なぜ「一気に延びた」のか? 腕時計の品質保証期間、大延長の理由

FEATURE役に立つ!? 時計業界雑談通信
2022.03.12

目的は、ブランドの差別化とコストの削減

 こうした技術革新には長い時間と莫大なコストがかかる。オメガがコーアクシャル脱進機の開発を始めたのは1990年代のこと。その本格的な導入は約10年後の2000年代初め。非磁性の独自素材の開発と導入にはおそらく20年以上かかっている。

 それなのにオメガを筆頭に、なぜ時計メーカーはこの技術革新に取り組んだのか? その理由は、ブランドの差別化による商品力の向上、そして何よりもトータルコストの削減だ。

スイスのビール/ビエンヌに位置するオメガ本社の最新ファクトリー。品質管理のための理想的な環境が整っている。

 独立時計師の作る時計など、一品製作の「芸術作品」とは違い、時計メーカーの腕時計はあくまで工業製品である。製造業で事業を継続、発展させるためには、他ブランドとの競合に勝ち続けなければならない。そのためには、常に製品を改良し、付加価値を高め、生産からアフターサービスまでトータルなコストを低減しなければならない。

 そして腕時計の生産から販売、販売後のアフターサービスに至る時計ビジネスの流れの中で最も効率が低く、しかもコストが高く、時に予想外の大きな経費がかかる可能性のある部門はどこか? それはアフターサービス、つまり修理とオーバーホールを担当する部門だ。

 しかも、この部門は時計メーカーにとって、ブランドバリュー、信用と価値を維持する「最後の砦」でもある。製品の不良による大規模な無償修理など、ブランド存亡の危機が起きたとき、対応するのはこの部門だ。

 そのうえ、今や“ミドルレンジ”以上の多くの時計メーカーにとって主役と言える機械式腕時計は現在、サステナブルなアイテムとして、特に高級腕時計は「世代を超えて受け継ぐことができる実物資産」として、かつてないほど注目されている。だから時計メーカーがこの部門をおろそかにすることは許されない。

 つまり時計メーカーは、アフターセールス部門の充実だけでなく、その効率化と負荷低減という「二律背反」の課題に直面しているのだ。

 この難しい課題を一挙に解決できる最善の方法。それが、品質が高く耐久性に優れ、耐磁性も高くて故障しにくく、しかも整備性に優れて修理やメンテナンスがしやすい新世代ムーブメントの開発と導入である。そして、この新世代ムーブメントの導入で実現した購入者へのサービスが、長期品質保証なのだ。


数字の裏にある「技術革新」に注目!

 2年間から5年間、8年間、そして10年間へ。この数字の背景には、地味だが画期的な技術革新がある。だから、腕時計を購入するなら、ぜひもっとこの「品質保証期間」に注目してほしい。


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