時計業界の重鎮、ジャーナリスト 菅原茂が自分で着けてみたい、2021年発表の時計 ベスト5

FEATUREその他
2021.12.09

日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2021年発表時計からベスト5を選んでもらうこの企画。
時計業界の重鎮であり、大ベテランのジャーナリスト、菅原茂が選んだ5本は、自分が着けてみたいと思った、既視感のない“ブランニュー”なモデルである。
いずれも抑制のきいたデザインに、洒落たセンスを宿した、見栄えよく、背筋をピンと伸ばして街を闊歩したくなるような時計たちだ。


エルメス「H08」

 ケースのフォルムはもとより、ダイアルの細部まで徹底して独創的なスタイリングを追求し、何にも似ていないマスキュリンなスポーツウォッチを完成させたが、表情はあくまでも控え目。エルメス製ムーブメントも秀逸だ。

エルメス H08

エルメス「H08」
自動巻き(Cal.H1837)。パワーリザーブ約50時間。グラフェン複合素材ケース(直径39.0mm)。10気圧防水。100万9800円(税込み)。(問)エルメスジャポンTel.03-3569-3300


パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」

 ブランド創設25周年を機に発表されたこのモデルは、ブランドネームさえ省いたミニマムなダイアルやプラチナ950べセル×ステンレススティールのケースとブレスレットに洗練された美的センスが横溢。通好みの逸品だ。

トンダ PF マイクロローター

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」
自動巻き(Cal.PF703)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径40mm、厚さ7.8mm)。100m防水。265万1000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエTel.03-5413-5745


ブルガリ「オクト ローマ ワールドタイマー」

 音楽で言えば、軽快なリズムにのせてスタイリッシュなメロディーラインが続くシティーポップのような感覚。スムーズなラインに包まれたケースと機能を誇張しないワールドタイムは、ビジュアル的にも心地よい。

オクト ローマ ワールドタイマー

ブルガリ「オクト ローマ ワールドタイマー」
自動巻き(Cal.BVL 257)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。プラチナ&アルミニウム製自動巻きペリフェラルローター。SSケース(直径41mm、厚さ11.35mm)。100m防水。99万円(税込み)。(問)ブルガリ ジャパンTel.03-6362-0100


チューダー「ブラックベイ セラミック」

 スポーティーエレガンス系のダイバーズでは最も優れたモデル。オールブラックの精悍な表情も秀逸だが、C.O.S.C.認定クロノメーターを取得した高精度の自社ムーブメントがMETAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター検定にパスし、さらに1万5000ガウスの超耐磁性能を備え、性能面でも群を抜く存在に。近づきやすい価格もいい。

ブラックベイ セラミック

チューダー「ブラックベイ セラミック」
自動巻き(Cal.MT5602-1U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブラックセラミックケース(直径41mm)。200m防水。5年間の国際保証。レザーとラバーライニングによるハイブリッドストラップ+ブラックファブリックストラップ(クリーム色のライン入り)。53万9000円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダーTel.0120-929-570


シチズン「ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200」

 2021年の国産時計ではこれが推し。日本とスイスとの共作による新設計の機械式ムーブメント、今までの「ザ・シチズン」とは一線を画すコンテンポラリーなデザインは、日常的に着けるライフスタイルウォッチとして最適。

ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200

シチズン「ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200」
自動巻き(Cal.0200)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.9mm)。5気圧防水。静態時の平均日差-3秒~+5秒。60万5000円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室Tel.0120-78-4807


菅原茂のコメント

 ここ数年で時計に対する見方が変わった。一部のコアなマニアやコレクターはまあ別として、単に技術やデザインをアピールするだけでは、ますます一般ユーザーの心をつかみにくくなってきたのではないかということだ。

 では何が受けるのかというと、ライフスタイル志向の時計だろう。実際に自由なワークスタイルやくだけたファッションが主流になりつつある中で、そうした傾向に対応するようなクロノグラフやダイバーズ、あるいはラグジュアリー感をプラスしたオン/オフ両対応のスポーティーエレガンス系ウォッチがぐんと増えた。

 一口にライフスタイルウォッチといっても、自分の趣味嗜好や生活様式にマッチするかどうか、あるいは着けている自分を等身大でイメージできるかどうかは人それぞれだが、ここでは自分が着けてみたいと思ったモデルを2021年のベスト5に挙げてみたいと思う。

 エルメス「H08」、パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」、ブルガリ「オクト ローマ ワールドタイマー」、チューダー「ブラックベイ セラミック」、そしてシチズン「ザ・シチズン メカニカルモデル キャリバー0200」の5本である。

 どれもスポーティーエレガンス系だが、これらに共通するのは、ほとんど既視感のない“ブランニュー”であること。そして、抑制のきいたデザインに洒落たセンスが宿っていること。見栄えよく、背筋をピンと伸ばして街を闊歩したくなるような時計たちだ。



菅原茂のプロフィール

菅原茂

1954年生まれ。時計ジャーナリスト。1980年代にファッション誌やジュエリー専門誌でフランスやイタリアを取材。1990年代より時計に専念し、スイスで毎年開催されていた時計の見本市を25年以上にわたって取材。『クロノス日本版』などの時計専門誌や一般誌に多数の記事を執筆・発表。休日はランニングと登山に精を出す。


パテック フィリップの魅力。その特徴や要チェックモデルを紹介

https://www.webchronos.net/features/37038/
風に揺らぐ諏訪湖の水面をイメージした、グランドセイコーの限定モデルが登場

https://www.webchronos.net/news/69197/
ブルガリの特徴や代表的なモデルをチェック

https://www.webchronos.net/features/37040/