスタルケースならではだ。HM3 フロッグXは3つの仕様で構成され、それぞれ限定10本が販売される。また、MB&Fのシグネチャーともいえるバトルアックス形のローターは、ガスケットとマッチするようにカラーリングされる。


ウルベルク「UR100-V T-レックス」

UR100-V T-レックス

ウルベルク「UR100-V T-レックス」
自動巻き(Cal.UR 12.01)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。ブロンズ(縦49.7×横41.0mm、厚さ14.0mm)。30m防水。5万7000スイスフラン。(問)https://www.urwerk.com

ウルベルクは軌道上を回転するアワーサテライトを使用して、ダイナミックな時間表示を行っている。この一風変わった技術的にも複雑なシステムの最新進化形が、UR100-V T-レックス」だ。恐竜から取られたその名称は、ティラノサウルスのウロコ肌を連想させる縦49.7×横41mmサイズのケースに由来する。“恐竜”の内部に納められている自動巻きキャリバーUR12.01が軌道上を回転する3つのアワーサテライトに動力を供給する。それぞれのサテライトには60分を表示するレッドのポインターが備わっており、6時位置のスケール上を通過する際に分表示を指し示す。ムーブメントには遊星ギアが組み込まれ、巻き上げ過ぎやローターの過度な巻き上げを防止する。また時分表示の他に20分のスケールで地球の軌道、自転距離の表示も行う。


ルドヴィック・バルアー「アップサイド ダウン」

ルドヴィック・バルアー

ルドヴィック・バルアー「アップサイド ダウン」
手巻き(Cal.B01)。51石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約36時間。Pt(直径41mm、厚さ11mm)。3気圧防水。7万5000スイスフラン。(問)https://ballouard.com

2015年発表の「アップサイド ダウン」は、さかさまになったアラビア数字が配された風変わりな文字盤にその名を由来する。60分ごとに、リーフスタイルの分針が文字盤上を一周すると、次の時間を示すインデックスが180度回転し、そこから1時間の時刻を表示する。そして、それまでの1時間を表示していたインデックスはさかさまの状態に戻る。つまり2時〜2時59分までは、「2」のインデックスが正しい向きで配されており、それ以外のインデックスは180度反転している状態だ。そして3時になった瞬間、「2」のインデックスのディスクが反転し、同時に正位置を向いた「3」のインデックスが回転して現れる。現在が何時なのかを素早く見分けるために、正位置のインデックスディスクにはドットが描かれている。


コンスタンチン・チャイキン「ジョーカー」

コンスタンチン・チャイキン

コンスタンチン・チャイキン「ジョーカー」
自動巻き(Cal.K07-0)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径42mm、厚さ13.7mm)。3気圧防水。(問)アンドロスTel.03-6450-7068

ロシアの時計師、コンスタンチン・チャイキンはカレンダー複雑機構関連の創作で有名だが、その中でも特筆すべきは2017年発表のジョーカーであろう。文字盤は道化の外観そのままだが、実はレギュレータースタイルの時間表示を持つ。時分は目玉が回転するふたつの「目」のインダイアルによって示される。大きく笑った形の口は、一風変わったムーンフェイズ表示で、月は舌のような赤でペイントされ、ベゼルの外周にはトランプのスペード、ハート、ダイヤ、クラブの印が配されている。42mm径のスティール製ケースにはETA2824-2をベースに、モスクワの自身のアトリエで開発されたモジュールを組み合わせたチャイキンの自動巻きムーブメントK07-0が搭載されている。写真は2017年のリミテッドエディションのもの。


ヴォルト「V1+」

ヴォルト V1+

ヴォルト「V1」
自動巻き(Cal.V01)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG(縦46.7×横39mm、厚さ15mm)。(問)https://www.vault.swiss

創業してまだ日が浅いスイスのブランド、ヴォルト。同社のラインナップにはSSもしくはチタン製で、ケースサイズ縦46.7×横39mmのV1や、V1のケース素材をローズゴールド製に改めた「V1+」などがある。V1ならびにV1+は独自のローラーベアリングシステムを採用することで、ムーブメントの時刻表示面が360度回転する。分表示はクラシカルなセンターからの分針によるものとなっているが、時刻はこの回転する表示面と文字盤のギア上に配されたサファイアクリスタル製ディスクを組み合わせて読み取る。より具体的には、サファイアクリスタル製のディスクは大半がスモーク加工されおり、分針が動くにつれてこのサファフィアクリスタルディスクが時刻表示用ディスクよりも遅いスピードで動く。サファイアクリスタルの透明な部分と時刻表示用ディスクの重なった数字が、現在の時間である。野心的かつ革新的なこのV1を支える自動巻きキャリバー、V01はパワーリザーブ約50時間、2万1600振動/時というスペックを有する。


「HM3 フロッグ」を10年振りに復活させたMB&Fの「HM3 フロッグX」

https://www.webchronos.net/features/56581/
ウルベルク、宇宙時代の時計作りを「UR-100 スペースタイム」で再定義

https://www.webchronos.net/features/38787/