ロレックスの2021年新作「エクスプローラー」はケース縮小で神機復活!!

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2021.04.22

『クロノス日本版』で取り上げることは少ないが、クロノス編集部は基本的にロレックスが大好きだ。頑強で高精度、視認性にも優れる上、外装の仕上げも際立っているのに、価格も控えめ。好きなモデルは多いが、中でも個人的な推しを上げるならば、「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」と通称「エクスプローラーI」こと「オイスター パーペチュアル エクスプローラー」だろうか。いずれも、ロレックスの美点はそのままに、なにしろ腕馴染みが良いのである。とりわけ、名機31系を載せたエクスプローラー(114270)はベストと思ってきた。そんな114270を思わせるのが、2021年に発表された新しい「エクスプローラー」(124270)だ。無難すぎて面白くないと評した人もいるが、直径36mmに回帰することで、好ましいパッケージングを取り戻したのは痛快だ。

オイスター パーペチュアル エクスプローラー

直径36mmとなった新しいエクスプローラー。ムーブメントは最新の3200系に置き換えられた。自動巻き(Cal.3230)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径36mm)。100m防水。
広田雅将(クロノス日本版):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
2021年4月22日掲載記事


3000系に始まった、近代ロレックスの歴史

 個人的な意見を言うと、近代的なロレックスの始まりは、3000系(3035や3000など)がリリースされた1970年代後半だろう。このムーブメントは、先の1500系(1570)から転用した頑強で高効率な自動巻き機構に加えて、センターセコンド化のために、出車ではなく、4番車をセンターに置いた初のロレックスムーブメントだった。また、3000系は、ベースムーブメントの上に自動巻きモジュールを重ねるのではなく、自動巻きとベースムーブメントを一体化させた「近代的」な構造を持っていた。加えて振動数が1万9800振動/時から2万8800振動/時に向上し、携帯精度も大きく改善されたのである。

 このキャリバー3000を搭載したのが、エクスプローラー(14270)である。コストを抑えるためか、ヒゲゼンマイは巻き上げではなく平ヒゲ。しかし「エアキング」との差別化のため、クロノメーター検定を受けたムーブメントが搭載されていた。

 このムーブメントの、主にカレンダー周りに手を入れたのが3100系だった。発表は1988年頃。合わせてケースの素材が、ロレックスのいうオイスタースチール、つまり904Lに変わり、時計としての完成度をいっそう高めた。このムーブメントを載せたのが、2001年に発表されたエクスプローラー(114270)である。見た目は14270にほぼ同じだが、ブレスレットが重くなってヘッドとのバランスが取れたほか、ヒゲゼンマイを巻き上げヒゲに改めることで、際だった携帯精度を持っていた。新しい124270が出るまで、筆者にとってのベストロレックスは本作だった。

エクスプローラー,文字盤

エクスプローラーならではの文字盤。文字盤は従来に同じくラッカー仕上げ。またマイナーチェンジ後の214270に同じく、3・6・9のインデックスには夜光塗料のクロマライト ルミネッセンスが充填される。2008年に採用されたこの夜光塗料は、現在ほとんどのロレックスに採用されている。なお、2021年のエクスプローラーが採用したクロマライトは、残光時間が改良されている。


ヘッドが重くなり、ブレスレットも重くなった

 ケースとブレスレットに関していうと、ロレックスはこの40年間にわたって「イタチごっこ」を続けてきた。当初の3000系搭載機は、1500系搭載機に同じ、軽快な着け心地に特徴があった。一因は、軽いプラスティック製の風防である。しかし、後に重いサファイアクリスタル風防に変更することで、プロフェッショナルモデルのヘッドは重くなってしまった。重い「頭」とバランスを取るには、頑強なブレスレットやフラッシュフィットを合わせなければならない。

 それを可能にしたのが、2000年以降にロレックスが推し進めた外装のマニュファクチュール化だった。とりわけブレスレットの内製化により、ロレックスの各モデルは、ようやくヘッドとテールの重量バランスを回復したのである。また内製化は外装の質感を大きく改善したが、結果として、時計が重くなったことは否めない。


重さの増加を招いた、一体型のケース構造

 ユニークなケース構造も、ヘッドが重くなる一因だった。普通の時計は、ケースに内蔵した中枠(ムーブメントホルダー)にムーブメントを固定する。対して1500系以降のロレックスは、ケースとスペーサーを一体化させ、そこにムーブメントを据え付けるようになった。これがロレックスの言う「モノブロックミドルケース」である。スペーサーを省いた理由は、おそらくケースを頑強にするため。ショックは直接ムーブメントに伝わってしまうが、1500系以降に採用されたフリースプラングテンプであれば、精度への悪影響を抑えられる。

 これは極めて理にかなった構造だったが、構造上ヘッドは重くなりがちだ。かつては問題にもならなかったが、ロレックスがケースサイズを拡大するようになった2000年代以降、ヘッドの重さは目立つようになった。しかし、ブレスレットを重くすることで、ロレックスは時計のバランスを維持し続けたのである。さじ加減の上手さは、さすがロレックスというほかない。

 余談をもう少し続けたい。時計全体が重くなると、ブレスレットをゆるく巻くのが難しくなる。結果として、一部のオイスターパーペチュアルは、バックルにエクステンション機能を内蔵するようになった。あくまで私見だが、時計が軽ければ、エクステンション機能はさほど必要ではない。