「オリエントスター」70周年のフィナーレを飾る「輝ける星」たちの競演

2021.12.07
PR:ORIENT STAR

2021年初め、誕生70周年を迎えたオリエントスターは、シリコン製ガンギ車を採用することで、1971年以来、使い続けてきた基幹ムーブメント、キャリバー46系をさらに進化させ、話題をさらった。そして2021年10月、オリエントスター誕生70周年のフィナーレを飾るべく、数々の限定モデルが満を持して発表された。その現代の「輝ける星」たちを紹介しよう。

オリエントスター 70周年限定スケルトン~C/2021 A1~ RK-AZ0003L

オリエントスター 70周年限定スケルトン~C/2021 A1~ RK-AZ0003L
2021年1月3日、アメリカ・レモン山天文台のグレゴリー・レオナードによって発見された「レオナード彗星」をモチーフとしたオリエントスター70周年限定モデル。ムーブメントを小宇宙に見立てて、針とスケール、ガンギ車をブルーで統一することで宇宙空間の深淵を表現。9時位置のテンプ受けは、尾を引きながら夜空を疾走する彗星をかたどる。手巻き(Cal.F8B63)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径38.8mm、厚さ10.6mm)。5気圧防水。国内200本限定。35万2000円(税込み)。
奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
鈴木幸也(本誌):文 Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年1月号掲載記事]


オリエントスター「70周年限定スケルトン~C/2021 A1~ RK-AZ0003L」

 オリエントスター誕生70周年を記念してエプソンが2021年初めに発表したオリエントスター クラシックコレクション「スケルトン」は、国産機械式時計としては初めてシリコン製のガンギ車を採用。同ブランドが1971年以来、使い続けてきた基幹キャリバー46系を大幅に刷新し、精度を高め、パワーリザーブを従来の約50時間から約70時間へと延長し、大幅に性能を向上させて注目を集めた。この時点ではシリコン製ガンギ車に関わる核心技術が特許申請中だったため、その詳細は報告できなかった。

オリエントスター 70周年限定スケルトン~C/2021 A1~ RK-AZ0003L

(左)文字盤の12時位置には「輝ける星」を目指して誕生した「オリエントスター」らしく、ふたつのダイヤモンドがセッティングされ、夜空に輝く星をイメージさせる。(右)3時位置の「OS」マークには、ムーブメントに合わせてシルバーカラーが採用される。

 だが、2021年10月に発表されたオリエントスターの新作「70周年限定スケルトン〜C/2021 A1〜」では、次頁左に明記したように、3つの点で日本において特許が登録されたため、その詳細が開示された。3つの特許のうち、ふたつは機能性に関する「回転ずれ防止形状」と「バネ性構造」。残りのひとつは美観に関する「鮮やかな青色」である。いずれもプリンターヘッドをはじめ、精密機器や半導体分野において高い技術力を誇るエプソンだからこそ、他の国産メーカーに先駆けて積極的に取り組み、可能になったシリコン素材への挑戦と技術開発の成果である。

 かつて、セイコーエプソン会長の碓井稔氏は本誌にこう述べた。「エプソンの優れた技術を投じてオリエントスターの刷新を図りたい」。このシリコン製ガンギ車の実用化によって、見事にそれがかなったわけだ。同社がシリコン素材に注目したのは、今をさかのぼること16年1月。その2年半後の18年半ばにはシリコン素材でガンギ車の試作を始めた。そして、オリエントスター誕生70周年に当たる21年に実用化され、満を持して発表されたわけだから、本誌のインタビュー時は、進行中の極秘プロジェクトをまだ発表できなかったことが、歯がゆかったに違いない。

オリエントスター 70周年限定スケルトン~C/2021 A1~ RK-AZ0003L

(左)文字盤外周に配されたミニッツスケールは、各針やスモールセコンド外周とパワーリザーブ表示のスケール、そしてシリコン製ガンギ車に合わせてブルーで統一され、彗星をモチーフとしたモデルらしく宇宙観を表現。その両サイドには型打ちで横筋目が施される。(右)「レオナード彗星」をモチーフとするモデルらしく、9時位置のテンプ受けは尾を引く彗星をかたどる。

 今回、21年に発表されるオリエントスター70周年記念モデルのフィナーレを飾るこの限定モデルで、エプソンが取り組んできたシリコンテクノロジーの詳細が明かされたことで、同社のウォッチメイキングの成果がますます説得力を持つに至ったと言える。

 1951年に「輝ける星」のような機械式時計を作りたいという想いから始まったオリエントスター。それを現代に受け継ぐ最新の限定モデルは、その原点を彷彿させる、ある彗星をモチーフにしている。2021年1月3日に発見された「レオナード彗星」=「C/2021 A1」である。この彗星は、有名な「ハレー彗星」とは異なり、非周回性のため、22年1月3日に太陽に最接近(近日点)した後、再帰しないため、もう二度と見ることができない。同様に、オリエントスターの70周年も一度限り。このことからも、現代の「輝ける星」である最新限定モデルにエプソンの開発陣がどれほど懸けているかがうかがえる。

オリエントスター 70周年限定スケルトン~C/2021 A1~ RK-AZ0003L

(左)シースルーバックからは、シリコン製ガンギ車を採用することで、精度向上とパワーリザーブの延長という大幅にスペックアップしたムーブメントCal.F8B63を見ることができる。切削渦目模様が施された文字盤側の受けに対し、裏蓋側の受けには切削波目模様が施され、機械式時計を所有する悦びを高める。(右)サファイアクリスタル製風防は両面が球状に加工されているため、斜めから見ても視認性が確保される。

 最初の70周年記念モデルとなったオリエントスター クラシックコレクション「スケルトン」自体が、9時位置のテンプ受けを「彗星」になぞらえていたことを思い起こせば、ムーブメントを小宇宙に見立てて、12時位置に文字通り「輝ける星」をイメージしたダイヤモンドをふたつもセッティングした「C/2021 A1」は、その完成形と言っていいだろう。

 未来において、2021年の国産時計のトピックを振り返った時、モデル名に採用された「C/2021 A1」同様、この年限りの限定モデルとして語り継がれることは想像に難くない。


シリコン製ガンギ車3つの特許

1.「回転ずれ防止形状」
カナのスリットに合わせた回転ずれ防止形状をシリコン製歯車で製作(右の画像)。ワッシャーを嵌め込むことで、接着剤を使用しない強固な嵌合を実現。

2.「バネ性構造」
ミクロンレベルの高精度加工によって発現するシリコンのしなる特性を利用し、バネ性を持たせた形状を開発。

3.「鮮やかな青色」
精密な半導体製造工程における温度管理技術を活用することで鮮やかな青色を実現。

シリコン製ガンギ車

右はエプソンが開発したシリコン製ガンギ車。日本では左記の3つの特許を登録済み。シリコンは割れやすい一方、十分に薄い場合はしなる性質を併せ持つ。その特徴を利用し、エプソンの技術陣は左の画像のように、シリコン製ガンギ車の取り付け部にバネ性を持たせた。こうすることで取り付け時の破損を防ぎ、カナの寸法に多少の誤差があっても、理論上はガンギ車をカナに高い精度で固定できる。